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『ノー・マンズ・ランド』『男はつらいよ お帰り 寅さん』『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』『星屑の町』『黒い司法 0%からの奇跡』

cinema
01 /31 2021
昨年からぽちぽちと実家の片付けをしていますが、ともかく物が多くて終わらない。どうしてこんなに物が多いのか?私は主に母関係担当ですが、物が半端なく多い!母の趣味は覚えている限り、まずソーイング(プロ級)、編み物、書道、鎌倉彫り、絵画、なんとかフラワー(パンとかリボンとか素材色々)、木目込み人形、あとは忘れましたが、ともかく手先の器用な人で常に何かしら作ってました。でも実は一番好きなのはパズルと時刻表で乗り継ぎを考えることじゃなかったかな。乗り鉄でもあり、50過ぎてから「青春18切符」で北海道から九州まで鈍行乗り継いで旅したり、真冬の日本海を走る五能線に乗りに行ってたっけ。私と違ってドラマや小説は全く興味なかった。他人の人生に興味のない人だったよね、あの人。などど、母の人生を振り返りながら、母の大量の持ち物を片付ける日々です(注:母はまだ生きてます)。

『ノー・マンズ・ランド』監督:ダニス・タノビッチ(2001)
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アカデミー外国語映画賞、カンヌ映画祭脚本賞などを受賞。93年、ボスニア紛争下、ボスニアとセルビアの中間地帯“ノー・マンズ・ランド”に取り残されたセルビの新兵チキとボスニア兵のニノ、死体と思われ地雷を体の下に仕掛けられたニノの親友ツェラ。お互いの駆け引きや、国連防護軍や、マスコミも巻き込み、ユーモアを交えて描く。

旧ユーゴスラビア連邦共和国は現在スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、北マケドニアの6つの国になっているそうです。ユーゴスラビア紛争は1991~2001に起き、現在もまだ一部民族的対立は続いているとか。クロアチアは今じゃ日本人にも人気の観光地ですが、ほんの20年前まで紛争地帯だったのか……
国連軍やマスコミの描き方はユーモラスというよりもどこか皮肉な描き方です。
ボスニアの兵士とセルビアの新兵、取り残された塹壕の中で、お互いにお前の方が最初に戦争を始めたと罵り合うのですが、どんな戦争にも何かきっかけはあるんでしょうが、始めたら最後簡単には止まらないのが戦争。一時は仲良くなりかけた二人。しかしやられたらやり返す、まさにたった二人の人間の間でも戦争と同じ仕組みが繰り返され……。残されたのは地雷を仕掛けられ動けないツェラ。最後に残るのは虚しさのみ。
この映画で見ていて印象的なのは国連軍。現場の軍曹はこの事態をなんとかしたいと努力するものの、上官は女性部下といちゃついててやる気なし。目の前で人が死んでても、見守るしかできない歯痒さ。
戦争の虚しさを皮肉とユーモアに包んだ変化球の戦争映画でした。



『男はつらいよ お帰り 寅さん』監督:山田洋次(2019)
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現代のあらすじは寅さんの甥の満男(吉岡秀隆)が初恋の人、泉(後藤久美子)と偶然再会。その3日間の物語とともに、過去のシリーズ場面が散りばめられる。という往年の「男はつらいよ」を全く知らない人が見たら、全然面白くないだろう内容。しかし大ファンとは言わないものの、寅さんはそれなりに見ているので、楽しく見ました。

現在のストーリーは満男が作家でゴクミがユニセフの職員だったかな。ゴクミがたまたま日本にいる時、満男のサイン会で偶然再会。満男の娘が話し方が昭和の女優みたいで、倍賞千恵子と前田吟のことを「おばあちゃま」「おじいちゃま」と呼んでる。いろいろキャラ設定が下町の風情に合ってない気がしましたが、言ってみれば現在のストーリーは回想シーンを入れるための道具立て、焦点は寅さんのいる過去のシーン。だから寅さんやたこ社長が出てくるだけで懐かしい。倍賞千恵子の若い頃のミニスカートにハイソックスとかもかわいい。私は寅さんは若い頃のが断然好きです。晩年の寅さんは正直つまらないのであまり見ていないのですが、おじちゃんが3人出てくるのは懐かしかった。
満男は子役時代からずっと吉岡秀隆なのでもはや「国民の甥っ子」という印象です。ゴクミは若い頃の美しさにびっくり。今時のアイドルと造形のレベルが違う顔です。今もきれいだけど、彫りが深いせいかどこの国の人か分からない。
ところで寅屋ってバリアフリーの対極にある段差だらけの家だな、と。そういうところに目がいく年になってしまった自分を発見しました。


『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』監督 :レジス・ロワンサル(2019)
9translator
ミステリー小説「デダリュス」完結編を世界で同時に発売するため、洋館の地下室に9か国の翻訳家が集め監禁。毎日20ページだけ原稿を渡され翻訳作業を進めていた。ある日、出版社の社長に、金を支払わなければ発売前の新刊を流出させると脅迫が来る。

構成少々ネタバレ
なんと、これはダン・ブラウン著「インフェルノ」出版秘話から生まれたそうです。実際、各国の翻訳家を隔離し、流出を防いだそうで、この映画でもベストセラー小説はもはや文学ではなく、巨額の利益を産む商売品であることが強調されています。
面白い構成です。出版社社長の城!の地下に監禁され翻訳を始める9人の翻訳家の物語と同時に、その2ヶ月後、どこかの刑務所で社長と誰かが面会しているシーンが同時に進みます。
で、最後にその相手(犯人)がわかるのかと思いきや、早々に刑務所に入ってるのは社長で、その相手も写ります。
では次にあれほど監視の厳しい中からどうやって流出させたのか?がキモかと思いきや、それも途中で分かります。
さらに……というどんでん返し(というべきか?)の面白さもあり、最後まで飽きません。

さらに、いろいろ分かった後も、最後の最後に本当の動機が分かるというしくみです。
ここで、それまでのミステリー色を変調させ、切ない理由を見せます。。
とはいえ冷静に考えると、巻き込まれた翻訳者がかわいそうじゃん。というケチを付けたい気持ちも少々。
ちょっと残念なのは中国語の翻訳家はいるけれど、日本語はいません。日本製コピー機は活躍しますけど(笑)

9人の翻訳家の面々も個性的で、こんな世界的ベストセラーなら、現実はもっとベテラン揃いなんじゃ?と思いますが、そこは映画的見た目を重視。若い女性も多く、特にヒロイン的役のオルガ・キュリレンコが美しい。「テリーギリアムのドン・キホーテ」ではすれっからしのボスの妻でしたが、こちらでは小説のヒロインと同化した白いドレスの文学系美女。いちいち会話が文学の引用なのもオタクチックで面白い。
あえて不満を言えば、もっともっと翻訳家という職業の業というか、オタク描写を出しても良かった気がします。9人のミスタリーオタクの物語にして、何言ってるのか全くわからん?みたいな話でも面白かったかも。でもそれだとコメディになっちゃうかな(笑)
インターネットは様々な新しい犯罪を生み、そのセキュリティに追われる世界観も現代という時代を表してるなぁと思いました。


『星屑の町』監督:杉山泰一(2019)
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『コンフィデンスマンJP』シリーズの監督作品。
これは若い人には多分つまんないだろうなぁ〜という映画でしたが、年齢層高めの人が見るときっと面白いと思います。
ムード歌謡とか、演歌とか、最も興味のないジャンルでしたが、のん(能年 玲奈)が出演しているということで、期待せず見たら意外や楽しい映画でした。ラサール石井の舞台が原作ということですが、そこは映画、東北の田舎の風景や、古めかしい小学校の校舎が映像として生きています。
前半はリーダーの出身地であるど田舎にコンサートにきた男性グループとゲストの女性歌手(戸田恵子)を中心に、売れない歌手のドサ回りという生活がなかなかリアルかつ興味深く描かれます。そこに歌手志望の地元の娘(のん)が現れ、彼女を諦めさせるために、経済的な話や、仕送りの話、「ではなぜ続けているのか?」と問われ、この年から別のことをできるか、という中年が見るといろいろ身につまされそうな吐露もあり、、やがて男性グループ内の鬱憤が爆発、グループが破綻。
そこにのんが入り、若い女の子プラスおじさんグループとして、「恋の季節」や島倉千代子の「本気かしら」など、懐かしのメロディで人気が出てTVに出演。
この時ののんちゃんのレトロなファッションやヘアスタイルがめちゃめちゃ可愛い!
ラストは男性グループはまた元のボーカル(太平サブロー)と関係修復し、のんは別の男性グループと組んで活躍しているところで終わります。
手堅く職人芸的な日本映画。残念ながら昨年の3月公開だったので、きっとコロナで見た人は少なかったでしょうが、年齢高めの人にきっと受けただろうな、と思います。
またこの映画は久慈市がバックで協力しており、完全に「あまちゃんファン」を狙ったと思われます。能連玲奈ちゃんはややこしい芸能界のしきたりに阻まれ、普通ならとっくに消えててもおかしくないはずなのに、しっかり特殊な立ち位置で頑張っています。どこか中高年の郷愁を誘う不思議な魅力の女の子で、これからもニッチな魅力の不思議な女優として活躍してもらいたいと思います。


『黒い司法 0%からの奇跡』監督:デスティン・ダニエル・クレットン(2019)
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林業に携わるウォルター(ジェイミー・フォックス)は18才の白人女性殺害の犯人として死刑を宣告される。ハーバード出身の新人弁護士ブライアンは弱い人の味方になりたいという使命感から黒人差別の強いこの土地で死刑囚のための人権活動を始める。そんな中で、ウォルターの無実を確信。再審への道のりを開く。

『黒い司法 死刑大国アメリカの冤罪』というノンフィクション(2014)の映画化だそう。舞台はアラバマ。『アラバマ物語』が有名ですが、これは白人弁護士が黒人青年の無実を晴らすという内容だそうです。映画の中でこの街の人々が盛んに「アラバマ博物館」を主人公に勧めるシーンがありご当地自慢らしいのですが、アラバマ物語は1930年代。こちら『黒い司法』のモデルになった事件は1987〜93年前後の話。半世紀経っているのに、さらにその博物館を自慢しているのに、相変わらず黒人差別のひどい場所というのが不思議でした。
これ現代の話?と驚くほどの乱暴な捜査、デタラメな裁判。相当派手にドラマ化として話を作っているのかと思いきや、最後に関係者全ての写真が出てきて、刑務所の隣の囚人のエピソードまで実話なのにびっくり。
アラバマ州はアメリカ南部。アフリカから連れてきた人々を綿花プランテーションで奴隷労働に従事させてきた歴史がある場所です。人種差別が簡単になくならないのは仕方ないとして、、、なぜ司法の場でこんなデタラメな証拠や非科学的な検証が通ってしまうのか?
裁判官とか検事とかやってる人は、とことん論理的に物を考える人種で、筋が通らないことは気持ち悪くて認められないと思っていたけど、そうでもないのか?
この事件から30年経って、もしかしたら状況はますます歪んでいる可能性に不安を覚えました。現代のトランプ支持者が不正選挙を信じている姿を見ても、人というのは思い込みと自分の信じたい物を真実だと思い込む、とても歪んだレンズの持ち主なのだと思います。
主演のマイケル・B・ジョーダンは唇の厚さが気になりますが(笑)、童顔で愛嬌ある顔立ち。最後に出てくるブライアン本人によく似ています。死刑囚ウォルター役ジェイミー・フォックスは感情を抑えつつ冤罪に巻き込まれた心情をリアルに語ります。
最後に出てくる同州の誤審率の多さにも驚きました。







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ワンコ

dog
01 /24 2021
コロナ自粛期間、おまけに今日は冷たい雨。雪国の人には申し訳ないけれど、朝起きて窓開けたら一面真っ白!っていうのに期待してたのでガックリ。雪だったらトンちゃんを近所の空き地に連れてって、こっそり離して走らせようと思ってたのに(←こらこら)まあ、その後の雪かきを思えば、雨でよかったんですけれど。

久しぶりにトンちゃんについてです。
トンちゃんは人間がリビングからトイレや洗面所に出て行くと、その足元について行き、そのままその存在に気づかずリビングに戻ってドアを閉めてしまい、トンちゃんを部屋から締め出してしまうことがよくあります。そのまま気づかずにいると、どこかから小さな小さな声で「ク〜ン」という声が聞こえてきて、あれ?トンちゃんは?と探すとリビングの外の玄関ホール(ホールというには狭〜い玄関とトイレに挟まれた空間)にいます。「入れて〜」と小さな声で鳴いているのです。もう少し大きな声でワンワン言えばすぐ分かるのに自己主張しません。犬というのは我慢強い生き物だなといつも感心するのですが、友人宅の犬は常にワンワンうるさいそうで、そう聞くとトンちゃんは大人しい方なのだと思います。
ジャックラッセルテリアらしく、子犬の頃は家中を破壊する気か!?というくらいワンパクでしたが、人や他の犬に対して攻撃的なところは全くありません。(親バカですが、)かなりいい子だと思います。
しかし1番の欠点は半端なく食い意地が張ってることです。
そのため、一度でも人間が上げてしまったものは匂いで察知して、くれくれコールがすごい。主に夫が甘やかした結果なのですが、「くれくれラインナップ」はまずパン、リンゴ、サツマイモ、なぜか海苔、ヨーグルト、さらに台所で大根を切っていると、すごい勢いでやってきて欲しがります。生大根が大好きです。しつこくくれるまで、そばでクンクン言いますが、その声音がバラエティに富んでいて、最初は嬉しそうに明るくクンクン、くれないと甘えるようにク〜ン、それでもくれないと低い声でどうかつ調ボウワウ、無視してると再び哀願調でクィ〜ンクィ〜ン、それでもくれないと、完全に喋ってるような文句調でプイプイワンウォウボウワウとぶつくさ言い続けます。そのしつこさに呆れ、声音のバラエティに笑ってしまい、夫はあっさり負けてあげてしまいますが、私もあまりのおかしさに時々負けてしまいます。
しかしトンちゃんもすでに8才。ただでさえ肥満気味、昨年からリンゴとサツマイモ は少量だけOK。パン菓子類は決してあげてはダメと家族に言い渡しました。
それでもトンちゃんの食い意地は止まらず、そのくせ同時に我慢強さもあり、その葛藤に自らも悩んでいるのか分かりませんが……先日、公園で落ちていた人間の食べ物(唐揚げ)をパクッと口に入れてしまい、「出せ!」と怒鳴りましたが、食い意地が半端なく張っているトンちゃん、すごく悩んでいました。そういう時は指をトンちゃんの口に突っ込んで出すのですが、先回りして歯を食いしばり、私の指を口に入れさせません。それでも飲み込みもせず、その唐揚げらしきものを口に含んだまま、すごく悩んでいます。
食べるべきか?吐き出すべきか?トンちゃん「to be or not to be」という風情で悩んでいます。
結局、私の剣幕にビビったのか、その唐揚げを吐き出し、その場を去ったのです。(ちなみにそいつはうんち袋に入れて捨てといたわ。公園でお弁当食べた人、ゴミはちゃんと捨てといてね)
本当に、食い意地さえ張ってなければ、とってもいい子なんですけど。

他にトンちゃんの特徴としては、やたら愛嬌があります。
散歩中ワン友に会うと全身で喜びを表し、すごい勢いでぐるぐる回り、さらに必ず飼い主にご挨拶するので人気者です。
私には年配の男性は犬を連れていないと区別がつかなかったりするのですが、先日も向こうから歩いてくる高齢男性に、トンちゃん駆け寄ってご挨拶。おじいさんがいつもの犬を連れていないので、私は最初、誰だか分かりませんでしたが、駆け寄ってきたトンちゃんを見て、「挨拶にきてくれたんだね」とその方はとても喜んでくれました。
コロナで家に引きこもる日々、トンちゃんのお散歩でせめてもの運動不足を補い、夫がべったりいるストレスから癒され(笑)、ホント、トンちゃんがいて日々救われてます。こういう引きこもり生活だと犬の存在は大きくなります。今心配なのは、コロナがおさまり、普通に外出するようになった時、トンちゃんが以前のように、一人でちゃんとお留守番できるかな?ということです。家族が一緒にいることに犬側も慣れちゃってるんじゃないでしょうか?

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『若女将は小学生』『移動都市 モータルエンジン』『ミルカ』『名もなき野良犬の輪舞』『僕たちは希望という名の列車に乗った』

cinema
01 /14 2021
年末から年始にかけて見た映画。
年末の大掃除で、本の処分とDVD録画の整理をしました。DVDは録画したものの、おそらくそのまま見ないだろうと思われる映画を削除したのですが、その基準が変わってきました。
まず芸術的な作品はなかなか見なくなりました。難しいものを理解しようとする辛抱が足りなくなっているのかも?
今回は、アニメ、SF、スポーツ、ヤクザ、青春映画といろいろ毛色の違う5本を見てみました。
よかったものにおすすめマーク❤️を付けてみました。




『若おかみは小学生』監督: 高坂希太郎(2018)
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だいぶ前、子どもがDVDに録画したもののようです。アニメ映画。20才下の友人が時々おすすめ本を紹介してくれます。児童文学好きの彼女のおすすめの中にこの原作があったので。

あらすじは以下↓
交通事故で両親が他界した小学6年生のおっこは、祖母が営む旅館「春の屋」に引き取られる。ライバル旅館の跡取り娘で同級生の真月や、昔から旅館に住み着いているユーレイのウリ坊たちと交流しながら、若おかみの修業に奮闘するおっこ。彼女は、失敗を重ねながらも訪れた客を懸命にもてなそうとしていた。

絵も綺麗だし、キャラクターも可愛くて、普通に面白いです。
が、なんとも引っかかるものがありました。
冒頭、高速道路でいきなり大型トラクターが反対車線にはみだし事故に巻き込まれるのですが、ヒロインは子供の幽霊に助けられ、傷一つなく助かります。両親を失い、祖母の温泉旅館に引き取られ、なり行きで若女将修行が始まるのですが、いろいろあって若女将として旅館の仕事にやりがいを見いだしていきます。そしてある一家が泊まりにきて、、
腎臓を取ったというその父親のため、塩分と油分が控えめながらコクのある美味しい食事を提供したいとヒロインは奮闘し、ライバルの協力も得て実現。その家族から心から喜ばれます。
その後、その客が両親を失った事故の原因を作ったトラクターの運転手だったと知り、混乱し取り乱すヒロイン。しかしすぐに立ち直り、「もう恨んでないから泊まっていってくれ」とその一家に伝え、ハッピーエンド!?
ここは涙腺の緩むシーンで、うちの子も友達も号泣したそうです。私もここで素直に感動できる性格だったらよかったんですけど……
主人公は両親の幻影をしばしば見て、その死をリアルに感じられていないのです。なのに、悲しみも怒りもさっさと仕舞い込んで、小学生が旅館の女将のしての矜持を一番に優先させる?どんだけ無茶な要求でしょうか?もっとちゃんと悲しんだり、怒ったりさせてあげなくていいんかい?と思ってしまいました。その事故の犯人を目の前にして、1時間ほど混乱しただけで、すぐに女将としてそのお客をもてなすことを最優先させて感動させるなんて。これじゃあ、小学生の少女に長年修行した宗教家並みの精神を求めているとしか思えません。
映画やドラマで感情を一時的に揺さぶるのは簡単なことかもしれません。それで感動して良い気持ちになれれば娯楽なんだから問題ないと思います。
しかしこれは子供向けの作品。子供の頃からこういうものを見て、これが正しい人間のあり方、規範と思って成長したら怖いです。
きっと原作ではもっとその辺の複雑な心情が書かれているのか分かりませんが、映画なので端折ってこうなったのかもしれません。
日本のアニメは宮崎駿のアニメに出てくる少女たちも気高く、勇気があり、思いやりに溢れ、賢い。日本のアニメは少女たちにどこまでも理想を託します。



『移動都市 モータルエンジン』監督 : クリスチャン・リヴァーズ(2018)
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60分戦争と呼ばれる戦いから1,700年が経過した地球。人々は荒廃した大地をはうようにして進む巨大移動都市に暮らし、ほかの移動都市を取り込み資源を奪いながら生活していた。そんな中、少女ヘスター(ヘラ・ヒルマー)は、ある目的を果たすために移動都市のロンドンへと潜入し、トム(ロバート・シーアン)という青年と出会う。

フィリップ・リーヴの小説「移動都市」を『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが制作・脚本ということで期待して見ましたが、う〜ん、ちょっともったいない印象かな?
「ハウルの動く城」を思わせる巨大な移動都市「ロンドン」が、小型の採掘移動都市を追跡、飲み込む冒頭場面などはすごく面白いです。他にも荒涼とした大地の造形、様々な飛行物体、ヒロイン、へスター・ショウを助ける東洋系のめっちゃ強い女性アナもかっこいい。
原作を未読のため分かりませんが、ドラマ部分は広く浅く盛り込み過ぎの印象です。人造人間がへスターを追ってくる理由もイマイチ説得力ないし、ヴァレンタインの娘ももっと重要人物かと思いきや添え物っぽいし、へスターと宿敵ヴァレンタインの関係だけに絞った方が良かったかもしれません。



❤️『ミルカ』監督 :ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ(2013)
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実在のインド人ランナーのミルカ・シンをボリウッドスターのファルハーン・アクタルが体脂肪5%まで落として熱演。栄光の陰に潜む、国家間の紛争に翻弄(ほんろう)された男の知られざる半生を描き切る。

1960年のローマオリンピックからドラマは始まります。インド人選手ミルカ・シンには400メートル走でのメダル獲得の大きな期待が掛かっており、順調にトップを走り、そのまま金メダルと思いきや、ゴールを目前にして後ろを振り返ってしまったことで、4位という結果に終わります。その後、パキスタンで開催される陸上親善大会のインド団長に指名されるも、パキスタン行きを断固拒否するミルカ。ネール首相の命を受けてスポーツ大臣とミルカのコーチがミルカの住むインド北部チャンディガルに向かう。列車の中で、コーチが彼の壮絶な人生を語り始める…という展開。

まずミルカ役の見事に引き締まった肉体に目が釘付け。思わず映画見ながら、この1年で3キロ太った我が身を振り返り、腹筋しながら見るというアホなトライも5分と続かず息切れ。
それはともかく、これはただのスポ根映画ではなく、背景に彼がゴール直前振り返った理由が彼の人生を振り返ることで見えてくる仕組みになっています。といっても、そのものずばり振り返った理由が語られるわけではありません。そこには印パ分離戦争という歴史が背景にあり、これに関してはインド独立に際して何が起きたのか、『英国総督 最後の家』が分かりやすいので、映画としても面白くオススメです。
ミルカの故郷の村はパンジャーブ州にあり、印パ国境地帯のパンジャーブは最も暴動が酷かったようです。
ミルカの一家はシク教徒で父は村を捨てることを拒否、そのため暴徒に襲われ…。パキスタンの村で馬に乗った兵士に追われ、振り返った瞬間のトラウマが走っているときにしばしば蘇り、オリンピックのゴール直前でもそのトラウマから振り返ってしまったことが分かります。故郷の村で実際に何があったのか?それはラスト、親善試合でパキスタンに入り、大会前に故郷の村に帰った時、予想以上の壮絶な事実が分かります。そこで幼なじみに再会し、トラウマを乗り越えて試合に臨むのです。

10才の少年がたった一人、姉を頼ってインドに避難してからのドラマは結構コミカル。
石炭泥棒をしながら生き、美女ビーローに堅気になって認められたくて軍隊に入り、陸上の才能を見出されていく。その後初のメルボルンオリンピック(1956)でも決勝戦の前夜、オーストラリア人コーチの孫娘と夜遊びし過ぎて決勝戦で失敗、結構バカっぽい若者ミルカ。
1958年東京で開催されたアジア大会で当時アジア1のパキスタン選手を破り、200,400mで金メダルを取ってたんですね。レースシーンがどれも迫力があります。
特にラストのパキスタンでのレース。驚くほどの速さを見せ、Flying Sikh(空飛ぶシク教徒)”の名をパキスタンの大統領より授けられるところで終わります。
実際のミルカは'64年の東京オリンピックにも参加していますが、この時はすでにピークを過ぎたのか予選落ちだったようです。



『名もなき野良犬の輪舞』監督:ビョン・ソンヒョン(2017)
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お正月早々、韓国製ヤクザ映画を見ました。
韓国映画は日本より映倫がゆるいのか、暴力描写が怖く、ましてやヤクザ映画なんて趣味じゃないのですが、韓国の俳優で一番好きなソル・ギョング主演ということで(R指定もないし)見てみました。
でもソル・ギョング、もう50才位のはず。それで主演って渋い映画かな?と思ったら、イム・シワンというアイドルグループの男の子と2人が主演でした。
ソル・ギョング演じるジェホは誰も信じずのし上がってきた。刑務所で若者ヒョンス(イム・シワン)に出会い、命を助けられたことから2人は堅い絆で結ばれる。
2人は表向き水産輸入業を装う麻薬密輸犯罪組織の子分として入り込み、組織を乗っ取ろうと目論む。しかし実はヒョンスは警察の潜入捜査官(最初からバレていて、さらに自分から名乗っている)
ボスの甥っ子とも通じているジェホ。さらに警察の上司は捜査追行のためヒョンスに内緒にしていることもある。見ているこちらも、いつ、誰が誰を裏切るのか?だんだん分からなくなる。
堅い絆で結ばれていると思った2人の関係も変化してきて…。
ソル・ギョングは母に殺されかけた過去を持ち、誰も信じず実力だけでのし上がってきたものの、ヒョンスに出会い久しぶりに人を信じたいと思う孤独なヤクザを好演。ジェホの決めセリフは「人を信じるな、状況を信じろ」です。それどういう意味かしら?
ソル・ギョングはやっぱりよかったです。アンジャッシュの児島さんに似て見えたり、内野聖陽に似て見えたり、役によって印象が違う人ですが、やっぱりかっこいいです。




❤️『僕たちは希望という名の列車に乗った』監督:ラース・クラウメ(2018)
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ベルリンの壁建設前夜の東ドイツを舞台に、無意識のうちに政治的タブーを犯してしまった高校生たちに突きつけられる過酷な現実を、実話をもとに映画化した青春ドラマ。1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトは、西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を見る。自由を求めるハンガリー市民に共感した2人は純粋な哀悼の心から、クラスメイトに呼びかけて2分間の黙祷をするが、ソ連の影響下に置かれた東ドイツでは社会主義国家への反逆とみなされてしまう。

実話ということに驚きました。最後に実際の写真も出てきますが、彼らのその後を知りたいものです。
ハンガリー動乱とは民主化を求める市民デモをソ連が戦車で鎮圧した事件で、今の香港と同じようなことが半世紀以上前の東欧各地であったそうです。
主人公の高校生たちは決して社会主義には反対ではなかったのに、自分の意見や感情を素直に表しただけで、自分たちの将来ばかりか、家族の生活も危うくさせるなんて、自由に発言できない社会というものはしみじみ恐ろしいです。
人民教育相のやり方が汚くて、子供たちも知らないそれぞれの親の過去をほじくり出してきて脅迫したり、仲間割れを狙って揺さぶりを掛けたり、これは社会主義とか全体主義とか関係なく、一党独裁体制と言うのはどうしても体制を守ること自体が一番の目的になってしまうのですね。
この映画で見ると、人民教育大臣は対戦時のナチス兵に殺され掛けた傷を見せて「社会主義の敵はイコール「ファシスト」で決して許さない」と言います。どうもこの時代の社会主義圏では「ファシスト」は最大級の侮蔑語のようです。でも結局自分のやってることがファシストと同じだと気がつかないところが怖いです。
一党独裁体制と言うのは、その担当者やトップの判断がどんなに変でもそのまま通ってしまうのが恐ろしい。まあ、民主主義の日本でも最近はいろいろ変ですが。
最後までハラハラドキドキ。映画としてもとても面白く、’50年代の雰囲気も見ていて楽しい。主人公の2人の少年もイケメンくん(笑)テオの一家が学校に行く時乗ってるサイドカー。お父さんとテオがバイクに2人乗り、横に弟2人が乗って走るのがとっても可愛くて良い感じ。
みんなこじんまりした居心地の良さげな家に住んでいて家族揃って食事をとる風景も、どこか郷愁を誘う。勉強を頑張れば労働者階級の子も出世ができる。’50年代は体制にかかわらず世界中が豊かだったようです。
しかしこの数年後ベルリンの壁ができ、監視社会になり、ますますその体制を維持するために人々を締め付けてくることを思うと、めんどくさくても効率が悪くても、やはり民主主義は大切だと思いました。

『忘れられた日本人』『冒険の国』『プラヴィエクとそのほかの時代』

book
01 /08 2021
私がそもそもブログを始めた理由は、、、
本を読み始めて「あ!これ読んだことある!」と気がつき、本棚を探すと同じ本がある…というトホホなパターンを繰り返したため、備忘録として始めたのです。今回、また同じ失敗を繰り返しそうになりましたが、ブログのおかげで注文する寸前にセーフ。

『ふしぎの国のバード』という明治初期、日本の奥地を旅したイザベラ・バードというイギリス人女性を主人公にした漫画があります。その7巻目を読み、『イザベラ・バードの旅『日本奥地紀行』を読む』という宮本常一が当時の日本を解説した本を読もうと思い、『忘れられた日本人』という彼の代表作と一緒に注文しかけました。
ちょうどそんな時、知人が昨秋国内旅行に行った写真をメールで送ってくれたのですが、それが妙にマニアックな場所。聞くと、宮本常一を読んで感動し、その足跡ともいうべき場所を旅したとのこと。へ〜なんという偶然!「私もちょうど読もうと思ってたところ」と返信したのち、ふと思いついて自分のブログを検索してみたら……
なんと3年前に読んでる!!慌てて本棚を探すと……ある。本を見たら内容も思い出しました。で、「忘れられた日本人」だけ注文しました。
年に数えるほどしか本を読まない人間なのに、なぜ本だけこのポカをよくやるのか?若い頃からよくやるポカとはいえ、この年になると別の心配が起きます。私、もしかしてボケ始まってる?…と(大汗)

『忘れられた日本人』宮本常一:著
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すっかり忘れていましたが、この本は40年ほど前に友人に勧められて読んだことを思い出しました。
40年ほど前、高校の同級生から小さな講演会で発表するから聞きにきて欲しいと連絡があり、とある大学の小さな教室に民俗学の講演を聞きに行きました。
彼女の講演は昔話の締めの言葉(「とっぴんぱらり」etc)と数の関連を話したと記憶していますが、彼女の話が終わると同時に、指導教官が「それちょっとこじつけすぎじゃない?」と笑い、会場も彼女も笑っていたことが思い出されます。彼女は学生時代、よく巫女のバイトをしており、民俗学とか神道とかに興味のある人でした。宮本常一以外に柳田國男の「遠野物語」も借りたのですが、こちらは東北の河童の話が超怖くて、夜トイレに行けなくなったのを憶えています。そのせいか明治から戦前にかけての日本の地方に、私は暗〜いイメージを持っていました。

しかし『忘れられた日本人』を読むと、そのあっけらかんとした明るさと大らかさに驚かされました。
先の旅行のメールをくれた人は、山国を切り開いて生きていった日本人のたくましさに感動したそうですが、私はもっと細かい村落の人間関係に感心しました。
例えば、対馬の村の話し合い(寄り合い)の様子。(宮本が全国を調査したのは戦争中を除き昭和10年代〜戦後の30年代中心)
一つの議題について話し合いが始まる。一人が反対意見を言う。するとそこでその議題を突き詰めず、他の話題に移る。しばらくしてまた元の議題に戻る。今度は逆に賛成意見が出る。するとまた他の話題に…という風。せっかちな私など読んでいてイライラしました。しかしここには一気に賛成・反対と二手に分かれて戦わず、ゆるくちんたらと話し合いを進め、角を立てないように長が結論に持っていく。狭い村の人間関係をギクシャクさせず、みんなを納得させ落ち着かせる知恵があるそうです。効率追求の現代人には目から鱗の知恵に感心しました。

 愛知県から飯田市へ向かう山間の村。当時70代の村の老人たちに集まってもらい若い頃(明治時代)の話を取材。ともかく貧しい。今の貧しさとは桁違いで、ギリギリ食べていくのが精一杯。しかしその生活は村一番の働き者など、夜明けから夜遅くまで畑を耕す。すると畑の前の家は遅くまで働く彼のために、戸を閉めず明かりを外に漏らす。ずっと後、宮本の取材で老人たちが思い出を語った際に、彼は初めてそのことを知る。当時、彼はずいぶん夜遅くまで明かりをつけてる家だな、としか思っていなかったそうです。このように村の生活は目に見えない助け合いに支えられていたそうです。
 養子の話も印象的です。この村よりさらに貧しい村の女性が子供を養いきれず、この村に来て一軒一軒泊めてもらう。この時代、見知らぬ旅人が一夜の宿を所望すると、泊めてあげるのが当然だったそう。大体客は囲炉裏端に泊まるのだが、自分がいなくなったあと幼子が一人寝かされるのが不憫で、母親はまた次の家に行く。するとある家でお婆さんが「かわいい子だ。抱いて寝てあげよう」というので、その家にそのまま子供をもらってもらったそうです。
 それから「夜這い」!老人たち曰く「昔はいい娘がいると聞けば、3〜4里は平気で夜這いに行った」んだそうです。朝から1日畑を耕し、その後(1里は約4キロ)徒歩で山越えて夜這い!?
当時は古々米に稗や菜葉を混ぜて食べるのが普通だったそうだが、その食事でそのタフさはどこから?
 また田植えはもともと女性たちの仕事であり楽しみでもあったそうですが、田植えをしながらの会話があけすけなエロ話オンパレード!エロサイトと間違われると困るから引用できませんが、青空の下、田植えをしながら……明るい(笑)
 他にも土佐の橋の下に住む盲目の乞食老人からの聞き取りがびっくり。
彼は両親を知らず学校へも行かずに育つ。そして「ばくろう」と言う牛の売買の職につきますが、これは少々ヤクザな仕事だったようです。宮本が取材した時点では、盲目になって30年、橋の下の小屋に住み、妻の助けと地域の人の施しで生活しています。その妻も元々関係を持っていた女性の娘で、彼の話のほとんどが女性の話。そして彼の忘れられない恋の話がドラマチック。2度あって、どちらも身分の高い奥様との恋。役人の妻と、県会議員の妻。どちらもカタギの美人で優しい女性だったそうで、なぜそんな奥様が身分の低い彼と関係を持ったのか?
当時は割腹の良いタイプがモテ男だったようですが、彼は小柄で華奢なタイプ(私の脳内配役は佐藤健)。ただ当時の男性としては異例に、女性の話をちゃんと聞く男性だったようです。双方とも本気の恋でしたが一人目は迷惑をかけたくなくて自分から去り、二人目の人は風邪であっさり亡くなってしまいます。その二人のことは生涯忘れられないと話します。その後盲目の乞食になっても、何度も裏切ってきた妻に見捨てられない、「橋の下のドンファン」の話。

また昔の人はずっと一か所に定住、狭い人間関係の中で暮らしているイメージがありましたが、若い頃ずいぶん奔放にいろんな場所に移り住んだ人も多く、そういう人を世間師と呼ぶそうです。他にも意外なのは若い娘も結構旅行に行ってたそうで、そこには通説とは異なり女性の性が自由だったこともあるようです。
 この世間師の河内長野の古老の話でもおかしいのが、聖徳太子の記念日はこの地ではなぜか既婚未婚関係なくフリーS⚪︎⚪︎デーだったそうで、当然婚外子ができますが、この子は差別されないとか。それにしてもなぜ、聖徳太子の記念日がそうなるのか?究極の少子化対策にはなりそうですが…
 宮本常一は周防大島(山口県屋代島)の出身で、彼の祖父の話は、祖父に対する深い愛情が感じられ、当時の人が狸もミミズも蟹も人間と同じ土俵でリアリティを持っていた生きている感覚が伝わり、とても美しく感慨深い章です。

それにしても40年前勧められて仕方なく読んだものの、この本が全く印象に残っていない原因は、言葉が分からなかったせいだと思います。おそらく「よばい」って何?という感じで、聞き書きなので方言や老人の言葉が分からず、最後まで読んだかどうかも怪しいです。40年前、若い女の子にとっては謎すぎる本でしたが、今読むとしみじみ面白い本でした。



『冒険の国』桐野夏生:著
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'88年デビュー前の公募作品を書き直したものだそう。ミステリーではなく純文学。
時代はバブル直前。ディズニーランドができ変わっていく街を背景に、その街に生まれずっと住んでいる30代独身女性が主人公。新築マンションに老いた両親と独身の姉と住んでいるが、新住民たちとの違和感や、時代の空気に乗れない感じがよく出ている。マンションの窓から見えるキラキラしたシンデレラ城の光景と彼女の家族の風景の対比も面白い。
著者自身の後書きに「バブルは過ぎ、時代に取り残されることに、さほどの意味はなくなった。現在、ほとんどの人間が、取り残されているのだから。」とある。
桐野夏生はミステリーでも純文学でも、そう言う人を描くのがとてもうまい。そしてそう言う人に妙に共感してしまう私もバブルには全く乗れない(乗せてもらえなかった)人間だった。



『プラヴィエクとそのほかの時代』オルガ トカルチュク:著
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ポーランドの南西部、国境地帯にあるとされる架空の村プラヴィエク。そこに暮らす人々の、ささやかでありつつかけがえのない日常が、ポーランドの20世紀を映しだすとともに、全世界の摂理を、宇宙的神秘をもかいま見させる―「プラヴィエクは宇宙の中心にある。」2018年ノーベル文学賞受賞作家トカルチュクの名を一躍、国際的なものにし、1989年以後に書かれた中東欧文学の最重要作品と評される傑作(「BOOK」データベース)

一昨年チェコに行って以来、中東欧に興味をもち、この有名な作品を読んでみました。
この本はかなり分厚いのですが、寝る前のひととき読むにはもってこいの本でした。
なんと84章からなり、短い章で2、3ページ、長くても10ページ位の断章からなります。淡々とした日常を切り取ったような描写のため、ハラハラドキドキ読書が止まらなくなり寝不足になる心配もなく、毎晩1、2章読むのにちょうどいい塩梅というわけ。
ノーベル文学賞と言っても大江健三郎みたいに一文を咀嚼するのに頭使うような読み辛さもなく読みやすい。強いて言えば、ポーランド人の名前を覚えるのに苦労するくらい。
ます初っ端に「プラヴィエクは宇宙の中心にある。」と来ます。しかし読んでいくと架空の村に暮らす人々の日常が淡々と続き、時折天使やら神が比喩でなく出てくる感じ?
ストーリーは一応「ニェビェスキ」家のゲノヴェファとミハウ夫婦を中心に、時代はミハウが1914年、第1次大戦で出兵するところから始まる。第1次ってポーランドはロシア皇帝軍で参戦したんですね。そもそもポーランドの歴史を知りませんが、日本みたいな国に生まれるとついずっと一続きの「日本」って国と錯覚しそうになるけど、ポーランドは分割、侵略、帰属の変更を余儀なくされて来た国。
「ニェビェスキ」家と「ボスキ」家が中心となり、ニェビェスキ家の長女ミシャとボスキ家の長男パヴェウが1930年結婚、子供たちが生まれ、最後はミシャと弟のイズィドルが年老いて亡くなり、残されたミシャの夫パヴェウが久しぶりに故郷に帰って来た娘アデルカと話し、別れるところで終わります。
先ほど言ったようにポーランドは何度も侵略されたり分割された国なのに、不思議と政治的社会的背景はあまり出て来ません。最後の場面はおそらく1980年代と思うのですが、共産主義の崩壊もワレサの連帯も出て来ません。第2次大戦の時は同じ村の仲間だったユダヤ人一家が殺されたり、ソ連兵やドイツ兵が関わってくるものの、それ以外には社会的背景は語られず、村は宇宙の中心として存在し続けます。
多くの村人が登場しますが、個人的に一番印象に残るのは、クウォスカとイズィドルです。クウォスカは男たちに身を売って暮らし、森で娘を産んで育てます。イズィドルは物語の中心となる「ニェビェスキ」家の長男ですが、今でいう発達障害なのか?とても純心でクウォスカの娘ルタを生涯愛し続けます。
ページめくる手が止まらないという面白さとは違うのですが、読み終えて、自分の心の中に「プラヴィエク」という架空の村がしっかり存在した印象です。




2020年トントンアカデミー 演技賞 & ときめきターゲット賞 & DVD

cinema
01 /03 2021
作品賞に引き続き、2020年に映画館で見た映画の中から、「演技賞」、および、免疫アップのために私をときめかせてくれた殿方に贈る「ときめきターゲット賞」を選びたいと思います。

これが難しい、だって13本しか見てないわけだから、そん中から選ぶって意味ある?と思いつつ、選びます。
主演男優賞
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「罪の声」星野源
星野源は情けなくも、バカっぽくも、知的にも見え、あまり特徴がないので、どんな風にも見えます。ここでの役は紳士服のテイラー。いつもきちんとした仕立ての良いスーツを着て、馬子にも衣装を実証してくれます。

主演女優賞
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「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」 シアーシャ・ローナン
「はちどり」 パク・ジフ

どちらか迷い、両方にしました。シアーシャ・ローナンは親戚のおばちゃん目線なので、どうしても点が甘くなります(笑)
「はちどり」のパク・ジフは演技してるのかどうか分かりませんが、この年頃の屈折、ふてくされ顔、よく分かるわぁ〜ということで。

助演男優賞
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「ジョジョ・ラビット」サム・ロックウェル
今年は『リチャード・ジョエル』でもいい奴だったサム・ロックウェル。何やっても面白いけど、この役最高!

助演女優賞
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「パラサイト 」パク・ソダム(半地下家の長女)
目ぱっちり美人が多い韓国女優の中で、彼女のこの顔がリアリティ出してて貴重な存在。

そして2020年、(免疫力アップを狙って設けられた)「ときめきターゲット賞」は・・・
全く思いつかない!この中で、かっこいいとか、ステキってときめく男優っていたっけ?
しかたないので、DVDにまでターゲットを広げます。

欧米
『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』『スパイダーマン:スパイダーバース 』『50年後のボクたちは』
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』『僕のワンダフルライフ』『ある女流作家の罪と罰』
『大人の恋は、まわり道』『ウィンストン・チャーチル』『喜望峰の風に乗せて』『ジョンQー最後の決断ー』
『インスタント・ファミリー』『ワンダーストラック』『アガサ・クリスティー ねじれた家』『リアル・スティール』
『コンテイジョン』『記者たち 衝撃と畏怖の真実』『スターリンの葬送狂騒曲』『黙秘』
『きみに読む物語』『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』『THE GUILTY/ギルティ』『輝ける人生』
『特捜部Q カルテ番号64』『500ページの夢の束』『アイ・フィール・プリティ!』『パリに見出されたピアニスト』
『セラヴィ!』『ゼロ・ダーク・サーティ』『メアリーの総て』『グッバイ・クリストファー・ロビン』
『ハンターキラー 潜航せよ』『ダンボ』『フロリダ・プロジェクト』『高慢と偏見とゾンビ』
『わたしは、ダニエル・ブレイク』『マローボーン家の掟』『ターミネーター:ニュー・フェイト』
『ゴールデンリバー』『ベラのワンダフル・ホーム』『ガーンジー島の読書会の秘密』』『ベル・カント とらわれのアリア』『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』『ロスト・イン・ラ・マンチャ』

邦画
『七つの会議』
『復活の日』
『ダンスウィズミー』
『ゴジラ』
『長いお別れ』
『蜜蜂と遠雷』
『空母いぶき』
『ブタのいた教室』
『天気の子』
『旅のおわり世界のはじまり』
『泣き虫しょったんの奇跡』
『 i-新聞記者ドキュメント』
『軍旗はためく下に』

アジア/他
『ローサは密告された』(フィリピン)
『判決、ふたつの希望』(レバノン)
『友だちの家はどこ?』(イラン)
『ガリーボーイ』   (インド)
『ホテル・ムンバイ』 (インド)
『草原の実験』    (ロシア・カザフスタン)
『T34~レジェンド・オブ・ウォー』(ロシア)
『1987、ある闘いの真実』 (韓国)
『8番目の男』      (韓国)     
『国家が破産する日』   (韓国)
『ザ・ネゴシエーション』 (韓国)

2020年、家で見たDVD映画は67本。結構見てます。ほとんどwowowの録画からですが、この中で印象に残った映画は
なんといっても
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『フロリダ・プロジェクト』
『友だちの家はどこ?』です。
どちらの子どももあまりに自然。『フロリダ・プロジェクト』は見た後、しばらく立ち直れないほど衝撃を受けました。

他にも
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『50年後のボクたちは』『THE GUILTY/ギルティ』『ゼロ・ダーク・サーティ』『草原の実験』が印象に残りました。


で、肝心のときめきターゲット賞は?
全然思いつかない。
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誰も思いつかないので、
『僕のワンダフルライフ』のワンコたちってことにしときます(笑)
人間のオスにときめくのって、本当に難しいですね。




2020年 トントンアカデミー作品賞

cinema
01 /02 2021
あけましてあめでとうございます。
東京オリンピックの年として明けた2020年が、誰も想像し得なかったコロナの年として暮れました。
一夜明けて2021年のお正月。誰も来ないし、どこへも出かけない静かなお正月です。
それでもトンちゃんのお散歩がてら、近所の小さな神社にお参りに行きました。日頃人気のない神社ですが、ご近居の人がチラホラお参りに来ていました。
雲一つない青空がまぶしいです。
2021年が皆様にとっても、幸多く穏やかな年になりますように、心からお祈りします。
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2020年は映画館になかなか行けない年でした。
そんな中、映画館で見た映画は

「パラサイト 半地下の家族」
「キャッツ」
「ジョジョ・ラビット」
「リチャード・ジュエル」
「ダンサー そして私たちは踊った」
「三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実」
「カセットテープダイアリーズ」
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」
「パブリック 図書館の奇跡」
「はちどり」
「ファヒム パリが見た奇跡」
「キーパー ある兵士の奇跡」
「罪の声」

の計13本。あれ?「全く映画館に行けなかった1年」とか思ってたけど、意外と見てました(笑)
「キャッツ」や「リチャード・ジュエル」って今年だった?はるか昔のような気がします。

この少ない中から選ぶのもどうかと思いつつ、tontonアカデミー行きます!
2020年トントンアカデミーは以下の3本です🎶

『ジョジョ・ラビット』
『カセットテープダイアリーズ』
『はちどり』

jojo.jpg cassette tape hachidori.jpg


あえて一本選ぶとしたら、
『カセットテープダイアリーズ』
かな。

人並外れ音感悪いおばちゃんにも音楽に心奪われた青春の思い出はあります。
というか、人よりよくコンサートに行ってたかもしれません。
音楽を聴いてズキューンとなる感覚。恋愛音痴の私ですが、恋に落ちる感覚に近いかもしれません。私の場合は忌野清志郎の歌でした。主人公がブルース・スプリングスティーンを初めて聴いて衝撃を受けるシーンは青春の心を思い出させてくれる、そんな映画でした。年取るとなかなかこんな風に感動することが難しくなります。何を見ても相対的に頭で処理して批評してしまう傾向があります。
でも理屈抜きに感動したり、ときめくってインパクトがすごいです。そんなことを思い出させてくれる映画でした。
『カセットテープダイアリーズ』が青春の光の部分だとすると、韓国映画『はちどり』は青春の痛みの部分を繊細に描いています。これも青春映画の傑作だと思います。
『ジョジョ・ラビット』は映画としてとてもよくできていて、本当に面白い作品です。
「ヒトラーが心の友」と皮肉や笑いも効いていながら、しっかり戦争の残酷さも描き、それでいて画面作りや音楽の使い方がとてもキュート。お気に入りの1本です。

他にも『三島由紀夫 vs 東大全共闘 50年目の真実』は意外や意外な面白さ。
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三島の小説は好きでしたが、本人は頭のおかしい変な人だと思ってただけに、頭でっかちの学生たちを見下したり批判せず、辛抱強く対話しようとする。とても魅力的な大人の姿に感心しました。そしてまたあの時代の学生たちにも青春を感じました。

『ダンサー そして私たちは踊った』
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

『ダンサー』は先の見えない閉塞した国の環境、男性優位の環境の中、二重にハンディを背負った若者が自分らしいダンスを踊ろうという姿。
『ストーリー・オブ・マイライフ』もまだまだ女性の進出が難しい時代、自分らしく生きるジョーの姿が現在でも感動を呼ぶのは、原作が書かれて150年経っても、まだ同じ課題が残っているからなのかなぁ?とも思います。
両方とも、生き生きとして魅力的な青春映画でした。

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2020年は春に夫が第2定年を迎え、コロナもあってベタ〜と家にいる状態が始まりました。仕事人間で平日は家の中で見かけなかった人間に居間にべったりいられると、それなりに鬱陶しいものです(笑)
さらにコロナもあり、ライフスタイルが変化した年でした。つまりとうとう老後生活に突入したという訳です。青春を描いた作品が印象に残ったのは、そのせいでしょうか?

主演・助演賞などはまた後日。






tonton

映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
カテゴリに「闘病記」も加わりました。