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読書メモ

book
07 /28 2017
突然の寒気と発熱、夏風邪と思いきや、腎盂炎でした。
いや〜、きつかった。特に熱が上がる時の寒気というか悪寒がひどくて、もしやマラリアとかデング熱とか、まさかダニに刺されてなるというSFTFとかじゃなかろうか?などと考えてしまったほど。
腎盂炎、若い時も一度なったことがあるのですが、今回しみじみ思ったのは、若い時は熱があっても具合が悪くても、普通に病院に行けたけど、年取ったら、大きな病院に行ってじっと順番を待つには、それなりの体力がいるということです。本当に具合の悪い時は行けませんでした。
そうそう、家族は「互助会」くらいでいいじゃん、という考えの私ですが、今回、娘が家事全般頑張ってくれました。夫はトンちゃんの世話と掃除。このおっさんは毎日が日曜日まであと数年なので、徐々に家のこと、できるようになってもらわないとね。


『敬語で旅する四人の男』 麻宮 ゆり子 :著
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真島圭太・29、律儀で真面目、振り回され上手なモラリスト。繁田樹・33、上昇志向が空回りする、女好きバツイチ研究者。仲杉幸彦・28、チャラい言動で自爆しがち、人なつっこい営業マン。斎木匡・30、人の気持ちをはかるのが絶望的な不得意なイケメン。仲良くもなく、友だちでもない四人の青年。ひょんなことから連れ立った旅先に、それぞれの人生の答えがあった!…のか?ちぐはぐな会話、歯がゆい距離感。四人それぞれの、ひそやかな決意―第7回小説宝石新人賞受賞作収録。(BOOKデータより)

↑という30才前後の4人の男性を主人公に、各1章づつ一人称で語られる物語。
1章目は真島が別れた母に会いに佐渡へ旅するお話。誰も誘っていないのに、たまたまその話をしたコミュ力無い斎木の誤解からなぜか4人で母の住む佐渡へ旅することになる。4人のそれぞれのキャラクター紹介を兼ねてコミカルに話が進むが、真島の抱える過去は複雑。LGBTというと、若者の先入観を持ってしまうが、母親がという意外な設定。
真島の斎木に対する気持ちにもほんの少しだけ含みをもたせている。

2章目は研究職の繁田。別れた幼子を連れ、火災除けのいわれのある京都の愛宕山に登る。妻の実家との苦い関係、幼児に振り回される独身男たちがコミカルで微笑ましい。

3章目は一番チャラクて軽いサラリーマン仲杉の、意外にも最もしんみりした過去との決別の旅。真冬の鳥取砂丘の風景と相まって一番切ないお話。

4章目だけは3人称で斎木の恋の顛末を描く。
なぜ彼だけが3人称かというと、斎木はすごいイケメンで頭脳優秀という設定だが、いわゆる「発達障害」で、コミュニケーション能力に問題を持つ。
それでも一人の女性に惹かれ、デートをし、熱海旅行もするのだが、この発達障害の描写が医学的にどこまで正確なのかは分からないけれど、先日のNHKの特集とも重なる話が多かった。
なるほど、発達障害の人と恋人として付き合うとこういう感じになるのか〜?と恋人のアルエちゃんに同情しつつも微笑ましく、二人の今後は明るいと思えた。

仕事や環境も異なり、それぞれに問題を抱える、30前後の独身男たち。
友情というよりも、踏み込まないようでいて支え合う、不思議な心地よい関係。
佐渡、京都、鳥取、熱海とプチ旅行記になっている。


『カーネーション』 いとうみく:著
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母に愛されない中1の女の子日和(ひより)、生まれた時からなぜか娘を愛せない母愛子。
虐待するわけでも、ネグレストするわけでもなく、ワガママ放題の妹には向ける笑顔を日和には見せてくれない。
愛子と慎也夫婦の学生時代の友人一樹は塾を経営している。彼は再婚した兄の息子桃吾を預かっている。日和と桃吾とはこの塾で知り合って、桃吾は日和の悩みを理解、日和の力になってくれる。
母愛子のなぜ娘を愛せないのか、分からない苦悩が辛い。
賢く、聞き分けがよく、見た目も可愛い長女には生まれた瞬間から違和感を覚え、ずっと愛せないというのも悲しい。
聞き分けのない次女には振り回されつつも、目に入れても痛くないほどの可愛がりよう。これは長女はたまらんわ。
愛子は幼い頃、川の事故で亡くなった自分の妹を思い出すから愛せないのだ、と思い込もうとするが、結局はそれは理由を見つけたい母親自身の幻想で、なぜ愛せないのかはラストまで分からないまま、という点がリアルに感じられた。
また父と日和、母と次女の二組に分かれて住む解決策も無理やりハッピーエンドじゃない分好感が持てる。人間、距離って大事だもんね。ちょっと離れてるだけで随分優しくなれたりするのかもしれない。

反面、桃吾には独り身の叔父、一樹。日和にはやはり独身の母の従姉妹柚希が同じ町内に住み、子供たちの避難場所になる。桃吾はこの叔父とともに暮らしているし、日和も1け月ほど柚希のところに身を寄せる。
独身の叔父や叔母ならいても不思議はないだろうが、二人とも自営業で、思春期の子供を長期間快く預かってくれるこんな都合の良い人々が近所にいるという設定がなんともご都合主義に思えた。

冒頭に書いたように、しばらく発熱で寝込んだのですが、夜、近所に住む認知症の母から電話がありました。
夫が出ると「トン子は大丈夫でしょうか?」というので、夫が「だいぶ良くなりましたよ」と答えると、「私が行って、何か手伝ってあげたいけれど…」と言うので、丁重にお断りしたそうだ。
私はそれを聞いて、「母に来られたら、かえって困るよ」と笑ったが、内心はこんな60近い子供でも心配してくれるなんて親はありがたいなぁ〜としみじみしてしまった。
が!ふと40代初めに、母が幼児期の私に予防接種を忘れてたせいで、ひどい目にあって入院した時のことを思い出した。その時は見舞いに来た母は全然私の心配してなくて、「お母さんがワクチン忘れたからひどい目にあったよ!」と怒ったのだが、「え〜?そうなの〜?」ととぼけてて、この人に何言っても無駄だ、と頭にきたものである。
だから、「ふ〜ん、人間たとえ頭がボケても心は成長するものなのかなぁ〜?今の方が気持ち的にはよっぽど子ども思いだな〜」と不思議な気持ちになりました。(実母に関して→
母と娘、きっとその数だけ愛憎があるのでしょう。



『そして生活は続く』 星野源;著
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俳優兼歌手、星野源の2009年のエッセイ。
私が初めてこの人を覚えたのは宮藤官九郎の「11人もいる!」で田辺誠一演じる一家の父の実弟。主人公神木隆之介くんの叔父役。会社が倒産し、一家に転がり込む変なおじさん役。「ウォーター・ボーイズ」や「タイガー&ドラゴン」にも出ていたようだが、よく思い出せない。
初めて見た時、私の若い頃からの女友達Dちゃんによく似ているのでびっくりした。実際、彼女の長男は星野源にそっくりである。

情けなくてちょっと下ネタで、いや相当情けなくて、でも青春ってキラキラ輝いてるっていうのは嘘で、こういうものかも〜とみょうに説得されてしまう。
星野源のお母さんが面白い。完全に子供で遊んでいます。
また星野源は子供の頃からお腹が弱く、数々の困難の経験を書いていて、それはもちろん抱腹絶倒の爆笑談なのだが、お腹の弱い人同士は思想心情を超えてそれだけでお互い切羽詰まったネタで共感しあい、仲良くなれるらしい。これはうちの夫に読ませたら星野源にシンパシーを感じるかもしれない(笑)
おじいちゃんの話もちょっと不思議で、印象に残りました。
私も未だ、肺がん発見につながった事故と、その後の奇妙な出来事といい、物理学では説明できない力ってあるのかな〜?と不思議に思っています。
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『椿貞雄』展  千葉市美術館

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07 /17 2017
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「没後60年 椿貞雄  師・劉生、そして家族とともに」というタイトルの美術展に友人と行きました。
師・劉生とあるように椿貞雄を中心に、岸田劉生の作品も併設、比較して見られる展覧会です。
山形県米沢市出身で、18歳で上京、岸田劉生の個展を見て、いきなり会いに行き、劉生が38才で亡くなるまで生涯交流がありました。
実際、初期の肖像画はよく似ていますし、劉生が墨彩画を始めれば、椿も同じモチーフ、画法で描いています。
岸田劉生(1891〜1929)、椿貞雄(1896〜1957)で分かるように、弟子というよりは仲良しの先輩後輩って感じで、傍らで制作を続け影響を受け続けたようです。
劉生が亡くなったときには、制作を続けられないほどのショックを受けたそうですから、師であり兄であり親友であったのでしょう。
一度もアカデミックな美術教育を受けたことがないそうですが、昭和初年頃から慶應義塾の幼稚舎の美術教師と千葉県船橋市の尋常小学校の美術教師をしています。
ここでびっくりしたのは、昭和初めの公立小学校に美術の専任教師がいたこと。
私は昭和40年代に小学生でしたが、6年生の時に初めて美術の専任教師がきました。音楽と体育はもっと低学年からいましたが、
私の大学時代の友人なんて漫研(美術部じゃないですよ)に所属してたってだけで、中学校の英語と兼任で美術も任されてるってずいぶん前に言ってました。個人的なイメージでは、美術って、学校教育の中で音楽より雑な扱いの印象です。
椿貞雄さん、61才で亡くなっていますが、この人の生涯を見ていくと、一言で言うと「幸せな人」という印象です。
まず18で上京して、いきなり劉生と仲良くなる。他に10才上の武者小路実篤も椿に目をかけ親交が続きます。
その後も船橋市の教職の口も、慶応の教師の口も、常に誰かの紹介で、さらに誰だったか有名人の奥様の妹さんを妻に紹介されるのですが、この人がすごく美人で、写真や老後の孫との肖像画といい、生涯ラブラブな雰囲気です。30歳の頃、船橋市に移り住みますが、当地で代々医師を営む清川氏がパトロン的存在として交流を持ち、清川氏の3代目の方の絵の先生になったりしてます。
子供が4人、61歳で亡くなった時点では孫は3人、繰り返し子供たちや孫や奥さんの肖像を描いていて、良き家庭人としての姿が伺えます。
さらに慶応で長年同僚だった人が没後20年時点の偲ぶ会で「年長者に可愛がられ、同僚に慕われ、美人で料理上手な奥様と仲良く、仕事に対しては真摯な態度、うんぬんカンヌン、、”こういう人に私もなりたい”」という言葉を贈っています。
きっと周囲の人々から慕われる性格のいい人だったんだろうな〜と、その”人に恵まれた”生涯が偲ばれます。
肝心の絵の方はすみません。絵のことはさっぱり分からないのですが、肖像画が有名らしいのですが、個人的にはかぼちゃとか冬瓜を描いた静物画が好きです。
あと昼寝してる人をサラサラっと墨で描いたヤツとかもいい感じです。
肖像画は劉生のに激似で、厚塗りで暗め。でも劉生の麗子像とはだいぶ違って、ご自分のお子さんたちの肖像画はお目目クリクリですごくかわいい。
というわけで、私のこの美術展の印象は「椿貞雄さん=良い人っぽい」というアホな感想に尽きます(笑)。


帰りに千葉そごうで友人が服を見たいというので、付き合いました。
私はシマムラとかユニクロ専門なんですが、この友人Mさん、いつもいい服を着ています。
私から見ると、高っと思う値段のスカートが半額バーゲン(それでも15000円!)で、彼女が試着しました。スタイルの良い彼女にはお世辞抜きでよく似合っていて、店員さんと二人で「いいよ」と勧め、彼女もしばらく鏡を見ていましたが、急に「顔があかん」と言って、買うのをやめました。
若い頃から体型が変わらないという彼女ですが、最近何を着ても顔があかんわ、とぼやきます。
なるほど顔に合わなくなるってこと、確かにあるな〜と納得。
肖像画を見た後だからじゃないけれど、帰って洗面所で普段ちゃんと見もしない自分の顔をしみじみと見てしまいました。
シワは仕方ない。シェールじゃないんだから、この年でツルツルの方がコワイわ。でもあれ?私ってこんな顔だったっけ?と。
もともと美しくもないですけど、せめて人相悪くならないように、椿さん見習って、素直で真面目で人から好かれるおばちゃんになりたいもんだ。へそ曲がりの私にはそれなりに難しい課題ですが…。

読書メモ 「ガール・オン・ザ・トレイン」:ポーラ・ホーキンズ (著)

book
07 /08 2017
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夫と離婚し、酒浸りの日々を送るレイチェル。彼女は通勤電車の窓から、一組の幸せそうな夫婦を見つけ、昔の自分の姿と重ね合わせていた。その夫婦の家は、かつての自宅に近接しており、元夫は当時の家で新しい妻子と暮らしているのだった。絶望と闇を抱える女性三人の独白で描く、サイコスリラーの傑作!(「BOOK」データベースより)

ネタバレ注意!

これは映画を見逃しましたが、たまたま古本屋で見つけて、1500万部のベストセラー!?と、びっくりして読んでみました。
上に通勤電車と書いてありますが、主人公レイチェルは酒のせいで失業中、ルームメイトの手前、通勤しているふりを続けている。その途中、線路端の家に住むカップルを自分の脳内で理想の夫婦にしたて、かっての自分と夫の思い出に浸っています。

3人の女性の独白、つまり一人称で交互に描かれています。
主人公レイチェルは別れた夫への未練いっぱいで酒浸り。
レイチェルが電車から見かけて理想の夫婦に見立てていた妻、メガンは深い闇を抱えた女性。
アナは愛する夫と赤ん坊に囲まれた幸せな主婦に見えますが、近所の事件や夫の前妻レイチェルに悩まされ、追い詰められていきます。

私も一応女ですから、こういう女のもがきや渇き、分からなくもありません。
1500万部の大ベストセラーということは、多くの女性の共感を得たと思われます。
アラフォーで独身、恋愛体質の人なら、ハマれること間違い無し。
ただ私自身はこの小説にドップリハマるには年を取りすぎているためか、そもそも恋愛体質が足りないのか、始終女性たちが痛々しくて、危なっかしくて、あ〜まったくもう!と思わずイライラする部分が多々ありました。

登場人物も3人の女性の周辺の人だけ、狭〜い人間関係の悶々です。
人間関係って、悩んでない時はいいものか、関心外かです。
逆にこじれてる時は、頭の大半を占めちゃったりする。
若い頃、人間関係で悩んでいる時に、なんで嫌いなヤツのこと一番考えてるんだ!?と気がついて、アホらしくなったことがあります。
人間関係はめんどくさい。ましてや恋愛なんてめんどくさいの極致です。
でも感情を持って生まれてきてしまったからには、バリアー張って、他者と関わらないように生きるなんて無理だし、もったいない。
しかしレイチェルの場合は別れたトムへの執着が強くて、彼との幸せだった時の記憶が現在の彼女を苦しめているわけです。こうなると愛なのか執着なのか?
こういう人にこそ、ブルゾンちえみのコントが必要です。
「男の数は35億5千万!」
古いガムはとっとと捨てましょう。

それからレイチェルが電車内から見かけて、理想の妻に仕立てるメガン、この人のブッ壊れ方は相当はた迷惑、かつご自分を危険にさらし過ぎ、かつ旦那さん可哀想すぎ。確かに彼女の闇は本当に痛々しくて、悲しい。
アナは不倫でトムを寝とった以外は普通の女性かと思いきや、最後にそうきましたか!
女は自分の感情が世界の中心ですから、後から冷静に考えると、彼女たちの言い分はかなり無茶苦茶です。
ともかく女たちは自分の感情に振り回され、自分だけでなく、周囲をも振り回す。
美貌の人妻メガン、こういう自分の闇を埋めるために出会った男を片っ端から誘惑しちゃう人も困るけど、やすやすと誘惑されちゃう男たちもアホです。

これサイコスリラーって書いてあるけど、悶々としている独白が続くので、あまりスリラーって感じじゃないのですが、男性から見たら、このラストはスリラーどころかホラーでしょう。
私もこのラストは自業自得でしょうがないよね、と思ったものの、1000歩譲って、彼側から考えてみると。
前妻も愛していたけど、彼女は不妊からうつ状態になり、アル中になった。
そこへ出会った美女と再婚。
でも前妻が自分に執着して、子供に危害を加えようとしたり、現妻はノイローゼ気味になり、自分も前妻には困っている。
また妻の出産直後に近所に住む超色っぽい美人妻に迫られ、関係を持ってしまう。さらに精神的不安定なこの浮気相手にわめかれ、勢いで殴ったら…etc
と、自己中男側から見るとこうなると思われます。

そもそもこういう男に女たちはなぜ執着してしまうのか? というか、なぜこういう男がモテるのか?
「サイコパス」(中野信子著)にも特に排卵期の女はサイコパス男に惹かれる、と書いてあったっけ。サイコパスの遺伝子を残したい人類の都合でもあるのか?(ってまたまた話が逸れました)
この小説で一番好感が持てたのは、セルビア人精神科医カマル。始め、メガンの浮気相手は彼と、誤解するような書き方をわざとしてあったが、彼は自制心ある患者思いのカウンセラー。エキゾッチックなイケメンって映画では誰がやってるんだろう?(笑)

それと怖かったのはアル中ってこんな風に記憶がなくなってしまうのか?ってところ。
私がこの小説から一番学ぶべきは、飲みすぎに注意ってところです。

ドロドロ恋愛は自分には縁がなさそうですが、つい先日、団塊世代のおじさんと話していたら、「今時の若者は恋愛が面倒くさい、とか言ってるらしいね」と嘆いていました。
で私が「でもそれ分かります。私もそういう若者だったかな〜」と話したら、恐ろしい忠告をされました。
時々70代の老人が3〜40代の主婦にストーカーしたりして問題になるそうですが、そういう老人は世代的に見合い結婚で、人生の終わりが見えてきて、「あと、人生でやり残したことは恋愛くらいだ」とか思って、暴走しちゃうそうです。
あんたもそういう婆さんにならないように気をつけな!と。
ストーカー婆ちゃん!?
なんかすごい生命力あるイメージじゃないですか!
いいねえ。こうなったら若いイケメンにつきまとうストーカー婆ちゃんになることを目標に、まずは長生きするぞ!←結局オチはそこです(笑)

『ありがとう、トニ・エルドマン』 監督:マーレン・アデ

cinema
07 /05 2017
toni・erudoman

ルーマニアのブカレストにあるコンサルタント会社勤務の女性イネス。仕事ばかりの忙しい毎日を送っている娘のところに連絡もなしで突然訪ねる音楽教師の父親のヴィンフリート。滑りまくる悪ふざけの父と困惑する娘は、やむなく数日間一緒に過ごすことに。やっと父親が帰国してホッと一息つくイネスだったが、バレバレの変装でトニ・エルドマンという別人に扮した父が再びやって来る。父に振り回されるイネスは怒りを爆発させるが…。

2時間42分のドイツ映画。ハリウッド映画にはない間合いや間延び感が新鮮です。
ドイツ人というと、働く時間が短い印象ですが、グローバル企業のやり手キャリアウーマンの日常は24時間戦ってます。見ているだけで疲れそう。
週末も契約を狙う顧客の妻の観光案内等々。常に仕事のことで頭がいっぱい。確かに人間らしい生活とは言い難いし、父から見たら不幸に見え心配になるのも分かります。
だからと言って、こんな寒いジョークや悪ふざけで仕事の邪魔をされたら、本当に迷惑だし、怒りますよね。
ペースを乱されまくった娘ですが、やがて自分の生活に疑問も感じてきます。
娘の誕生日パーティー。キチキチのドレスを着替えようとして、素っ裸で来客を迎えるあたりから、娘の吹っ切れた感じが伝わってきて、このパーティの場面は笑えます。そして父へ感謝するのです。
こういう場面もハリウッド映画なら、抱き合って終わりなのに、そのあと、なかなかぬいぐるみの首が取れず、ゼーゼー言うシーンとか妙に長い(笑)

もう一つ、ルーマニアという国の様子も興味ふかいです。
ホテルの窓から見える隣接する民家の貧しげな様子や、郊外に行った時のトイレを貸してくれ、小さなリンゴをくれる素朴で優しい人々。
まだ素朴さを残したこの東欧の国に、グローバル企業は、人員を削減し、合理化を推し進めるいつものやり方を推し進めます。
ルーマニアの現地で雇った娘の部下の様子や、顧客との会話から、地元の優秀な若者は外国企業のために働き、自分の国から出て行ってしまう問題も垣間見えます。
その尖兵として働く娘。
そんな娘を心配し、滑りまくりながらも奮闘する父と、やり手ながら、感情を出すのが不器用な娘。
生き方は全然違うものの、不思議なユーモアと感動がありました。

PS 今、ちょうど読んでる小説「ガール・オン・ザ・トレイン」は3人の30代?女性の独白の形を取っています。
この3人、2人は主婦で、主人公は離婚し、アル中が原因で失業中。
かなりドロドロな関係のこの小説を読書中のためか、男に振り回される(もしくは男を振り回す)より仕事に振り回されるイネスの方が全然まし?に見えました。

tonton

映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
カテゴリに「闘病記」も加わりました。