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読書メモ『わたしは英国王に給仕した』『時間の花束』『夜また夜の深い夜』『今のアメリカがわかる映画100本』

book
06 /12 2020
コロナの不安を抱えながらも、日常が戻ってきましたね。
老人ホームもまだ予約制で一人ずつしか会えないものの、面会も再開しました。どれだけボケが進行してしまっているかと思いきや、ほとんど変わっていませんでした。でもこの数ヶ月の空白は両親にとっては1日と変わらない模様で、一見認知症は進行していないようで、「時の流れ」がほとんど止まっているかのような二人。繰り返す日常の中で、少しでも楽しいと心に留まる日があることを祈るのみです。
相変わらず寝る前の短時間しか読書しない私ですが、なぜか子供が『動物のお医者さん』愛蔵版を買ってくれました(遅い母の日?)。
このマンガは以前持っていたはずなのになくしてしまいました。この漫画が好きだった頃、私も将来は絶対シベリアンハスキーを飼って、チョビと名前を付けようと思ってましたっけ。同じことを考える人が日本中にいて、一時期は日本の住宅街のあちこちでハスキーが散歩していたものでした。実際には50すぎて初めて飼ったワンコは小型犬。すっかり忘れていた遠い日の夢を思い出しました。

『わたしは英国王に給仕した』ボフミル フラバル:著
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百万長者を夢見てホテルの給仕見習いとなったチェコ人の若者。出世しながら高級ホテルを転々とし、戦時中はナチスの施設で給仕を務め、やがて念願叶って巨万の富を得るが―。時代のうねりの中で成り上がっていく男の人生にふりかかる、シュールでグロテスクな悲喜劇の数々!(「BOOK」データベース)

昨年、チェコ を旅行してチェコの作家を読んでみようと思って買ったものの積読のままだった本書を読んでみました。
非常に読みやすいのですが、どこか寓話的な印象。チェコといえば最も有名なのはやはりカフカ。ついでカレル・チェペック、ミラン・クンデラ。いずれも名前を聞いたことがあるだけで、カフカは教科書に載ってたので「変身」くらいは読みましたが、あとは未読です。
このボフミル フラバルも全く知りませんでしたが、表紙が可愛くて取っ付きやすそうなので読んでみました。プラハで給仕を始めたとっても小柄な若者の一代記。こういう一人称の一代記ってあまり普段読みませんが、主人公が給仕だけに、えらい軍人たちのどんちゃん騒ぎや、ナチスドイツに支配された時代の純粋アーリア人人種を生み出す施設の妊婦たちの生態もグロテスクだけど生々しさはない。大金持ちになり、石切場に個性的なホテルを経営、やがてドイツ協力者として追放された先で自然の中の孤独で静かな生活がやけに美しい。一人称の一代記だけれど主人公の内面を深く描くと言うよりも、どこか乾いた語り口。このちょっと不思議な印象は東欧の映画にも通じる気がします。


『時間の花束』三浦百恵:著
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図書館は閉まっていますが、貸し出しと返却だけやっていて、予約本の連絡が来たけれど、タイトルを見ても記憶にない。海外ミステリーでも気まぐれに頼んだっけ?と取りに行ってみると、ずいぶん前に予約した山口百恵のキルト写真集でした。
ソーイングがここ数年の趣味の私はキルトはやったことがないものの、東京ドームのキルト展には誘われて2度行ったことがあります。百恵ちゃんの作品前には人だかりがありました。引退後初の出版ということでそれなりに話題になったので、気まぐれに予約したのを、すっかり忘れていました。
本を開くと、ふっくらした女性が微笑みながらキルトを縫っている写真。全く誰だか分かりませんでした!
彼女は私と同い年ですから、60代としてはかなり若くておきれいとはいえ、主婦感満載です。引退して普通の人になったとは言え、夫も子供達も芸能人やってるし、未だ有名人にしては、何だろう?この見事なまでの堅気感は?
肝心のキルトは色の使い方が微妙で、イマイチなものもありますが、白一色のキルトはとても素敵です。作品についている短いエッセイが家族にキルトを作る喜びに満ちていて、時代の価値観に流されず、自分が本当に望んでいるものが二十歳やそこらで、すでに分かっていた人なんだな、と感じました。
昔、母がなぜか百恵ちゃんの引退映画が見たいというので、一緒に『古都』を観に行ったのも懐かしい思い出です。ちなみに母と映画を観に行ったのはその1回だけ?かもと思います。
キッパリ引退して専業主婦になるという時代の流れと逆の選択をした彼女。その選択が珍しかったから、伝説になったのかな?と思っていましたが、この本を観て感じたのは、ある種の彼女の頑固さ、この皇室並のカタギ感が、彼女を今だ特別な人にしているのかも、という気がしました。だって百恵ちゃんが引退してからのこの40年、ずいぶん時代の価値観も変わったし、女たちはそれに翻弄されてるし、幾つになっても迷いのある私なんかから見ると、この人の揺るぎない印象は菩薩ならぬ(その昔「山口百恵は菩薩である」と言われてました)どちらかといえば”大仏”です。


『夜また夜の深い夜』桐野夏生:著
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友達に本当の名前を言っちゃだめ。マイコにそう厳命する母は整形を繰り返し、アジアやヨーロッパの都市を転々とし、四年前からナポリのスラムに住む。国籍もIDもなく、小学校しか出ておらず、本当の苗字も、父も、自分のルーツもわからないマイコは、難民キャンプ育ちの七海さん宛に、初めて本名を明かして手紙を書き始めた。ナポリで漫画喫茶を開いたシュンと知り合い、日本の漫画に夢中になる。やがて母の元を家出、難民のエリスとアナと一緒に暮らし、食べていくために犯罪を犯す。

桐野夏生にハズレなし、とても面白かったです。
一体、この母親は何をしでかしたのか?私が最初に予想したのは赤軍派とかオウム真理教で指名手配中の設定では?と思ったのですが、実在のモデルはいないようです。まい子が手紙を出す七海さんは元赤軍派幹部の女性テロリストの実在の娘がモデルらしいです。
後半、絆を深める難民のエリスとアナ、特にエリスのリベリア内戦に巻き込まれた過去が壮絶すぎて、同じ時代の同じ地球上の話とは思えないほどでした。
マフィアの仕入れ品を抜き取り横流しする仕事や、墓地から骨を掘り起こして売る仕事、いざとなれば人間にはいろんな需要があり、犯罪に手を染めて生きていく少女たち。どこにも属せない世間の狭間に生きる主人公はそれでもなんとかして現実の世界を生きていきます。

ネタバレ〜注意
そして明かされる母親の犯罪。それは七海さんの親ような思想信条の犯罪者ではなく、宗教団体を装った詐欺目的の教祖とその愛人だったことに主人公は失望します。さらに慕っていた漫画喫茶経営者のシュンの正体。ついに全てが明かされると思いきや、なんか色々謎のまま、ラストになります。
最後はどうにもスッキリしませんが、それでもここに至るまでの疾走感といい、やっぱり桐野夏生は社会のはぐれものを描いたら巧いなぁ、と感心しました。



『今のアメリカがわかる映画100本』町山 智浩:著
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ブッシュJr、オバマ、トランプまでの三代の大統領を、そして、今の大国が抱える問題点を“100本以上の映画"を通じて鋭く見抜いてきた人気コラムニストによる同書。「トランプ現象」は、いったいなぜ起こったのか?
アメリカの激動の10年が、映画でわかる!(「BOOK」データベースより)

町山智浩さんの映画評本はアメリカ在住だけあって、外からでは分からない背景を説明しながら語ってくれるので、とても面白いです。しかしこの本は日本公開のヒット映画もあるものの、(なんせ100本ですから)聞いたこともないドキュメンタリー映画が多くて、元の映画を観ていないので、映画評と言うより、一言社会学とでも言えそうな社会の縮図の解説本といった趣です。どちらかといえば、映画好きよりもアメリカという国に興味のある人が読んだら面白いかもしれません。
まあ変なドキュメンタリー映画が多くて、感心しました。
1本1本の解説が短いので物足りない部分もありますが、一貫して著者のスタンスは社会的な公正さを求めている立場です。アメリカみたいに格差が広がった国では、当然と言えば当然の感覚だと思います。でも決して裕福な人ばかりがトランプを支持しているわけでも無いようですし、こういう感覚って決して合理的客観的な判断ばかりじゃ無いところが難しいですね。







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tonton

映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
カテゴリに「闘病記」も加わりました。