FC2ブログ

『ガーンジー島の読書会の秘密』『国家が破産する日』『ブタのいた教室』『天気の子』他2

cinema
11 /25 2020
『ガーンジー島の読書会の秘密』監督 :マイク・ニューウェル (2018)
guernsey.jpg
1946年のロンドン。作家のジュリエット(リリー・ジェームズ)は一冊の本をきっかけに、チャンネル諸島のガーンジー島の住民と手紙を交わし始める。ドイツの占領下にあった第2次世界大戦中、島ではエリザベスという女性が発案した読書会がひそかに行われ、島民たちの心を支えていた。本が人と人の心をつないだことに感銘を受けたジュリエットは、取材のため島を訪れる。(シネマトゥディ)

まずガーンジー島とはどこ?と調べてみるとイギリス海峡のチャンネル諸島にあり、ほとんどフランスに近い位置にあります。イギリス王室直属領でイギリス議会の支配を受けず、高度な自治権を有しているそうです。現在ではタックス・ヘイブンとして世界の金融センターになっているそうです。
ともかく風景が素晴らしい。ヒロインのファッション、インテリア、レトロなタイプライター、ああ映画館で見たかった。食べ物が不味そうなのもイギリスらしい(笑)
なんせバターなし、小麦粉なしのじゃがいもの皮だけのパイって!?美味しいわけないです(笑)いろんな香り付してある密造酒のジンは飲んでみたいですけど。
第2時大戦直後。男性名でエンタメ小説を書き、売れっ子作家になったジュリエットはガーンジー島の読者から手紙をもらい、島の読書会を取材にやってくる。しかし読書会のメンバーから記事にすることを拒まれ、この会には何か秘密があるらしい…… となり、ここでミステリーだと思いこみました。
徐々に秘められた戦時中の辛い過去が明かされてくるお話です。
手紙をくれた養豚業のダーシーにはキットという幼娘がいるのですが、この子は実は彼の子ではなく、読書会を立ち上げたエリザベスという不在女性の娘を預かっているのです。このエリザベスは「ダウントン・アビー」の三女シビル役ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ。シビルも正義感と自立心の強い女性でしたが、この映画でも自分の信念に基づき行動する役柄。このエリザベスの母親的存在(親友の母)で読書会メンバーのアメリア役にやはりダウントンアビーのマシューの母ペネロープ・ウィルトン。ついでに言うと、主演のリリー・ジェームズは伯爵の姪っ子だっけ?ちょっとパープー娘のローズだし、ここではヒロインのよき理解者でゲイの編集者役は、ダウントンでは長女メアリーの2番目の夫ヘンリー役マシュー・グード。ダウントン・アビー役者がぞろぞろ出ているところもイギリス臭ぷんぷん!
さあ、イギリス臭ぷんぷんの中、どんなミステリーが展開するのかな?とワクワクしながら見ていましたが、、、あら、これはミステリーではなかったみたい。愛のドラマでした。
でもとてもよかったです。
エリザベスの娘キットの父はドイツ占領時のナチス兵だったと明かされ、こちらは悲恋の物語。最近見た「キーパー」もドイツ兵とイギリス女性の愛の物語でもありましたっけ。
さらにお金持ちのアメリカ軍人と婚約していながら、島の養豚家ダーシーといい感じになるヒロインのジュリエットの恋は現在進行形。
ただ少々気になるのは「秘密」部分の描き方。戦争中ドイツに占領された島に奴隷として連れてこられ、ケガした少年を助けようとしたエリザベス。少年は射殺されエリザエスは捕まり大陸の収容所へ。そこでも少女を助けようとして…という悲劇がこの「読書会の秘密」の中核なんですが、全て伝聞としてあっさり語られるだけなんです。そこをリアルに映像化したら、かなり毛色の違う映画になったと思います。こんな悲惨な話を非常にあっさりソフトに語りだけで済ましちゃって、その後はヒロインと婚約者と養豚家の恋の行方がドラマの中心になります。そのため見終えて、映画の印象としてはハッピーエンドの恋愛映画。映画としてはこっちの方が楽しいからいいんですけど、ここはやっぱりエリザベスの勇気を忘れないで欲しいところ、と思う私はやっぱりネクラ?
養豚家のダーシーvsお金持ちのアメリカ軍人(悪い人じゃなさそうですが)のジュリエットをめぐる戦いは、この配役だと濃い顔好きの私も養豚家に一票かな(笑)でも豚の世話はしたくないな。だって子豚って可愛いじゃない?情が移ったら豚肉食べられなくなりそう……


『国家が破産する日』監督 :チェ・グクヒ(2018)
DEFAULT.jpg
韓国を震撼(しんかん)させた1997年の通貨危機の裏側を暴いた、史実に基づくドラマ。史上最悪の通貨危機に立ち向かった人々を描く。
これは現題は「DEFAULT」となっていますが、経済に弱すぎて「デフォルト」ってなんだっけ?という私。
「ハゲタカ」ファンとしては時々こういう経済ドラマも見るのですが、正直さっぱり分かりません。しかしこのドラマはとてもよく出来ていて、3つのドラマを同時進行で見せ、今起きている経済的問題の話に合わせて、その問題に直面する人のドラマに切り替わるため、経済に弱くても、それが具体的にどう人々に影響するのか理解できるようになっています。
主人公は韓国銀行通貨政策チーム長ハン・シヒョン。日本だと仲間由紀恵が絶対やりそうな役。雰囲気も似ています。
一方、金融コンサルタントのユンは危険な兆候を察知しこの危機をチャンスと見てすぐに会社を辞める。
同じ頃、食器工場経営者のガプスは、百貨店大手からの大量の受注を約束手形で引き受けてしまう。
なんとかこの危機を回避すべく奮闘する専門家、チャンスと見て金儲けに成功するもの、窮地に陥る者、この3つの場面を交互にスリリングに見せます。
対策に当たるチーム内での対立も見所で、財務庁次官パク・デヨンはことごとくヒロイン、ハン・シヒョンと対立します。この人、女性蔑視がひどいし、普通の人々の暮らしなんて眼中にない。そのくせ自分はしっかり財閥に恩を売り、天下るという悪役です。
ヒロインは中小零細企業を守るために、なんとかこの危機を軟着陸させようと奮闘するのですが、財務庁次官パクは最初から国際通貨基金(IMF)に頼ることを提案します。そして彼女の提案に従った対策チームトップから外し、自分の意のままになるトップにすげ替えます。ハーバード大の後輩である財閥企業に情報をリーク、のちに自分はそこに天下ります。
IMFって何かな?とググってみると、『IMFの主な目的は、加盟国の為替政策の監視や、国際収支が著しく悪化した加盟国に対して融資を実施することなどを通じて、為替の安定…』と書いてあるので、それって共同出資の助け合い機関?だったら頼っていいじゃない?と思ったのですが、ヒロインはその条件は国民にとって過酷な結果をもたらすと反対します。
でもパクに押し切られIMFの代表がやってくるのですが…ヴァンサン・カッセルが冷酷非常な代表で、金を貸してやるけど、代わりに6つの条件を飲め!と一方的に宣言。この辺は経済に弱すぎて、どうしてその条件が過酷なのか、よくわからなかった私です。でも分かったことは、それやると、貧富の格差が広がり、解雇しやすくなり、非正規社員が増え、アメリカ企業に有利になる。あれ?それって日本と同じじゃない?日本は破産してないけどなんで?もしかして IMFって実はアメリカの手先?IMFの代表団とともにアメリカ財務官僚が同じホテルに来てて、これではヒロインじゃなくても、アメリカがこの危機を利用して自国有利に持っていこうとしてるって思うよね。でもさすがにここは映画としての脚色だと思いますが…

しかし、、話がそれますが、以前、友人が郵便局員だったのですが、郵政民営化後アメリカの保険を売れという上からの命令が過酷だったそうです。で私もア○○ックに入りました。その後、肺がんになったので「入っといてよかった〜♪」と思ったのですが、実はこの件ではモヤモヤが残ってます。私の手術は開胸手術だったのですが、今時の開胸は視界確保のためか監視用内視鏡カメラも入れます。背中の傷とは別に脇にカメラの穴も開けるのです。
すると私の入ってた保険ではこれは内視鏡手術になってしまい保険金が非常に少なかったんです。同時に入っていた生協の助け合い共済の方が病院の領収書のコピーだけで速攻保険金が降り、月々3倍以上の掛け金のア○○ックに比べても保険金がほぼ同額。え〜!だったら共済保険だけでよかったかも、と思ったんです。なんだかアヒルのCMに騙された気分になったものです。ってことは郵政民営化もアヒルの陰謀だったの?とか、IMFって結局アメリカ企業の手先?とか思っちゃったわけ。すみません、話がそれました。

でもこの映画を見ていると、これによって韓国では人々の雇用は不安定になり、非正規が増え、格差が広がり、「パラサイト」で描かれた過酷なまでの貧富の差につながっているように見えます。
そして今また同じ危機が訪れようとしている、という現代で映画は終わります。
経済にはとことん疎い私ですが、これはドラマとしてとてもよく出来ていて、経済ドラマの好きなハゲタカファンにも教えてあげようと思いました。


『ブタのいた教室』監督:前田哲(2008)
pigclass.jpg
6年2組を担任することになった新米教師の星(妻夫木聡)は、食べることを前提として子ブタを飼うことをクラスの生徒たちに提案する。校長先生(原田美枝子)にも相談し、卒業までの1年間26人の生徒が子ブタの面倒を交代でみることになる。最初は戸惑っていた子どもたちも、“Pちゃん”と名付けた子ブタを次第にかわいがるようになり……。(シネマトゥディ)

実話を元にしたドラマ。驚くのは、子供たちが卒業近くなり、大きくなったPちゃんをどうするか?話し合うシーン。子役が決められたセリフを喋ってる感が全くなくドキュメンタリーのようです。本気で大激論しており、どうやって撮ったのか?と思うほどリアルです。そうしたら、セリフは白紙のまま子供たちに本当に討論させた結果だということです。その表情、涙、何度採決しても同点で決まらず、最終的に1票を担任の星が担います。苦悩する若い妻夫木聡の初々しさ、校長先生の原田美恵子の包容力、教頭の大杉漣も懐かしい。映画全体に大らかさが漂ってます。出演者で言うと、生徒の親でピエール瀧が、子役では出番は少ないですが北村匠海という目元の暗い若手俳優が顔が変わっていないのですぐ分かりました。
実話の方は90年代の話らしいのですが、新人がいきなり「クラスで子豚を飼って最後は食肉にしよう」って提案したら、今だったらどうだろう?と考えさせられました。この映画でも父兄がクレームにくる場面もありますが、校長が度量を見せます。豚の世話をすることで子供たちは生き生きと成長し、点数では測れない生きる力をつけたと思います。安全は大切ですが、リスクを回避しすぎる近頃の教育現場。子供の生きる力を削いでいるのでは?と自分の子育ても含めて、反省してしまいました。




『天気の子』監督:新海誠 (2019)
tennkinoko.jpg
子供のおすすめで録画したものを見てみました。
これは映画館の大画面で見ればよかったなと思いました。
ともかく空や風景がきれい。新海誠は子供が好きで我が家には昔からDVDがたくさんあります。子供が高校生の頃、隣でチラ見しただけですが、初期の作品から空や雲が美しい作家という印象です。
で、内容は……「君の名は」の方が高齢世代にも見やすいストーリーだったのですが、いや〜、このラストが若い人的には感動的なのは分かりますけど…。3年間雨続きで東京は水没して住めない場所がたくさんでき、今後もず〜〜っと雨しか降らない世界。ひえ〜たまらん。世界はカビに乗っ取られそうだし、そうしたら肺や気管支の病気も増えそう。と、どうしても二人の愛よりもそっちの方に関心が行ってしまい、私にはこれはハッピーエンドには見えず、個人的にはこんな世界イヤだ=!申し訳ないけど、ヒロイン、人身御供になってください!と思ってしまいました(←ひどい)
ともかく画面が美しいので、それだけでも見る価値はありました。





『旅のおわり世界のはじまり』監督: 黒沢清(2019)
Oʻzbekiston
黒沢清監督の映画はいくつか見ていますが、この映画は私が見た「リアル~完全なる首長竜の日~」や「予兆 散歩する侵略者」(感想も書いてない)などのサスペンス調ではなく、前田敦子出ずっぱり、彼女のファンなら楽しめるかも?という内容。彼女のファンではない私がこの映画を見た目的はウズベキスタン。
〇〇スタンと国名に付く旧ソ連のシルクロードの国に興味がありました。この映画は前田敦子が「世界ふしぎ発見」みたいなTV番組のレポーターとして、番組スタッフと共にこの国を取材しています。しかし始終憂鬱そうでやる気ゼロ。彼女は本当はミュージカル歌手になるのが夢で、今の仕事に行き詰まっている様子。加瀬亮、染谷将太、柄本時生といい役者を揃えているにもかかわらず、彼らの存在感はゼロで、染谷将太なんて二言目には「どうせこの番組の視聴者なんて××」みたいなセリフしか言わない役。肝心のウズベキスタンですが、首都のバザールとか、巨大な湖とか、ラストの山岳地帯の風景はよかったです。食べ物はクローズアップされていないので不明。
しかし主演の前田敦子に関しては、移動遊園地の絶叫マシーンの場面では「体張ってるなぁ〜」と感心しました。現地通訳が話す、首都にある音楽ホールの建築に旧ソ連時代の日本人捕虜たちが関わっていたという話も良かったです。



『ベル・カント とらわれのアリア』監督 ポール・ワイツ(2017)
BelCanto.jpg
1996年にペルーで起きた日本大使公邸占拠事件に着想を得たアン・パチェットの小説を映画化。南米国家の副大統領邸で、テロリストと人質との間に生まれる交流を描く。
日本企業誘致のためのパーティーの最中、仲間の釈放を求めるテロリスト集団に占拠された南米某国の副大統領邸。世界的オペラ歌手をジュリアン・ムーア。日本企業の代表を渡辺謙。その通訳を加瀬亮、フランス大使をお久しぶりクリストファー・ランバートなど。

監督のポール・ワイツは「アバウト・ア・ボーイ」はとってもよかったのですが、これはイマイチ、いえイマサン感のある映画です。「ホテル・ムンバイ」の迫力あるドラマと違って、こちらはテロリストと人質の交流に重点が置かれています。それはそれで面白いドラマになると思うのですが、その心の通じ合いがどこか取ってつけたようで、加瀬亮とテロリストの女の子、渡辺謙とジュリアン・ムーアの二組の恋愛ドラマ部分に至っては蛇足感満載です。(私が恋愛ドラマに興味がないせいかもしれませんが…)
当時のフジモリ大統領を思わせる日系人大統領や、日本企業に期待する設定、ラストのテロリストを全員射殺した辺りも現実をなぞっていながら、中途半端な心の交流ドラマにしたのが失敗と思われます。これはもっと当時の中南米の現実を描いた、硬派の社会派ドラマにした方が面白かったに違いないと思われます。

今回のラインナップ。たまたまですが「ガーンジー島」の監督マイク・ニューウェルは『ハイ・フィデリティ』の制作総指揮、「ベル・カント とらわれのアリア」の監督ポール・ワイツは『アバウト・ア・ボーイ』の監督。そして『ハイ・フィデリティ』と『アバウト・ア・ボーイ』の原作者はニック・ホーンビィなんです!ってまあ、それだけ(笑)


今日は11月25日。三島由紀夫が亡くなってからちょうど50年だそうで、最近新聞やTVで三島の特集をよく見かけます。この春「三島由紀夫VS東大全共闘」という映画をやってたのも50周年の企画だったんですね。今頃気がつきました(汗)この映画以外に何か本読んだかなぁ?と自分のブログを検索してみたら「中村文則」の感想が出てきました。自分で書いといてなぜ?と読んでみたら、すごくバカっぽくて自分でもびっくり(笑)
最近行ったバラ園の写真を三島に捧げたいと思います。
IMG_5644.jpg
スポンサーサイト



『罪の声』監督:土井裕泰

cinema
11 /21 2020
tuminokoe.jpg

グリコ森永事件をモチーフにした塩田武士原作小説の映画化。「逃げるは恥だが役に立つ」の演出と脚本を担当した土井裕泰と野木亜紀子が監督と脚本担当。

1984年に日本中を震撼させた食品を人質(?)に食品会社を脅迫した事件は昭和の未解決事件として有名です。当時の騒ぎはよく憶えています。「かい人21面相」と名乗るふざけた脅迫状や、キツネ目の男、劇場型の犯罪として世間を騒がせました。
身代金の指定場所を要求した子供の声に焦点を当て、事件から35年後、声の主を主人公に話が展開するというプロットを聞いた時点で、これは絶対面白そう、とミステリー好きの本の虫H子は単行本で早速購入。しかし小説のみならず難解系の本も、幾万冊も読んできたH子がなぜだかこの小説、読み難くて進まないから、先に貸してあげるというので借りたのが2016年。もともと、あまり読書家でない私もリタイアしました。場面があちこちに切り替わる話は好きなのですが、なぜか読みにくくて…挫折。
(ちなみに高村薫もこの事件をモデルにした「レディ・ジョーカー」を書いています。高村薫も物語の本筋と直接関係ない詳細部分を延々書くタイプの小説家ですが、面白く完読しました。そういうのとも違う。何が読みにくかったのか?よく分からず、誰か指摘してほしいくらい)
ですから今回、挫折した小説の内容を知りたいという目的で、あまり期待せずに映画を見に行きましたが、意外や142分を感じさせない面白さ。あの事件の真相も納得のいく推理なのですが、見終えた印象はかなりウエットな人間ドラマになっています。
さすが「逃げ恥」の脚本家、あちこち飛ぶ話をとても上手に分かりやすく料理してくれた印象です。
当時、本人も意味も分からず声を使われた子供の視点から振り返る過去と現在。現在守るべき家庭のある主人公の当惑、しかしやはり真実をハッキリさせないと先に進めないという想いは、こんな特殊な例でなくても、理解できる感情でした。
そして最初は上からの命令でやる気なく動いていた新聞記者(小栗旬)とともに、探し当てた声の主である他の子どもたちの真実。ここで「あなたは幸せに暮らしているのか?」と問われた星野源の顔。何も知らず育ち幸せに暮らしてきた自分に罪はなくても、自責の念を感じてしまう気持ちはよく理解できました。
この兄弟の話は辛くてやりきれず涙がこぼれました。映画ではラストに声を使われた少女の映像がしつこいくらい流れます。普通のミステリーでは被害者は物語の一つのコマにすぎませんが、彼女には夢や希望があったことを見る者に忘れさせない部分がミステリーとしてはやや異色な印象でした。
そもそも話の中心になる子供たちはいわゆる事件の被害者ではなく、犯人側の身内。「レディ・ジョーカー」でも犯人側の心情が中心になります。
今回犯人側の動きは詳細に語られ、主犯である曽根に動機も語らせますが、彼らに共感できるようには作っていません。おそらく昔だったら、曽根の反権力の姿勢に共感させるつくりだったと思います。しかしどこまでも犯罪というものを許さず、その余波を受け傷を負った者に寄り添うのは、時代の価値観なのかなと感じました。さらに現実の事件の被害者サイドは全く描かれません。被害者である企業側の誰かに焦点を当てて描くのもありでしょうが、企業という茫洋とした存在よりも個人の「心」。心に傷を負った個人に焦点を当てる視点。雑破な時代を知っている者から見ると、現在は「優しい」時代とも言えます。現実はぜんぜん優しくない、と反対されそうですが、だからこそフィクションの世界は優しくなっているのでしょうか。
主役の二人はともに熱演、特にテーラーという役柄上、いつも仕立てのいい服を着ている星野源がなかなかステキでした。





『キーパー ある兵士の奇跡』監督:マルクス・H・ローゼンミュラー(2018)

cinema
11 /01 2020

keeper.jpg
ディズニーランド隣のイクスピアリにて鑑賞。ここにはよく来ますが、この日はランド前に人だかり。ネズミーランド、入場制限とかなく、もう普通に入れるのかしら?でも映画館はまだ一つ席空け状態。「鬼滅の刃」は行列ができていましたが、こちらの映画はスッカスカ。すごくいい映画で誰が見ても分かりやすい感動作。おすすめです。

イギリスの国民的英雄となった元ナチス兵のサッカー選手バート・トラウトマンの実話を基に描いたヒューマンドラマ。1945年、イギリスの捕虜となったナチス兵トラウトマンは、収容所でサッカーをしていた折に地元チームの監督にスカウトされる。その後、名門サッカークラブのマンチェスター・シティFCにゴールキーパーとして入団するが、元ナチス兵という経歴から想像を絶する誹謗中傷を浴びせられてしまう。それでもトラウトマンはゴールを守り抜き、やがてイギリスの国民的英雄として敬愛されるように。そんな彼には、誰にも打ち明けられない、秘密の過去があった。(映画COMより)

イギリス、マンチェスター・シティFCに1949~1964まで在籍していた伝説のゴールキーパー、ベルンハルト・カール・トラウトマン(=バート・トラウトマン)の伝記ドラマ。
サッカーを熱心に見るのはワールドカップくらいですが、実話ものが好きなので、これは見なくては!と映画館に行きました。期待以上に面白かったです。脚本も役者も演出も、とてもよく出来た映画だと思います。
トラウトマンは第2次大戦に志願兵として参加。イギリスの捕虜となり、捕虜収容所でサッカーしているところを地元サッカーチームの監督の目に留まり、サッカー人生を歩み始めます。格落ちしそうなチームを勝利に導き、さらにそれが監督の目に留まり、名門マンCに入団。
前半、地元チームの監督の家族との交流、監督の娘との恋愛、結婚までが丁寧に描かれます。
しかしイギリスのドイツに対する憎しみがまだ生々しい時代、またマンチェスターはユダヤ系住民が多いこともあり、マンCに入団したときの世間のバッシングは凄まじい。
Wikipediaで見ると大戦が始まった時、トラウトマンはまだ10代。’45年の捕虜時代もまだ22、3才。ドイツの責任を負わせるには若すぎる一兵士なのですが、家族や友人を戦争で失った人々にとってはドイツ兵が我々のチームで選手をやるなんてとんでもない!という気持ちだったのでしょう。その時、妻が人々に「彼も一人の人間で戦争で傷ついている。許すよりも憎む方が簡単だから、束になって傷ついたものを鞭打つのか?あなたたちも加害者だ」と啖呵を切ります。えらい、妻の鑑。
この後、彼のサッカー人生は順調で、可愛い息子もでき幸せな場面が続きます。でも見ていて、ゴールキーパーってすごい勢いでシュートを決めにくるそのボールに飛びつくわけで、危ないなぁ〜と思って見ていたら、やっぱり!
実話でも首の骨が折れてたそうですが、そのまま最後までゴールを守りついに優勝!
しかし…首の方はギリギリセーフで治るのですが、さらに…。これは予想していない展開でしたのでショックでした。
その後、’64年まで現役選手として活躍。伝説のゴールキーパーとして、英独それぞれから勲章ももらったそうです。
映画では彼の戦争中のトラウマが描かれます。
木彫りの小鳥のペンダントを大切に持っていて、ドイツの恋人にでももらったのかと思ってたら、そのトラウマに繋がるものと分かるシーンは胸が苦しくなりました。記憶が自分に都合のいいように改変されていたことがわかり、改めて戦争のおぞましさを感じる場面です。

主人公デヴィット・クロス、どこかで見たことあるなぁ〜と思っていたら、世界中でベストセラーになった「朗読者」の映画化「愛を読むひと」でケイト・ウィンスレットと関係を持つ主人公の少年でした。他にも「クラバート」のクラバート役。ってことは子役だったのね。まあ立派になって、おばちゃんも嬉しい(笑)
他にもマンCの監督は「リトル・ダンサー」のお父さん。あれ?この映画ってイギリス?ドイツ?と思ったら、監督はドイツ人で制作は英独合作でした。
現実のトラウトマン、戦争中は西部戦線に配属され、1,000人いた連隊で生き残ったのはわずか90人だったそうですし、2013年(90歳)までご存命でした。強運かつ頑丈な人だったのね。



tonton

映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
カテゴリに「闘病記」も加わりました。