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『ワンダーストラック』『アガサ・クリスティー ねじれた家』『リアル・スティール』『復活の日』『コンテイジョン』

cinema
04 /25 2020
追記
映画館の閉鎖が続いています。資本の小さなミニシアターは閉館の危機にあるため「ミニシアターを救え」というプロジェクトが立ち上がっています。ミニシアターエイドはクリック一つで寄付できるのでまだ知らない方にお知らせします。

ミニシアターエイドのお知らせ
https://minitheater-aid.org

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岡江久美子さんの新型コロナによる訃報には驚きました。さすが女優さんで50代かと思っていたので、自分より年上なのにも驚きました。
自分とほぼ同世代、初期乳がんだったそうですが抗癌剤もやっていなくて、放射線といっても脊髄に当てたわけでもないでしょうに、それで免疫力が下がるってあるんでしょうか?
新型コロナは重症化しやすい人の傾向は分かっているものの、それが絶対というわけではなく、ロシアンルーレット的な怖さがあります。

Amazonプライムは付属品がなくても、ブルーレイ経由で見られることは知っていましたが、今まではそんなに見ないしと見送っていましたが、今回登録してTVで見られるようにしました。
で、最初に見たのが『復活の日』、次に『コンテイジョン』この時期じゃなければ見ようと思わなかった2本です。


『ワンダーストラック』監督 :トッド・ヘインズ
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『ヒューゴの不思議な発明』の原作者ブライアン・セルズニックの小説をトッド・ヘインズが映画化。
1977年のミネソタで母を事故で亡くした少年ベンが、まだ見ぬ父を探してニューヨークへ向かう話と、それから遡ること50年前、ニュージャージーの耳の不自由な少女ローズが、舞台女優の母に会うためニューヨークへ旅立つ話が、やがて1つに束ねられて行く。
見ていて画面の色合いのせいか、『ヒューゴの不思議な発明』を思い出しましたが、同じ原作者の作品でした。向こうは作り込んだ画面で様々な美術賞をとっていますが、こちらは自然史博物館のジオラマが楽しいです。博物館のジオラマって見るものを時代を超え、違う場所へ連れて行く感覚。この映画はさらにモノクロ&サイレントで1927年のNYを描き、’77年のNYも、どちらも見る者に不思議な郷愁を起こさせます。
トッド・ヘインズ作品はなぜかいつも眠気に襲われるのですが、これは大丈夫でした。’27年の少女と'77年の少年が、共に耳が不自由、家出してNYを目指し、自然史博物館にやってくる。この2人はどういう関係かなぁと見ていると…。(勘のいい人なら年齢差で想像つきますが)助けてくれる黒人少年も含めて、居場所を求める少年少女のファンタジー。
前半の居場所のない二人の場面は見ていて辛い気分になります。だから古書店で2人が出会いハッピーエンドにほっとしました。
トッド・ヘインズの映画はしっかり人間を描くとか、物語を語るというより、マイノリティを美しく雰囲気で見せる印象があります。私はやや苦手な監督なのですが、この映画は子供たちの眼差しがよくて素敵な映画でした。

『アガサ・クリスティー ねじれた家 』監督 :ジル・パケ=ブランネール(2017)
crooked house
『サラの鍵』 (2010)の監督作品。『サラの鍵』は後を引く辛い映画で、でもとても映画として面白かったので期待してみました。ギリシャ移民で一代で財をなしたレオニデスが毒殺され、私立探偵のチャールズがかっての恋人でレオニデスの孫娘ソフィアに頼まれ捜査に乗り出す。屋敷には若い後妻、映画製作の資金が欲しい長男一家、事業を引き継いだ次男夫婦、前妻の妹で前妻亡き後子供たちを育てた一家の要的立場の(ソフィアから見て)大叔母のイーディス。巨額の遺産をめぐって不穏な空気の中、チャールズは、一族全員に動機があることに気が付く。
このチャールズ君、探偵としては何もしていません。ポアロみたいに推理しないし、ソフィアに未練たらたらで、アクの強い一家に翻弄されてウロウロしてるだけ。探偵役マックス・アイアンズはジェレミー・アイアンズの息子で、『天才作家の妻』ではグレン・クロースに甘やかされた息子役でしたが、今度もグレン・クロースと共演。何だか見た目もイケメンちゃイケメンかな?どうもシャッキリしないし、「グダグダイケメン」という新ジャンルを開拓中(?)
ミステリーとしてもハラハラするわけでもなく、犯人は意外でしたが、「えっ?ここで終わり!?」というラストが消化不良。『マイ・ブックショップ』の少女が富豪の末の孫娘役。
と散々けなしたままなのもなんですから、いい面も書いておくと、やっぱりお屋敷や調度品は見ていて楽しく素敵です。
長男夫婦が夫はジュリアン・サンズ、妻がジリアン・アンダーソンですが、ジリアン・アンダーソン(Xファイルのスカリー)は『英国総督 最後の家』のときは面影あったのですが、同じ年のこの映画では分かりませんでした。『眺めのいい部屋 』のイケメン、ジュリアン・サンズは60過ぎですからさらに誰だか全く分からず。ジュリアン・サンズという名前が美しいので記憶にありました。
そこいくとグレン・クローズは何に出ててもインパクトあります(笑)


『リアル・スティール』監督:ショーン・レヴィ(2011)
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この映画2011年の映画で、設定は2020年。今年です。だから近未来SFになるのかな?でもSF感はありません。ただ人間のボクシングの代わりにロボット同士が戦う格闘技が主流の娯楽になっています。
かつてボクサーだったチャーリー(ヒュー・ジャックマン)は妻子と別れ、オンボロロボットを格闘技にかけるプロモーターとしてヤクザな生活を送っていた。ある日、母を亡くした息子マックス(ダコタ・ゴヨ)が姿を現わし、亡き妻の妹に親権を譲る前の2ヶ月だけ共に暮らす。ある時、廃棄物の旧式ロボットを修理、息子が操作し次々試合に勝ち、ついには…。
私は始まってすぐに最後まで話が見えました。
最強のロボットと戦うクライマックスのラスト。勝ちはしないものの善戦して人々を熱狂させ…、要するに『ロッキー』と同じです。そして親子の絆を取り戻し、ダメ親父は息子の尊敬を勝ち得る…と。見始めてすぐに最後まで見え見えです(笑)でもこの手の映画は鑑賞者の期待通りでいいのです。
これは映画に興味のない夫と見たのですが、途中、宅配便や電話がなったりで私はバタバタしましたが、停止せずそのままでいいよと言いました。だって話見えてるから(笑)
逆に普段ドラマ嫌いの夫は身を乗り出して熱心に見ていました。本当に男ってこういうの好きだよね。
私も面白くは見ましたけれど、ここまでセオリー通りなら、すでにAIでも書けるんじゃないかなとか思ったり。
興味深いのは、2020年どさ回りの格闘場に集うのは見るからにやばそうな人々。しかし徐々にマックスのロボットが評判を呼び、だんだん高額な試合に出るようになり、ついには王者との試合でかっこいい会場で観客も着飾った人々。近未来物って格差が広がったディストピアな世界感ばかり。現実もそうなりつつあって怖いです。
それから最強のロボットを金にあかせて作ったのは中国系?ぽい人で、チャーリーの2代目ロボにはボディに漢字が書いてあったり、マックスのロボットは名前がアトム!なんだろう?これ?日本びいきの人が脚本書いたのかしら?


『復活の日』監督: 深作欣二(1980)
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小松左京の同名SFを映像化。1982年、東ドイツの研究所から猛毒ウイルス兵器MM-88が盗まれ、盗んだスパイの乗った飛行機はアルプス山中で事故に遭い、ウイルスが蔓延。地球は南極にわずかな人類を残して滅亡する。さらにアメリカ東部に大地震が迫り、それは核ミサイルの発射を誘発する…

ご存知懐かしの『復活の日』をAmazonプライムビデオで見てみました。
すごいオールキャストで、緒形拳やナポレオンソロのロバート・ボーンがチョイ役で出てます。現千葉県知事の森田健作も印象残らない位のチョイ役。それに反して、草刈正雄が出ずっぱりの主役です。こんな外国人ぽい顔だったんだ。懐かしのオリヴィア・ハッセーの美しいこと。そして南極メンバーがジョージ・ケネディはじめ、やたらデカくて185cmの草刈正雄が華奢で小柄に見えるほど。
さらに『剱岳 点の記』の監督、大村大作が撮影監督で、雄大な風景が美しいです。
何というか話が悲惨すぎるためか恐怖心が沸きません。感染の描写を誰かの視点でじっくり見せれば怖いと感じると思うのですが、あっという間に累々たる死体の山を自衛隊が火炎放射器でゴー!あっさり人類滅亡。南極に残ったメンバー80人ほどが南極連邦を作り、ここの描写が結構長くて、さらに大地震を予測、それによる核兵器発射を止めに行くも間に合わず、もはや人類の死にたえた地球のあちこちに核がドカンドカン。「地球は2度死んだ」とテロップ。なんかね、ふ〜って感じ。
お話はツッコミどころ満載で、今回のコロナに比べればまだ地球蔓延までの時間は長いのですが、人類滅亡した後に、南極の少ない機材であっさりワクチン完成。核爆発後、ワシントンから草刈正雄が徒歩で何年もかかって仲間のところへ向かうシーンが長い。マチュピチュ遺跡にアンデス山脈、名勝探訪している場合かい?という美しい風景が続き、でも徒歩で南極には渡れないはず。ラストは南米の先端あたりの設定かな。
これは真面目に見てはいけない映画です。若き草刈正雄のイケメンぶりとオリヴィア・ハッセーの美しさ、その他豪華キャストと美しい風景を楽しみましょう。
でもウィルス兵器は今だったら作れるはずだし、核兵器の自動報復装置も本当にあるらしい。今回のコロナ騒動だって数ヶ月前には想像もしなかった現実があるわけで、笑って突っ込みつつも荒唐無稽とは言い切れない恐ろしさがありました。


『コンテイジョン』監督 :スティーヴン・ソダーバーグ(2011)
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ミッチ(マット・デイモン)の妻・ベス(グウィネス・パルトロー)は、香港への出張後にシカゴで元恋人と密会していたが、せきと熱の症状が出始める。同じころ香港、ロンドン、東京で似たような症状で亡くなる人が続出。フリージャーナリストのアラン(ジュード・ロウ)は、伝染病ではないかと考え始め……。(シネマトゥディ)

今話題の2011年の映画を見ました。
ソダーバーグ監督で豪華キャストですが、グウィネス・パルトローなんてあっという間に亡くなってしまうし、マット・ディモンが超人的活躍をするでもない、感情を煽るドラマ展開もなく、淡々とドキュメンタリータッチで描いています。そのため2011年当時はそれほどヒットしなかったようです。
おそらく2011年当時、この映画を見たら、何をやっているのか?何を言ってるのか?よく分からなかったと思います。しかし悲しいことに今見ると、まるで現実をなぞっているかのリアリティに驚きます。
コウモリと豚が新型ウィルスに関わっていること、人はドアノブやエレベーターのスイッチを触った手で1日に何度も顔に触れること、ワクチンや薬がない状態では人との接触を断ち家に閉じこもるしか感染をなくす方法がないこと。かなり感染症の正確な調査をしてこの映画を作ったと思われ、RO(アールノート)も先日の『コロナの時代の我ら』で読んだばかり。この数値が2だと、次に4、8、16、とはじめは大したことがないように思える数字が、突然(のように見える)爆発的に手に負えなくなる話など、2011年だったら訳がわからずあくびの出そうな場面が、今ではそのリアリティにゾッとしました。
WHOやCDCの役割や仕事のやり方、ワクチンの開発の仕方もよく分かります。
CDCのローレンス・フィッシュバーンに命じられ感染地域の調査するケイト・ウィンスレットが感染し、自分も死の間際なのに、隣のベッドの寒がる患者に毛布を貸そうとする場面など、本物の医師とは苦しんでいる他者をなんとか救いたいと思う人種なのか、と感動しました。
しかし現実の方がずっとマシなのにホッとしました。
この映画の致死率は新型コロナよりもずっと高く20~30%ほど、これだと相当パニックになりそう。しかし『復活の日』のように100%じゃないところがリアリティがあります。スーパーマーケットでの暴動などは現実には聞きません。でもジュード・ロウ演じる胡散臭いブロガーが世間をあおり、インチキな薬で儲けようとする話などは、もしかしたらあり得るかもしれません。
最後に森林開発によって新しいウィルスが生まれることを示唆し、香港の華やかなカジノでまさに感染の始まった瞬間を見せます。調理長と握手するグウィネス・パルトローの笑顔の場面が一番ホラーでした。


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手作りマスク作ってみました。右のはキッチンタオルで、上のプリーツ式よりフィットします。



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『コロナの時代の僕ら』『「最前線の映画」を読む』『脳はなにかと言い訳する』『マルコヴァルドさんの四季』

book
04 /18 2020
コロナは紫外線に弱いという説があるから、もう少しの辛抱でしょうか?でも冬には第2波がやってくると言われています。スペイン風邪の時も第2波のほうが被害が大きかったとか。それまでにワクチンができてて欲しい。中国ではワクチンが第2段階に入ったとネットニュースがありましたが本当でしょうか?治療薬にも期待します。それからPCR検査は時間がかかるそうですが、抗体検査だと2〜3万の機械で10分くらいで結果がわかるとか?その機械日本で作れないのかな?

今回、このコロナ騒動で、自分がずっと信じていたものは幻想だったのかも?と揺らいでいます。
どんな幻想か?
日本は先進国で、経済大国で、医療水準が高くて、安定したいい国という「幻想」です。今回一番失望したのは、各国に比べてまだまだ感染者数が圧倒的に少ないのに(真実は分からないけれど)、早くも医療崩壊の話ばかり。他の国よりも遅れて波が来たから、他国の対応から学習したり、準備できたはずなのに、なぜこれほど後手後手なのか?
韓国や台湾がこの危機に科学的合理的に対処し、学校やお店も閉めずに(韓国はオンライン授業が多らしい)感染を抑えているのに対して、どうして日本は後手後手な上に、最初の作戦が無効になってもしがみつくのか?TVで保健所がクラスターを電話で追いかけてるのを見ましたが、あのやり方では記憶が確かな人ばかりじゃないし、会った人の名前を言いたがらない人もいるだろうなぁと感じました。
2ヶ月前と全く同じことを朝のワイドショーがずっと言ってるのも謎です。院内感染させないために入り口を分けろ(発熱外来だっけ?)とか、検査数を増やせとか、ふっくらめの女の先生がずっと言ってるので、もう耳にタコができそうで、私は見るのをやめてたのですが、最近つけたらまだ同じこと言ってるのにびっくり!!!結局この人の言ってる通りにしていたら、少なくとも医療の混乱は避けられたかもしれません。
最近では政府に自粛以外の何の策もないんじゃないかと不安になってきています。政府の無能により一番大変な思いをするのは現場の医療従事者たち。本当に感謝とともに同情してしまいます。こんな状況では他の病気でも病院にかかれなくなりそうで怖いです。とはいえこういう時は分裂してるばやいではないのでStay Homeしましょう。映画館も閉まってるし。


『コロナの時代の僕ら』パオロ・ジョルダーノ:著 飯田亮介:訳
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まさにタイムリーなエッセイ集。と言っても本で読んだのではなく早川書房が今月12日まで無料でネットに公開していたものを友人から知らされ読んだ。
著者はイタリアの若くてイケメンの物理学者で小説家、パオロ・ジョルダーノという人。
著者後書きはまだ公開しているので、そこだけは読めます。興味のある方は読んでみてください。(https://www.hayakawabooks.com/n/nd9d1b7bd09a7)

物理学者らしく感染症の流行をビリヤードに例えて説明しています。我々は75億個のビリヤードの球で、最初の感染した球をゼロ号患者とすると、その球がぶつかって連鎖反応を数学的に説明しています。ここで2つの球にぶつかって、またその2つが別の2つにぶつかって…となる際の感染のスピードをRO(アールノート)というそうで、この数字が1未満にならないと感染が止まらないため、人と会わない、引きこもることが必要なのだと分かります。
とはいえ、この著者のベストセラーになった小説は恋愛小説だそうで、私のような理系ダメダメな人間にもさら〜っと読めるエッセイです。
心配しなくてはいけない共同体は自分の街でも国でもなく、感染流行時の運命共同体は人類全体だと言っています。なのにトランプ大統領のWHOに資金拠出停止がニュースになっています。そりゃWHOにも問題があるのでしょうが、今は世界のリーダー的役割の人がケンカするのはやめて欲しい。宇宙人が攻めてきたと思って、全人類で協力して知恵を出し合って欲しいです。

『「最前線の映画」を読む』町山智浩:著
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ご存知、町山智浩氏の映画に関する評論です。著者は映画を見た時に疑問に思う点、分からなかった点について、著者なりに読み解いて行く作業を自分の映画評論としているようです。
それは何気ないシーン、登場人物のしぐさ、表情、セリフの中に隠された過去の名作、時代、社会状況、監督のインタビューetcから探り、読み解く作業が楽しくて映画評論をやっているそうです。
私個人はそのように深く映画を見ることは、普段全くしていないのですが、今のように映画館に行けない時は、このような本を読むことがとてもストレス解消になります。

取り上げている映画は「ブレードランナー2049」「エイリアン:コヴェナント」「イット・フォローズ」「ドント・プリーズ」「コクソン」「沈黙ーサイレンス」「セールスマン」「エルELLE」「シンクロナイズドモンスター」「サウルの息子」「ルック・オブ・サイレンス」「ラ・ラ・ランド」「ベイビー・ドライバー」「ダンケルク」「アイ・イン・ザ・スカイ」「ワンダーウーマン」「メッセージ」「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「ムーンライト」「LOGAN/ローガン」

見ている映画で気に入った映画の記事は特に面白く読みましたが、「ワンダーウーマン」は普通に面白いアメコミ映画と思っていたので、これほど深い意味を込めた内容だと気がつきませんでした。私ったら、DVDで見たはずですが、ほぼ見た映画は全てブログに書いてあるはずなのに、感想すら書いていない。(おそらく介護が最も忙しい時期だった)もう一度見直したくなりました。


『脳はなにかと言い訳する』池谷裕二:著
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これは以前『進化しすぎた脳』という本が面白かった同じ著者の本。こちらは『VIZA』という雑誌に連載したエッセイが元になっている脳にまつわるエッセイ集です。三井住友VIZAカードのゴールドカード人向けの雑誌だそう。
ゴールドカード向けだけあって(高齢読者が多いと思われ)、認知症やアルツハイマーの記事も多いです。母が認知症の私としても関心があります。以前は認知症の50%くらいと思われていたアルツハイマーは診断能力が高まり、今は90%以上らしい。記憶力だけでなく、脳の機能全般が低下、介護する人への感謝の気持ちもなくなるなど、周囲にとっても辛い病気。しかしこの時点で結構期待が持てる治療法も出てきてるようですが(この本は2006年初版)、その後どうなったのか?ネットでアルツハイマー最新治療とぐぐると、「リコード法」という言葉が。何かと思ったら、食事、睡眠、運動、脳トレ、ストレス対策etcとすっごい普通のことが書いてある。やっぱり日常生活って大事なんですね。
他にもマウスの迷路実験でできるマウスとできないマウスと個体差があり、それは人間でも仕事や勉強のできる人は一つができると平均的に他の多くもできるそうで、脳の出来、不出来を決定づけるのは集中力だそう。他にも記憶力は遺伝子で決まっていて、記憶力のいい遺伝子を持っている人々というのがいるそうです。
こういうのを読むと、ウルトラ凡人としては、ガックリしつつも納得しました。


『マルコヴァルドさんの四季』イタロ・カルヴィーノ:著
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この著者は戦後イタリアを代表する作家の1963年に出された子供向け?の本。子供向けのようですが、大人が読んでクスッと笑ってしまうような、共感したり、消費や広告社会を皮肉ってたり、という短編集です。
主人公マルコヴァルドさんはどこの街かわかりませんが都会に住むかなり貧しい子沢山のお父さんです。
都会に生えたキノコを食べて中毒になったり、ハチ療法とか(これは最後にひどい目に会いますが、鍼灸みたいなもので案外効果あるかも?と興味持ちました)、スーパーマーケットの話なんか滑稽なようでちょっと悲しい気分になります。
これがバカボンのパパだとメランコリックさはないのですが、マルコヴァルドさんは滑稽だけど、どこか切ないイタリアのお父さんです。




DVD『判決、ふたつの希望』『スターリンの葬送狂騒曲』『黙秘』

cinema
04 /12 2020
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とうとう緊急事態宣言が出されて、日本もフランスみたいに外歩いてたら罰金になるのかと思いきや、あまり私の周辺は変わっていません。宣言が出された翌日、郵便局に用事があり街に出たら、駅前のショッピングモールも開いてるし、家族づれが多いせいか、平日午前にしてはいつもより人が多い?って位で、レストランもファーストフードも結構人が入ってるし、意外なのはペットショップが混んでてちょうど契約中の家族が2組もいたこと。子供が長時間家にいる今、犬猫を飼う人が増えているのでしょうか。我が家もトンちゃんのおかげでずいぶん救われてます。最後まで可愛がってくれることを祈ります。

季節は新緑が美しく、トンちゃんのおかげで一日2回は外を歩いて緑や花を眺めています。
近所に新緑の美しい公園があり、普段は樹が多すぎて遊ぶスペースが狭いため、犬の散歩とお年寄りくらいしか見かけませんが、今やちょっとしたプチ観光地?というくらい、家族づれで賑わっています。


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『判決、ふたつの希望』監督: ジアド・ドゥエイリ(2017)
キリスト教徒のレバノン人男性とパレスチナ難民男性の衝突を描き、やがて全国的な事件へと発展していく様子を描き、第90回アカデミー賞でレバノン映画として初めて外国語映画賞にノミネートされたドラマ。
配管工事をめぐる些細なケンカが裁判になり、国中を巻き込む騒ぎに発展。やがてそれぞれの過去が明るみに出てきて、この国(レバノン)の複雑すぎる背景を浮かび上がらせる。

自動車修理工場を経営するトニーは「パレスチナ難民は叩き出せ」と罵る政党放送を見ながら仕事しているネトウヨっぽい人だけれど、身重の妻や従業員を大事にしているキリスト教徒。対する配管工事をしているヤセルはパレスチナ難民で、温厚で有能な人だけれど、トニーの侮蔑的な言葉にカッとなり殴ってしまう。
さらにトニーの妻が早産で子どもが未熟児で生まれたり、自分のケガも結構重症でナセルを訴え裁判になる。トニーには難民に否定的なやり手弁護士が付き、対するヤセルには難民を擁護する弁護士が付き、(この弁護士同士が実は…という展開)キリスト教派vsイスラム教派の代理戦争みたいになって、マスコミも騒ぎ、国中が大騒ぎになる。
やがて若い頃、ヤセルが難民キャンプで殴った相手が後遺症で半身不随になっており証人として出てきたり、さらにトニーが6才の頃の内戦時に起きたある村の大虐殺の生き残りなことが分かったり、レバノンの暗い歴史が明るみに出てくる。

最初、些細なことで激昂するトニーに呆れ、謝りに来たのにひどいことを言われ、思わず殴ってしまうヤセルにも呆れ、アラブの男性って顔もイカツイけれど、どんだけ頑固なんだ?と呆れて見ていたのですが、裁判官もヤセルの弁護士も女性。それぞれの妻もとても真っ当で冷静、夫にも遠慮なく言うべきことを言うので、その辺りは見ていてレバノンという国に好感が持てました。
レバノンがどういう国か全く知識がなくても、イスラエルの隣だからパレスチナ人難民が多いんだなぁとか、同じアラブ人同士でも難民差別があるんだなぁとか、見ていて分かりやすいかったです。もちろん中東の事情を知っていればもっといろいろ見えてくるものがあるのかもしれませんが、大丈夫。そして過去に内戦があって、ひどい目に会った人がたくさんいること、それはこの国へ逃れてきた難民も同様で、憎しみをぶつけていたはずの二人には相通じ合うものが生まれてきます。ラスト、お互いの目線に観客の心も救われます。
先日見たイラン映画「友だちの家はどこ?」もすごくいい映画でしたけれど、この映画もとてもいい映画でした。一見政治的な映画に見えますが、そんなことはなくて、立場の異なる人と人が最終的に個人として認め合う、ただそれだけのお話です。わかり合うと言っても(ハリウッド映画と違って)主演の二人はほぼ会話はしませんし、抑えた演技で、お互いに歩み寄る気持ちを表現。こういう部分が非常にグッとくるいい映画でした。


DEATH OF STALIN
『スターリンの葬送狂騒曲』監督: アーマンド・イアヌッチ(2017)
1953年のモスクワ。この国をおよそ20年もの間、独裁者スターリンと彼の秘密警察が牛耳っていた。中央委員会第一書記のフルシチョフ(スティーヴ・ブシェミ)、秘密警察の警備隊長ベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)、スターリンの右腕マレンコフ(ジェフリー・タンバー)らが夕食に集う。翌日スターリンは脳溢血で倒れ、そこから始まる側近たちの権力闘争。

モスクワラジオのクラシックコンサート生放送の場面から始まります。録音レコードを持って来いというスターリンの電話で慌てふためくディレクター、客を引き戻しオーケストラに再演奏させようとすると指揮者が倒れ、代理の指揮者を寝巻きのまま連れてくる場面などかなり笑っちゃうコメディです。しかし反面、スターリンが粛清リストを秘密警察の警備隊長ベリヤに渡し、次々夜の住宅から連れ出される人々。スターリンの独裁ぶりは実話に基づくエピソードというから恐ろしい。その後、スターリンが意識不明になり、医者を呼ぼうとするがほとんどの名医は粛清されてしまってヤブ医者しかいない。スターリンの息子はひどいアル中。スターリンが亡くなった後の権力闘争もコミカルで、書記長代理になったマレンコフという人がスターリンと同じ少女と写真をとることにこだわるが、やっと探してきた彼女は当然大きくなっていて使えず、別の少女とバルコニーから民衆に手を振るものの、少女が小さくて見えない場面など吹き出しました。しかしスターリンの死を悼み、大群衆がモスクワに押しかけ、軍隊が群衆に発砲、大虐殺が起こる。さらに秘密警察のベリヤが仲間から粛清されるシーンなど、最後は急転残酷で恐ろしい。
フルシチョフ役がどこかで見た顔だと思ったら、スティーブ・ブシェミでした。
印象に残ったのは、最初のコンサートやスターリンの葬儀でもピアノを演奏する美人ピアニスト。女性の方がスターリンが相手でも忖度できずに本音を言っちゃうのは分かる気がする。
この映画はロシア映画ではなく英仏合作らしいのですが、これはロシア人が見たら笑えるのだろうか??


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『黙秘』監督 :テイラー・ハックフォード(1995)
アメリカ・メイン州の小さな島で、富豪未亡人を殺害した罪に問われる家政婦ドロレス(キャシー・ベイツ)。無実を主張しながらも、事件の詳細には黙秘を通す。彼女には20年前、夫殺しの容疑で不起訴になった過去があった。NYで記者をしている娘(ジェニファー・ジェイソン・リー)

25年前の映画なので、みんな若い。20年前の夫殺しをずっと疑っている捜査官にクリストファー・プラマー(すでに老人ではあるがまだ60代?)、娘のジェニファー・ジェイソン・リーや警官のジョン・C・ライリーがまだ若者!
スティーブン・キング原作でキャシー・ベイツ主演となれば、当然『ミザリー』を思い出し、またまたおっそろしい女の役と思って見ていると……、全然ホラーじゃありませんでした。娘を想う母の気持ちと、口やかましい富豪老婆に長年支えてきた二人の間の絆。メイン州って北西部のカナダとの国境にあるんですね。寒そうだけど夏の場面は美しい。日蝕のシーンはドキドキしました。でもこれ後から思ったけど、一番怖いのは富豪女性じゃない?







DVD『記者たち 衝撃と畏怖の真実』『友だちの家はどこ?』『きみに読む物語』『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』

cinema
04 /02 2020
引きこもり生活でせっせとソーイング 。リネンで春のコートを作りましたが、コロナ騒動で着ていくところがない。仕方ないからトンちゃんのお散歩をいつものジャージをやめて、少しだけおしゃれしていこうと思います。

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『記者たち 衝撃と畏怖の真実』監督: ロブ・ライナー(2017)
2002年、ジョージ・W・ブッシュ大統領は大量破壊兵器の保持を理由にイラク侵攻に踏み切ろうとしていた。アメリカ中のメディアが政府の情報を前提に報道する中、ナイト・リッダー社ワシントン支局の記者ジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)とウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)は、その情報に疑念を抱き真実を報道するため取材を進める。(シネマトゥディ)

これは以前『バイス』を見ていたため、当時の情勢がよく分かりました。世界を権力ゲームのように扱った政権の情報を、メディアは検証することなく、垂れ流しにしていたということに今更ながら衝撃を受けました。大手メディアがみんな政府情報を報道する中、地方新聞社を傘下に持つナイト・リッダー社の記者たちだけが疑問を持ち、政府関係者に取材、批判記事を掲載する。
映画は大量破壊兵器はなく彼らだけが正しい報道をしていたことが証明されて終わるけれど、当然ハッピーエンドという気分にはならない。結局戦争は止められず、その後のイラク及び中東の混乱は当時の予想を遥かに上回る。きっと彼らは記者としていくら称賛されても、虚しさに襲われただろうし、もちろん見ている我々も苦い思いが残りました。

ところで日本はどうなんだろう?自分はかなり保守的な人間だと思っていたけれど、今の政権の一番ムカつくところは、全くフェアじゃない所。フェアな政権なんかあるか?と言われればそれまでだけれど、これほど国民を舐めてる政権も珍しいのでは?でもなんとなく分かります。みんなABEを支持している訳ではなく、他に選択肢がないから仕方ないと思ってるんだと。確かに民主党の官僚叩きのパフォーマンスはあまりにアホらしくて、官僚は使うもので叩くもんじゃないし、この人たちバカなの?それとも政権とって舞い上がっちゃってるの?という印象が残ってるからねぇ。
でも最近思うこと。原発事故は最悪の事実だけれど、今となってはまだ、本当に”まだ”、民主党でマシだったかもしれないと思い始めてます。だってこれが現政権下だったら、どうだっただろう?もっと何が起きたか隠されて、何が何だかわけのわからないうちに「完全にアンダーコントロールされている」と平然と嘘つかれて終わりだったかもしれない。さらにそのことを話題にすること自体を叩くような風潮さえ人為的に起こされていたんじゃないかと。
日本人は空気を読むのが得意らしいので、政権は自分たちに都合のいい「空気」をネットや自分よりのメディアを使って、人為的に作り出しているんじゃないだろうか?最近そう疑っています。

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『友だちの家はどこ?』監督 :アッバス・キアロスタミ(1987)
名匠アッバス・キアロスタミ監督作品。
間違って持ってきてしまった友だちのノートを返しにいく。ただそれだけの物語。役者は素人を使ったそうですが、主人公の少年の健気さが可愛い。友だちの家がどこにあるのか知らないまま探しに行くのですが、丘のジグザク道、迷路のような家並み、漆喰の壁に石の階段。イランの田舎町の家並みが珍しく、見ていてとても楽しい。
大人たちはみんな冷たい。冷たいというよりも素っ気ない。きっと昔の日本もそうだったかもしれないけれど、大人が子供に全く媚びていません。というか子どもの地位が低い。お母さんも宿題を早くやれといいながら、次々用事をいつける。先生もこわい。おじいさんなんて、今の日本の基準から見たら虐待に近い。ともかく子どもは大人の言うことを絶対聞かなくてはならないのがイランという国らしい。
自分が放任で育ったせいか、この映画の大人たちの素っ気なさはどこか懐かしいような気もしました。
やがて親切なおじいさんが案内してくれますが、この人、大工さんだったようで、自分の作った窓だのドアだのいちいち説明してくれるけれど、少年にしたらそれどころじゃなくて、ここのやりとりが何ともおかしいのですが、その老人が作った扉や窓の透かし模様が光を通して幻想的で美しい。
ようやく案内してくれた家は結局違ったのですが、少年はおじいさんにそれを伝えません。ノートをセーターの下に隠しているので、えっ?これはどういう意味!?せっかく案内してくれたおじいさんに気を使ったってことかな!?なんという優しい子なんでしょう(涙)
でもちゃんと少年は頭を使って隣の少年を助けます。ラスト、とても暖かい気持ちになりました。過剰な愛はいらない。子どもは子どもでいられれば、それだけで幸せなのかもしれません。


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『きみに読む物語』監督 :ニック・カサヴェテス(2004)
ライアン・ゴズリング&レイチェル・マクアダムス主演の恋愛映画。
妻のアリー(ジーナ・ローランズ)は認知症。付き添う夫は心臓病。夫が認知症の妻に読んできかせる物語は若い頃の自分たちのストーリー。
16年も前の映画なのに、ライアン・ゴズリングはあまり今と変わっていません。犬顔でかわいい❤️
レイチェル・マクアダムスは『スポットライト』『誰よりも狙われた男』の印象が強くて、こんなにベタベタな恋愛映画は少々意外ですが、この人、安藤玉恵に似てませんか?尖った部分がない顔で童顔。日本人にもいそうな親近感のわく顔立ちです。
普通に面白く見ましたが、お金持ちでハンサムで気のいい婚約者を振って(振られる彼は上記の『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の主役の一人)、17才の一夏の恋の相手を選ぶ。ヒロインのお母さんは反対の選択をしたらしい。材木工場の作業員を見ながら、若き日駈落ちした相手だと娘に教えます。ではお母さんはお金持ちで優しいお父さんを選んだことを後悔してるのか?泣いてたし、最後はヒロインの背中を押してたけれど、どうもその辺が分からなかった。おそらくお母さんは現実重視で選んだために、捨てた彼への未練を長年引きずっているのだろうか。現実生活はリッチで夫も優しい、かつトキメキの相手を胸に秘める人生。悪くない選択だったのでは?と思うような私は、やっぱりロマンチストにはなれない人間です。


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『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』監督 :ステファノ・ソッリマ (2018)
2015年『ボーダーライン』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)の続編。
今回もベネチオ・ベル・トロは同じ役で出演、メキシコ国境を舞台に、アメリカとメキシコ麻薬カルテルの戦争という題材も同じ。ベル・トロは元検事で麻薬組織に妻子を殺され、復讐の鬼と化している謎の処刑人?で、米軍と組んで非合法な活動をしている。今回敵の娘を誘拐、カルテルとの取引に使う予定が、色々あって、なぜかデル・トロと娘はレオンよろしく様々な敵からいっしょに逃避行。水と食事をもらう難聴の人の家でデル・トロの切ない過去の話が紹介されたり、バリバリハードだった「1」よりも人間ドラマを描こうとしたのか?知らないけれど、おかげで全然話が収束してません。
出だしはかなり面白いのですが、とっ散らかったままで、完全に続編を想定している内容。知らずに見たので、ラストで「え!?ここで終わり!」となりました。
自分を撃ったギャングの少年を暗殺者に育てる暗示を見せて終わります。
何はともあれ、「3」を待つしかない…現時点では、メキシコ怖い、という感想しかありません。



tonton

映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
カテゴリに「闘病記」も加わりました。