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『ミナリ』

cinema
03 /24 2021
2021年桜も咲き、もうすっかり春だというのに、映画館で見た映画がやっと2本目。実家の両親プラス寝たきりワンコの介護をしていた時でさえ、もう少し見てたかも?コロナで引きこもり生活が長引き、どんどん出不精になっています。暑い夏が来る前に、もう少しフットワーク良くしなければ。

『ミナリ』監督:リー・アイザック・チョン
minari.jpg
1980年代、韓国系移民の"イ"一家は、アメリカ・アーカンソー州に移住。荒地に置かれたトレーラーハウスに住む。夫婦はひよこの雌雄鑑別場で働きながら、夫は荒地を開墾。韓国野菜を栽培し農業での成功を夢見る。妻はそんな夫に不安を感じ夫婦喧嘩が絶えない。韓国から呼ばれた妻の母に二人の子供の面倒を見てもらい、心臓の悪い弟デビッドは口の悪い祖母と徐々に絆を結ぶ。夫の農業は干ばつや、あてにしてた取引先の裏切りなど窮地に立たされ、妻は夫と別れる決心をした時、さらなる試練が一家を襲う。

会話はほとんど韓国語、出演者、監督も韓国系。しかしこれは「ムーンライト」など作家性の高い作品で有名なスタジオ「A24」とブラッド・ピットがプロデュースのアメリカ映画なんだそうです。
「パラサイト 半地下の家族」のような衝撃的な映画では全くなく、どこか懐かしい古い日本映画を見ているような気分になりました。
主人公の夫婦が韓流に出てくるような華のある美男美女ではなく、子供たちも含めてとてもリアリティがあります。韓国から呼ばれる妻の母が一番トリッキーなキャラクターで、幼い子供に花札を教え、柄悪く毒舌、心臓が悪く走ることも制限されている孫に平気で山道を歩かせます。
韓国移民はレーガン時代の’80年代から爆発的に増え、現在に至っているそうです。’80年代の韓国というと思い出すのはポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」で描かれた時代。夜間外出禁止も出ている暗い時代だったようです。
夫婦はどういう事情でアメリカに移民してきたのかは説明はありませんが、夫は韓国での日々は辛かったとこぼします。そして一旗あげて裕福になりたい。しかし妻は堅実に生きたい。妻は不安から苛立ち、夫婦喧嘩は絶えないものの、肩を痛めた夫の髪を洗ってあげるシーンや、ささやかな場面にこの荒野で一家で生きていかなければならない絆も感じます。
思いがけず子供の病気が好転し、野菜の取引先も見つかりハッピーエンドかと思いきや、妻の気持ちはさらに離れ、別れる決意をした時、さらなる試練が彼らを襲い……、
この地味な映画がアメリカのサンダンス映画祭でグランプリと観客賞をとったというのは、意外でもあり、なんとなく分かる気もします。個人の自由を重んじ家族という単位がいともたやすく分解するアメリカにあって、このラスト。家族の絆というとありきたりですが、荒波の中に放り込まれ、生き抜くためにもう一度やり直す。そんな覚悟を妻の微笑みに感じました。

ミナリって何かと思ったら、セリのことです。セリは根っこ付きのを買ってきて、根っこをプランターに植えておいたら再び伸びてくる、なかなかたくましい野菜です。この地に根を生やし生きていこうとする移民の一家のたくましさを表しているのでしょうか?
それから印象に残ったのはひよこ工場で、黒い煙が上がっているのを息子が父に「あれは何?」と聞く場面。なんとオスのひよこを燃やしているんだそう。ひえ〜かわいそう!父は息子に「オスは卵も産まず肉も美味しくない。だから男は役に立たなきゃならない」と教えます!何という教え!男はつらいよ(涙)
アーカンソーの田舎は緑が豊かで、特に祖母がセリを植えたせせらぎが美しい映画でした。

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コメント

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Re: 感謝

>「みなさん本当にありがとう」と頭の下がる本日の私です。

こういう感覚は年取って知るものの一つだね。
若いうちは全く理解できない(理解しようとも思わない)感性。
年取って運動した3日後に筋肉痛がやってきたり、いろいろあるけど、新たな能力(老人力)に年取るのも悪くないと思える今日この頃。
私たち、他人から羨ましがられるマダムには全くなってないけど、そこそこいい歳の取り方してるかもね(笑)

>寒がらないからえらいの(笑)

あ、この感じはうちのおばあちゃんにもあった。
子供心に、そこ褒める?って感じで、とにかく何でも褒めてくれちゃう。
なんせあのS生のことをいつも「Sは優しいね」って。どこがだ〜!と思ってたけどさ(笑)私のことも落書きしてても宿題の漢字書いてても、うまいね、賢いね〜って感じ。

>歌詞のセンスがまたイカシてて
>歌い出したのだ。弾き語りだよ!

やっぱり似てるよ。言葉のセンスとか、音感の良さとか、以前から感心してたけどさ。
ま、私に音感褒められても……人並外れてひどいから、当てにならんけどさ。

感謝

瞬く間に雉を捌くおばあちゃんなんて、カッコいいではないか! いくら昔の人の方が肝が据わっていたといっても、そりゃすばらしい。ほんまに敵わんわー。

んで、褒めてくれてありがたいけど、私はお祖母ちゃんの足元にも及ばないよ。
彼女は文句を言わず、人の悪口を言わず、説教をせず、明るく強い人だった。笑えるエピソードとしては、真冬でもナマ脚にミニスカートってカッコの私を見て「えらいなあ、えらいなあ」と言ってた。寒がらないからえらいの(笑)。高校生にもなって勉強もせずに夕方再放送してる『ど根性ガエル』を見ている私に「『根性、根性、ど根性』っていうのはいいな」と言って笑っていた。あとね、よく替え歌を作って歌っていたのよ。それが大抵誰かを褒める歌でさ、例えば三波春夫かなんかの歌を私の父、つまり彼女自身の息子を讃える歌にして歌っていた。歌詞のセンスがまたイカシてて、小っ恥ずかしいような褒め方じゃないところが良かった。
お祖母ちゃんは、万国博覧会が日本で開催されると知った瞬間に「孫たちにそれを見せよう」と決めて、7人の孫たちとその保護者全員の旅費を出して、私達に万博を見せてくれた。
そうそう、私が5歳のとき、オルガンを買ってくれたんだけど、驚くべきことにお祖母ちゃんはいきなりそれを弾きながら歌い出したのだ。弾き語りだよ! 「どこで習ったの?」と聞いたら、小学生の時、学校にオルガンがやってきて、それを弾いてみたくてたまらなくて、夕方学校に忍び込んで弾いて覚えたといった。かっこええ!
彼女は私がトン子さんとスペイン・ポルトガル旅行から帰って間もなく亡くなったんだ。自宅介護だったんだけど、亡くなる数ヶ月前にはコミュニケーションをとれなくなっていた。だから、あの愉快な旅行の話を聞かせてあげることができなかったんだ。それは本当に残念だったなぁ。ちゃんと伝わったら、きっととても面白がってくれただろうなあ。

などと、昨日からずっとお祖母ちゃんのことを思っている。
そういう気持ちにさせられる映画だった。
それとは関係ないけど、今日、私の大事な友だちだった地域猫しょうちゃんが虹の橋を渡ったのよ。お祖母ちゃんにも、父にも、しょうちゃんにも、兄に対しても、「みなさん本当にありがとう」と頭の下がる本日の私です。

Re: 雄ヒヨコ……

>夫のあの突き進み方のベースには、「むざむざ燃やされてしまう雄ヒヨコにはなるまいぞ」という決意が〜

韓国での暮らしは地獄だった・・とか言ってなかったっけ?おまけにあの仕事してたら、オスヒヨコになるまい、と思うのも無理ない気がした。それにしてもオスのヒヨコの運命は今も同じなのだろうか?昔夜店で売ってたようなヒヨコはこの時はねられたオスだったのかも。

>「この妻の母親にしては下品過ぎる」

それは思った。でもあの世代は教育も受けてないだろうし、戦争で夫を亡くしても仕事もないだろうし、相当苦労した世代だろうね。

>彼女はとても面白い人だった。頭が良くて、つべこべつまらない事を言わなくて、すごく度胸のいい人だった。

あら、Tちゃん、あなたそのお婆さんにそっくりじゃない!隔世遺伝だったのね。
(血が繋がってない)私の同居の婆は日本昔話に出てくるような素朴かつ粗雑な人だった。近所の人が山でキジ射ってくれた時、家族全員これどうしたらいいの?って時に、バリバリ羽をむしってちゃんと鶏肉にしちゃった時はたまげた。

>「お祖母ちゃんはお祖父ちゃんに惚れてた? ・・・」

ヘェ〜、そんな質問、親にも思いつかなかったなぁ。今度母に聞いてみようかな。ま、聞くまでもなく答えは分かってるが(笑)

>ポールのことを私はまだ理解できていないんだ。この映画は監督の自伝的な作品で

ああ、自伝的なんだ。’80年代っていうのが、ちょうど良かった気がする。日本人移民の話だと、もはや時代劇になってしまう。レーガンの時代は大企業による国家支配が始まった時代って町山さんの本にあった。でもまだ貧しい移民でも病院に普通にかかれてたみたいだったね。

ポールは、相当ヤバイ人かな?と初めは思ったけど、純粋で無垢な変人って感じで、良かった。

雄ヒヨコ……

本当にリアリティのある一家でしたなあ。

アーカンソーといえばビル・クリントン、悪天候、ど田舎……というイメージしかない。
だからいきなり「竜巻警報」が出た時には、「言わんこっちゃない!」と思ってしまった。
あの夫、あまりにも独断で突き進んでしまうでしょ。なんだってこんなとこを選んでしまったんだって、初っ端から腹立たしいわ。だから私は「会話の多い夫婦」じゃないとイヤなのよ。
夫のあの突き進み方のベースには、「むざむざ燃やされてしまう雄ヒヨコにはなるまいぞ」という決意があるのかなあ。

それにつけても、おばあちゃんの見せ方、ちょっとずるくない?
登場した時は、「この妻の母親にしては下品過ぎる」と思った。だってあのおばあちゃんが育てた娘がああいう女性になる? 子供たちから見ても、おいおいおいって思ってしまう老女だったと思う。初めの方はね。でもどんどんいい感じになってきて、最終的にはどこをどう切り取っても素晴らしかった。ずるい。
子供たち、二人とも良くできた子たちだったね。特にお姉ちゃんがえらい。かわいそうなくらいしっかり者で、長女として完璧。

「すべてのおばあちゃんに捧ぐ」という献辞には、あったかい気持ちになったな。
私は父方の祖母と最期の10年弱を一緒に暮らしたんだけど、彼女はとても面白い人だった。頭が良くて、つべこべつまらない事を言わなくて、すごく度胸のいい人だった。
私が4歳の時に亡くなった祖父は世間的にはかなり信頼される人物だったみたいだけど、どうやらくそ真面目でくそ誠実な人だったみたいで、妻からしたら「その融通の利かなさってどうなのよ」って思うこともあったんじゃないかと想像してた。
彼女の最晩年、私はいつも彼女とお風呂に入っていたんだけど、ある時率直に聞いてみた。「お祖母ちゃんはお祖父ちゃんに惚れてた? つーか、お祖父ちゃんの生真面目さを全面的に受け入れられてた?」と。
そしたら、「うーん……」と唸るのだった。そういうとこ、好きだったな。

ところで、ポールのことを私はまだ理解できていないんだ。この映画は監督の自伝的な作品で、道を十字架を背負って歩いていた男も実在したっていうけど。
ポールに向ける家族それぞれの眼差しとか、彼の細かい表情とか、あの人に注目してもう一度見たい。
眼差しということでいえば、お姉ちゃんがお祖母ちゃんに向ける眼差しについても再度確認したい。
とても後味のいい映画で、あっさり全面降伏してしまいそうになるけど、今一度ちゃんと確認したい。

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映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
カテゴリに「闘病記」も加わりました。