FC2ブログ

『ノマドランド』監督 クロエ・ジャオ

cinema
03 /31 2021
nomad.jpg

「スリー・ビルボード」のオスカー女優フランシス・マクドーマンドが主演を務め、アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービー。ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作に、「ザ・ライダー」で高く評価された新鋭クロエ・ジャオ監督がメガホンをとった。ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。(シネマトゥディ)

基本事前情報なしで映画を見ますが、それでも何らかの情報は入ってくるわけで、ある程度の予想を持って見ましたが、考えていたものと違いました。

1点はもっとストーリー性のある映画だと思っていたら、ほぼドキュメンタリーのようであったこと。実際主人公ファーンと出会うノマド民の人々が役者ではなく本当のノマド生活者。『ノマド 漂流する高齢労働者たち』というノンフィクションが原作だそうです。
2点目はリーマンショックをきっかけにノマド生活を始めることや、Amazonで季節労働者として働くことから、アメリカの歪みを描いた社会派映画だと思った点。
もちろんそういう点はあるのですが、私の印象ではある種の清々しさ。孤独と隣り合わせの自由。だからこそ同じノマド生活者との出会いはあくまでも優しく美しい。足の引っ張り合いや嫉妬にはならず、助け合い、手を貸し合うが深入りはしない。それでも主演フランシス・マクドーマンドと並び、数少ない役者のデヴィッド・ストラザーン演じるデイブが息子のもとに戻り、孫の世話をしながら、立ち寄ったファーンにここに一緒に住まないか?と持ちかけられた時、迷いはあったと思いますが、明け方そっと出ていくファーン。

この映画は見る人の年齢や性格でずいぶん評価が違うと思います。
惨めな生活に見える人もいるかもしれないし、この暮らしを羨ましい、と思う人も絶対いるでしょう。
正直、体力と運転技術に自信があったなら私もノマド生活やりたい……、いや、そんな甘い生活じゃないことは百も承知ですが。正直いうと、この映画見てる時、やっぱり車もう一度運転するぞ〜!と思ってしまったほど。
数年前、私は車を捨て、以降どこに行くのも公共交通orママチャリor徒歩。おかげで腰痛も治り良いことづくめ。でも難点は持てる荷物が少ないこと。そこいくと、ファーンのように思い出の品を詰め込んで、広大な大地を旅から旅へ・・・(妄想に浸る)
(が、ここで現実に気が付く)これ、だだっ広いアメリカだからいいんですね。日本だと変なところに車停めてたら即警察に不審者として通報されそう。(急に妄想から覚める)
でも、これ、放浪癖のある老人に見せたらまずいんじゃ?と思うくらい刺さる人には刺さります。私は刺さりました(涙)

フランシス・マクドーマンドが本当によくて。ファーンは決して強いだけの女ではなく、夫との幸せな生活にしがみついてるのだ、と後半理解できます。その強くたくましく自由で孤高でありながら、同じように弱く執着を手放さない。彼女を見ていると、映画のハッピーエンドでよくある前向きさが単純な記号を表しているだけに思えます。人間はそんなに一面的ではないし、この映画には女優は存在せず、ファーンという強くて弱さも持つ女性がいるだけです。
それから肺がんが脳に転移していたスワンキー(本当のノマドの人)、彼女が自分の人生をファーンに語る内容も素晴らしい。見てきた大自然の話。中でもアラスカの燕の巣の壁の話。ああ、死ぬ前にもう一度見たい絶景が私にはあるだろうか!?と思わず記憶を辿ってしまったほど。
大した絶景ではありませんが、やはり若い頃は感性が柔らかかったのか、当時は地元の人しか知らない北海道野付半島のある場所を探し当てて辿り着いた時、私と友人しかいないその場所で、頭の後ろがス〜とするような不思議な感覚がありました。摩周湖も展望台から見てるんじゃつまらんと反対側に回って、崖を滑り降り湖に足を浸したときにも同じ感覚が。(これは危険なので絶対マネしないでください)絶景ハイ?とでもいうんでしょうか?もはや感性が鈍りすぎて、とんでもない場所に行かないと、あの感覚は蘇らないかもしれません。
個人的には若い頃の放浪癖が目覚めそうなある意味、ヤバイ映画でした。

肝心のストーリー的には結構、後ろ向きな内容とも見えます。
ファーンは企業城下町のいい時代に愛する夫と幸せに暮らしていた思い出にしがみついています。そのため同じノマドやるのでも季節労働するのでも、もっと気候の良い南の方へ行けばいいものを、今は郵便番号もなくなり無人になった街の側から離れられないのですから。それでもノマド生活を送り、多くの人との出会いを経て、実際のノマドの教祖的存在ボブ・ウェルズが彼女に言います。「最後の別れの言葉を交わす人なんて誰もいない。「いつかどこかでまた会おう」とだけ言うことにしている」またいつかどこかで会える。夫との思い出にしがみついていたファーンはこれをきっかけに、ガレージのものを処分、思い出の街を後に旅立つところで終わります。
起承転結が好きな人にはお勧めしませんが、個人的には素晴らしい映画でした。





スポンサーサイト



『ミナリ』

cinema
03 /24 2021
2021年桜も咲き、もうすっかり春だというのに、映画館で見た映画がやっと2本目。実家の両親プラス寝たきりワンコの介護をしていた時でさえ、もう少し見てたかも?コロナで引きこもり生活が長引き、どんどん出不精になっています。暑い夏が来る前に、もう少しフットワーク良くしなければ。

『ミナリ』監督:リー・アイザック・チョン
minari.jpg
1980年代、韓国系移民の"イ"一家は、アメリカ・アーカンソー州に移住。荒地に置かれたトレーラーハウスに住む。夫婦はひよこの雌雄鑑別場で働きながら、夫は荒地を開墾。韓国野菜を栽培し農業での成功を夢見る。妻はそんな夫に不安を感じ夫婦喧嘩が絶えない。韓国から呼ばれた妻の母に二人の子供の面倒を見てもらい、心臓の悪い弟デビッドは口の悪い祖母と徐々に絆を結ぶ。夫の農業は干ばつや、あてにしてた取引先の裏切りなど窮地に立たされ、妻は夫と別れる決心をした時、さらなる試練が一家を襲う。

会話はほとんど韓国語、出演者、監督も韓国系。しかしこれは「ムーンライト」など作家性の高い作品で有名なスタジオ「A24」とブラッド・ピットがプロデュースのアメリカ映画なんだそうです。
「パラサイト 半地下の家族」のような衝撃的な映画では全くなく、どこか懐かしい古い日本映画を見ているような気分になりました。
主人公の夫婦が韓流に出てくるような華のある美男美女ではなく、子供たちも含めてとてもリアリティがあります。韓国から呼ばれる妻の母が一番トリッキーなキャラクターで、幼い子供に花札を教え、柄悪く毒舌、心臓が悪く走ることも制限されている孫に平気で山道を歩かせます。
韓国移民はレーガン時代の’80年代から爆発的に増え、現在に至っているそうです。’80年代の韓国というと思い出すのはポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」で描かれた時代。夜間外出禁止も出ている暗い時代だったようです。
夫婦はどういう事情でアメリカに移民してきたのかは説明はありませんが、夫は韓国での日々は辛かったとこぼします。そして一旗あげて裕福になりたい。しかし妻は堅実に生きたい。妻は不安から苛立ち、夫婦喧嘩は絶えないものの、肩を痛めた夫の髪を洗ってあげるシーンや、ささやかな場面にこの荒野で一家で生きていかなければならない絆も感じます。
思いがけず子供の病気が好転し、野菜の取引先も見つかりハッピーエンドかと思いきや、妻の気持ちはさらに離れ、別れる決意をした時、さらなる試練が彼らを襲い……、
この地味な映画がアメリカのサンダンス映画祭でグランプリと観客賞をとったというのは、意外でもあり、なんとなく分かる気もします。個人の自由を重んじ家族という単位がいともたやすく分解するアメリカにあって、このラスト。家族の絆というとありきたりですが、荒波の中に放り込まれ、生き抜くためにもう一度やり直す。そんな覚悟を妻の微笑みに感じました。

ミナリって何かと思ったら、セリのことです。セリは根っこ付きのを買ってきて、根っこをプランターに植えておいたら再び伸びてくる、なかなかたくましい野菜です。この地に根を生やし生きていこうとする移民の一家のたくましさを表しているのでしょうか?
それから印象に残ったのはひよこ工場で、黒い煙が上がっているのを息子が父に「あれは何?」と聞く場面。なんとオスのひよこを燃やしているんだそう。ひえ〜かわいそう!父は息子に「オスは卵も産まず肉も美味しくない。だから男は役に立たなきゃならない」と教えます!何という教え!男はつらいよ(涙)
アーカンソーの田舎は緑が豊かで、特に祖母がセリを植えたせせらぎが美しい映画でした。

『太陽の蓋』『嘘八百 京都ロワイヤル』『ラスト・ディール』

cinema
03 /19 2021
『太陽の蓋』監督:佐藤太(2016)
taiyoufuta.jpg

東日本大震災を題材にしたドキュメンタリードラマ。東日本大震災とそれによる福島第一原子力発電所事故が発生した2011年3月11日からの5日間を首相官邸内で対応に当たった者たちと東京・福島の人々を対比させて映す(シネマトゥディ)
震災5年後に作られたこんな映画があったんですね。wowowで観ました。
『Fukushima50』は現場のドラマでしたが、こちらは原発事故が起きてから官邸の5日間の話。登場人物は実名で、当時の部分と、1年後に記者が当事者にインタビューして当時の状況を振り返る2構成からなります。
主演は官邸詰め記者、北村有起哉。この映画だと東電は官邸に情報を出さず、何が起きてるのか分からず、そのため菅首相が現場に乗り込んだことになっています。現場は混乱の最中、いきなり首相にこられていい迷惑だったと想像でき「Fukushima50」では悪役扱い。しかしこちらでは情報が上がってこないため、現場や本社に乗り込んだことになっています。どちらが真実だったのか分かりませんが、Fukushimaで佐野史郎、こちらでは三田村邦彦という配役を見ても、首相の描き方は微妙に異なります。とはいえこちらも首相をヒーローに描くつもりはなく、未曾有の事態に右往左往する政権の姿は(こんな言い方は不謹慎ですが)ゴジラが出てこない「シン・ゴジラ」のよう。
しかしどちらの映画も現場の人の責任感の強さは讃えており、非番なのに現場に駆けつけた若い職員が、5年後、記者の質問に「酪農家がこの事故のせいで自殺したと聞いたから、自分たちは最後まで責任を取らなければ」と言います。
この中で北村有起哉にレクチャーする原発関係者?が出てくるのですが、最悪のシナリオは首都圏まで人が住めなくなるというもの。そして本当にたまたまラッキーで偶然水が入ってメルトダウンしなかったことを説明します。Fukushimaの方はイマイチなぜ突然止まったのか?はっきり描かず、まるで現場の英雄的活躍でメルトダウンが止まったかのようにミスリードしかねない演出でした。こういうアンフェアがどうも苦手なので、娯楽要素は少ないけれど、「Fukushima50」よりは事実に対してまだ謙虚かな?と思われます。
さらに、福島原発では廃炉の見通しも立たず、もし何かあったら今度こそ日本に人が住めなくなる可能性を指摘します。核分裂って止められない?今もぶっ壊れたそこで、核分裂は続いていることをうっかり忘れそうになっていました。


『嘘八百 京都ロワイヤル』監督: 武正晴(2020)
usorowaiyaru.jpg
古物商と陶芸家が幻の茶器をめぐって一獲千金を狙う『嘘八百』の続編。
武将茶人・古田織部の幻の茶器にまつわるコメディ。悪徳有名古美術店や大御所鑑定家、陶芸王子、テレビ番組を巻き込んで後半かなりドタバタコメディ。中井貴一も佐々木蔵之介も口の減らないイメージですが、ここでは佐々木蔵之介は無口で腕のいい陶芸家。

「開運!なんでも鑑定団」を見てます。「プレバト」で俳句も見てるし、なんかもう正統派老人街道まっしぐらの今日この頃。
『嘘八百』1も見ているはずですが、ブログに書いていません。以前はそれなりに忙しかったので書くのを忘れたものもチラホラ。でも1も面白かった記憶があります。幻の利休の茶器を佐々木蔵之介が作って、中井貴一が口の減らない骨董屋で、やはり敵は大物鑑定士だったような…?なんだか「鑑定団」の中島誠之助先生を思い出してしまいます(笑)
今回も大物鑑定士と有名古美術商を騙そうと画策。悪徳有名古美術商の先代の幽霊に化けるのがアホの坂田こと坂田利夫。え?この人、ずいぶん昔からいますが一体いくつ?と思ったら、もう80才!あまり変わりません。この映画で一番びっくりなのは坂田利夫の老けなさかも(笑)
着物美人に広末涼子。
もしかしたら今後、寅さんのように、中井貴一、佐々木蔵之介、プラス美人女優のパターンになるのかも?
この映画見た後、無性にお稲荷さんが食べたくなりました。


『ラスト・ディール』監督:クラウス・ハロ
lastdeal.jpg
年老いた美術商オラヴィは、家族よりも仕事を優先して生きてきた。そんな彼のもとに、音信不通だった娘から電話がかかってきて、問題児の孫息子オットーを、職業体験のため数日間預かる。そんな中、オラヴィはオークションハウスで1枚の肖像画に目を奪われる。価値のある作品だと確信するオラヴィだったが、絵には署名がなく、作者不明のまま数日後のオークションに出品される。オットーとともに作者を探し始めたオラヴィは、その絵が近代ロシア美術の巨匠イリヤ・レーピンの作品という証拠を掴む(シネマトゥディ)

老後の趣味が絵画鑑賞の夫(実際はコロナのせいもあり、美術館に行かず、ひたすら美術番組を鑑賞し、美術解説本を読むという、教養主義に陥ってる)と一緒に観ました。
フィンランド映画、渋そうだし、退屈かも?と思いきや、とても面白かったです。
孫をヘルシンキのアテリウム美術館に連れていき、絵の見方を教えるところとか、なんでレーピンのサインが無いのか?の理由とか、オークションの様子など、興味深い映画でした。
しかし、そこはフィンランド映画、ハリウッド映画のように盛り上げず、レーピンと判明するまでのミステリーも淡々としています。
オークションってもっと華やかな印象でしたが、ここでは来ている人たちもお金持ちに見えず、それだけ日常に絵画がある文化なのかもしれません。

この映画のもう一つの柱は親子の確執。娘もシングルマザーで苦労してきた様子ですが、主人公は家族も顧みずひたすら絵画に人生を捧げてきた。とはいえ商才はなさそうで、署名の無い絵をレーピンと確信するものの、1万ユーロ(約130万円)が集められず、孫の大学資金を下させ、ますます娘を怒らせます。
最後に大きな取引をしたいという願いは、後からレーピンと知ったオークションハウスの社長に邪魔され成立しません。それでもレーピンと見抜いた自分の目に、絵に捧げてきた人生の到達点として、満足している様子が印象的でした。
ラスト、絵の裏から娘への手紙が出てきて、そこには娘への謝罪と孫への遺言が書かれていました。
この孫がいかにも今時の男の子なんですが、なかなか商才があり調査能力も高い。この子がいずれ彼の情熱を引き継いでくれるのかもしれません。

ところで、『嘘八百 京都ロワイヤル』ではお稲荷さんが無性に食べたくなった私ですが、この映画ではシナモンロール!
きちんと箱に入れ紐で縛る包装も風情があります。そういえばフィンランドが舞台の『かもめ食堂』でもシナモンロールが美味しそうでした。シナモンロールってフィンランド名物なのかしら?

『ロイヤル・ナイト』『引っ越し大名』『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

cinema
03 /12 2021
東日本大震災から10年が経ちました。
あっという間の10年のような、まだ10年?のような……
我が家は神戸が故郷なので、阪神淡路大震災の時には本当に驚きましたが、その後日本を襲った地震、台風、その他もろもろ。さらに昨年の世界同時パンデミック。その間、個人レベルでも肺がん、親の介護etcといろいろありましたが、高度成長期に生まれ、安定した右肩上がりの社会に慣れすぎていただけなのかもしれないと思うようになりました。個人レベルでも国レベルでも世界レベルでも地球レベルでも、生きるってことは変化することだから、すっかり安心しきれる人生なんてないんですね。

『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』監督:ジュリアン・ジャロルド(2015)
royalnight.jpg
19歳のエリザベス女王が非公式に外出した実話をベースに、お忍びで自由を満喫した一夜限りの冒険を描くドラマ。ドイツとの戦争に終止符が打たれた'45.5.8のロンドンでは、人々が戦勝を祝い町中どんちゃん騒ぎ。エリザベス王女と妹のマーガレット王女は父である国王の許可を得てお忍びでパーティに出かけるが、会場を抜け出した妹を探してエリザベスも街へ。
どこまで本当の実話なのか分かりませんが、事実だとするとかなり危なっかしい目にあっていたことになります。特に妹マーガレット王女はかなりパープー娘として描かれ、知り合った男性とドンチャン騒ぎに繰り出し、カクテルに薬を入れられ娼婦館へ連れ込まれ、と相当危ない状態。
喧騒のパブでもラジオで国王の放送が始まると皆静かに聞き、国王万歳と口々に叫ぶ。当時の人々の英王室に対する敬意が分かります。たまたまバスで知り合い、エリザベスを助ける兵士だけが「こんな薄ペラな言葉」と反発します。戦争で地獄を見てきた貧しい彼と王女。英国の格差社会を描く設定は現代ならではの創作なのか?
エリザベスはサラ・ガドン。サラ・ガドンといえば「ルイの9番目の人生」のやばいママ。「複製された男」も病んでる感満載の映画だったし、おまけにクローネンバーグ親子のミューズとのこと。私の中では危ない美人のイメージでしたので、エリザベス女王役というのは意外でした。不思議なことに病んでる映画の中の方が彼女はきれいに見えます。
相手役の兵士は「ミッドサマー」のヒロインの彼。「ローズ秘密の頁」でもヒロインの彼、西洋の基準ではイケメンなのか?
エリザベス王女の父、国王ジョージ6世役はお懐かしやルパート・エヴェレット。「アナザー・カントリー」(1983)はもう40年近く前か…
そうそう!全く関係ない話ですが、「ミッドサマー」の村の祝祭で、冒頭亡くなる村の高齢男性、「ベニスに死す」の美少年ビョルン・アンドレセンって知ってました!?
懐かしの美形がおじいさんになって映画に出てる……時の流れを感じます。


『引っ越し大名!』 監督: 犬童一心(2019)
hikkosi.jpg
姫路藩主の松平直矩は、幕府から豊後・日田への国替えを命じられ、度重なる国替えで財政が困窮している上に減封と、藩最大のピンチに頭を抱えていた。ある日、人と交わらずにいつも本を読んでいて「かたつむり」と呼ばれている書庫番の片桐春之介(星野源)は、書物好きなら博識だろうと、国替えを仕切る引っ越し奉行に任命される(シネマトゥディ)

星野源、高橋一生、高畑充希と、人気の俳優陣が出演。『超高速参勤交代』など最近、コメディタッチの時代劇が流行のようです。一応実話ベースらしく2代目松平直矩は生涯7回も国替えさせられ本当に引越し大名とあだ名されたそうです。
実はこの映画を見た理由はニコラス・ケイジの妻が出てるというので(笑)でもかなり小さい役のようで全然分かりませんでした。
しかし思いがけずピエール瀧が出ていて驚きました。お役御免(リストラ)に会う武士の役で、星野源に「我慢していればまた戻れる」と諭される役。ラストも出てくる重要な役。カットせず公開されたらしいのですが、状況的に妙にぴったりの役柄。しっかり反省しまた戻ってきて欲しいものです。



『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』監督:タイラー・ニルソン マイケル・シュワルツ
peanut.jpg
ダウン症のザック(ザック・ゴッツァーゲン)は、老人養護施設で生活していた。ある日、ずっと憧れていたプロレスラーの養成学校に入るために施設を脱走した彼は、漁師のタイラー(シャイア・ラブーフ)と出会う。一方、施設の看護師エレノア(ダコタ・ジョンソン)は、ザックを捜していた。(シネマトゥディ)

なんだろう、キャストがみないいし、雰囲気もいいので、なんとなくいい映画のような印象ですけど、相当甘々かつテキト〜な脚本です。タイラーは最愛の兄を亡くし漁業権を持っていないため漁師仲間から疎外されており、ザックも家族に捨てられたらしく州の指示で空きのある老人施設に入れられており、介護士たちからウスノロと疎外されていて……、背景も簡単にセリフで語られるだけ、雰囲気で見せる映画です。しかしタイラーは漁のためのカニカゴ?を放火、追ってきた猟師たちは1シーズンの収益が無くなったと怒りまくっています。この追手の漁師たちは完全に悪役に描かれてますが、そもそもヤケになって地域の仕事道具に放火するなんて!どう見てもタイラーが悪い。
看護師のエレノアも加わり、この3人が擬似家族になるロードムービー。
ダコタ・ジョンソンは初めて見ましたが、メラニー・グリフィスの娘にしては、クセ強の母に似ず日本人好みのかわい子ちゃん。
ロードムービーとしての描き方も類型的ですが、出てくる盲目の黒人とか、落ちぶれたレスラー&その周辺の人々の開催するご近所プロレスが面白い。プロレスラー役は実際のアメプロの人々らしい。しかし、なんと言っても最初の高齢者施設のブルース・ダーンが最高。この人自身がおじいさんですから、上手いも何もないんですけど、この人とクリストファー・プラマーはいい爺様俳優でした。先月クリストファー・プラマー(91才)はお亡くなりになってしまいましたが、ブルース・ダーンはまだ若い(84才)ので、彼の分も頑張っていただきたいものです。
映画の方は最後3人でフロリダ行って、おいおい、この先どうするの?という終わり方ですが、なんとなく”これでいいのだ”と思わせる映画でした。

『007/ドクター・ノオ 』『TOKYO!』『恐竜が教えてくれたこと』『THEY SHALL NOT GROW OLD』

cinema
03 /04 2021
『007/ドクター・ノオ 』監督:テレンス・ヤング(1962)
007DrNo.jpg
記念すべき007第1作。昨秋90才で亡くなったショーン・コネリー31才の時の出世作。さすがに若いです。
'62年当時のスパイ映画は今見るとツッコミどころ満載。なんだかカリブの観光映画のよう。何度も命を狙われてるのに、セキュリティ甘々のホテルでフロントに鍵預けて出かけちゃうのも。誰も近づけないはずのドクター・ノオの島に呑気にボンドガールが貝を取りに来るのも(笑)
初代ボンドガールはウルスラ・アンドレス。グラマーを通り越して、筋骨隆々のアマゾネス体型。
意外だったのは007第1作の敵、ドクター・ノオが中国人なこと。もちろんソ連に通じてるとの設定で、当時のスパイ映画では、英米の敵は常にソ連。
ストーリーは消息を絶った前任者の調査でジャマイカへ飛んだボンド。ドクター・ノオ博士を探り、博士がソ連に通じアメリカの誘導ミサイルを妨害していることを知る。おいおいおい、と思ったのは最後、ドクター・ノオの秘密基地を破壊するけれど、そこは剥き出しの原子炉。そんなことしたらカリブ海が放射能汚染されちゃうってば〜!!
子供の頃、TVで007を見たとき、子供の目にはショーン・コネリーは変な顔したおじさんという印象で、西洋ではこういう人がかっこいいのか?と不思議に思ったものです。今見ると、とてもスマートでスーツがよく似合ってます。


『TOKYO!』監督:1.ミシェル・ゴンドリー 2.レオス・カラックス 3.ポン・ジュノ(2008)
tokyo!.jpg
1.映画監督を目指す恋人と一緒に上京してきたものの、自分自身の夢や目的を見いだせない女性。そんなある日、彼女は肋骨(ろっこつ)の一部が木になってきていることに気づく。
2.東京の地下に住む怪人が地上にでては人間を襲い、捕まり死刑になるが、消え、次はNYに出没すると予告編が出て終
3.10年間引きこもり続ける男はある日、ピザ配達の女性に恋をする。彼女に会いに行こうと外に出ると、東京中が信じられない事態になっていた。
という、東京を舞台にした3作のオムニバス映画。3篇はそれぞれ関連なし。
どれも実験映画的なため、短い中で人間ドラマを見せるタイプの映画ではありません。どれもヘンテコさを楽しむ映画でした。
レオン・カラックスはこの怪人役(ドニ・ラヴァン)と組んだ「ホーリー・モーターズ」は見たことがあります。この人が出ずっぱりでどんどん異なる役を演じ、内容は映画史を描いて?らしいのですが、カルト映画っぽい印象でした。
この3本の中ではポン・ジュノ監督の香川照之のひきこもりの話が一番面白かったです。香川照之がとても若いのに比べ、蒼井優が今と何も変わっていないのが驚き。全然老けない。



『恐竜が教えてくれたこと』監督:ステーフェン・ワウテルロウト(2019)
kyouryuu.jpg
11歳の少年サムは、家族とオランダ北部の島にバカンスで訪れている。生き物には寿命があると気づいた彼は、最後の日を迎えた恐竜の気持ちを考える。ある日島に住む少女テスと知り合う。母と二人暮らしのテスは島に、母の若き日の旅先での恋の相手(=実の父)を突き止め招待する。オランダ映画。「ぼくとテスの秘密の七日間」という児童文学が原作。
以前見たドイツ映画『50年後の僕たちは』(2020.01.22)に比べると、登場人物が深刻な問題を抱えているわけではなく、大した事件も起きず、(11才だけに)まだ性の目覚にも早く、平和な映画です。でもとっても好きです、この映画。なんと言っても主人公のサムが可愛い!顔も可愛いのですが、3つ上の兄がいかにも男子なのに比べて、最後の恐竜の死に共感して思い悩む。そして自分は家族の中で一番下だから(家族構成は両親、兄、自分)最後に死ぬと思い、一人ぼっちに慣れるための訓練を真剣に始めます。その内面的で繊細なところがなんとも愛おしい。でも決して暗いわけではなく、素直で優しい性格。島に母と住むテスと知り合い、大体こういう子はちょっと年上の女の子に振り回されるのがよく似合います(ex「ジョジョ・ザ・ラビット」)
なかなか男性にときめきにくいtontonですが、この少年にはときめいたわ〜(笑)


『THEY SHALL NOT GROW OLD 彼らは生きていた』監督:ピーター・ジャクソン (2018)
Theyshall.jpg
終結後、約100年たった第1次世界大戦の記録映像を、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどのピーター・ジャクソン監督が再構築したドキュメンタリー。イギリスの帝国戦争博物館が所蔵する2,200時間を超える映像を、最新のデジタル技術で修復・着色・3D化して、BBCが所有する退役軍人のインタビュー音声などを交えながら、戦場の生々しさと同時に兵士たちの人間性を映し出す。(シネマトゥデイ)

非常に淡々とした生存者の証言で綴るドキュメンタリー。戦闘の合間の兵士たちの笑顔が印象的。まだカメラに慣れていないため、カメラを向けられると笑ってしまう人が多かったのかもしれません。反面、デジタル修復、着色した映像は生々しく、頭や顔、手足の吹き飛んだ死体がこれでもかと写ります。500人で敵人に突撃、100人しか生き残らなかった戦闘場面の記録が出ます。淡々としたドキュメンタリーながらR15なのも納得です。
第2次大戦は映像史料も多く、広島長崎に見るように大量破壊兵器が使われた悲惨なイメージがあります。しかし第1次大戦は昔すぎてピンと来ないし、おまけになんで世界大戦になったのか、何度聞いてもさっぱり分からない。しかしこのドキュメンタリーを見て、現代の戦争以上にある種の生々しさを感じました。塹壕の中で泥にまみれ大砲と毒ガスを撃ち合う。すぐ近くに死体がゴロゴロしている泥の中で眠り、食事し、お茶する。ちょっとだけ長閑だと思ったのは、最前線からわずか数キロのところに移動し、交代で休憩を取る部分。空からの攻撃があったらそんなことは無理だろうから、そこだけは第2次よりマシだったんだな、と思いました。
第1次の兵士たちは10代が多かったようで、17、8歳の少年たちが国威高揚映画を見て、国を守るために続々と志願。この辺はいつの時代も同じですね。
この映画でいくつか驚いた点は、捕虜にしたドイツ兵たちとイギリス兵たちは今の今まで殺し合ってたわりに、敵に対してすぐに親しみを覚えるところ。なぜか証言した人たちは皆、敵のドイツ兵を悪く言いません。これは戦場になっていない(よって家族を殺されていない)イギリス兵ならではの感想かもしれません。フランス兵ならまた別の感想を持つのかも?
一番驚いたのは、多くの仲間を殺され、疲労困憊して帰国した兵隊たちを待っていた現実。イギリスは戦勝国だったのにもかかわらず…帰還兵に世間は冷たい眼差しで、さらに一人の兵士はショックだったことをこう証言しました。「顔なじみに会ったら「ずっといなかったけど、どこ行ってたの?」と言われた」と。
国のためにと駆り出され、多くの若者が亡くなり、帰国すれば感謝もいたわりの言葉もない。戦争の虚しさをこの一言が語っています。

tonton

映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
カテゴリに「闘病記」も加わりました。