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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

cinema
03 /29 2015
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ホーキング博士につづき、イギリスの科学者(数学者)の実話もの。
しかしホーキング博士が難病という困難を抱えつつも幸せな印象を残すのに比べ、こちらはなんとも切ない映画でした。
ホーキング博士にあった良き師、良き友、良き家族がこのチューリング博士にはすべてありません。

これは第2次世界大戦にやたら詳しい夫と見に行ったのですが、当時のドイツの技術力はすごいものがあり、戦車は連合軍製5台がかりでドイツ戦車1台にやっと対抗できたとか、潜水艦はかの有名なUボート、ドイツの暗号エニグマも世界最強の難解さなどなどを考えると…
チューリング博士がエニグマを解かなければ、ナチスドイツが世界を支配してた可能性大な訳で、彼はまさに世界を救った英雄にされてもおかしくないのですが、実際には戦後悲劇的な運命をたどります。

この映画は彼の子ども時代の回想、犯罪者として扱われ大学を追われる戦後、エニグマ解読を命じられる戦争中、この3つの時代がパズルのように交互に描かれる構成です。
この映画の中では、話の中心になる戦争中がまだ彼にとっては幸せな時代に見えます。
暗号解読チームの仲間とも当初ギクシャクしますが、徐々に仲間意識も芽生え、現在のコンピューターの基礎となるマシンを2年がかりで完成させ、ついにエニグマ解読に成功します。
しかしこのことがドイツに知られればさらに暗号の難度を上げてしまう事から、このことは軍にも知らせず、最終的に勝利に導くよう計算して戦争の作戦を立てる辺り、変な言い方ですが、アングロサクソンの強さを感じてしまいました。
兵器で勝っていてもドイツが負け連合軍が勝ったのには、「情報」というものの重要さ、その扱い方が上手(うわて)だったからではないか?と思えたからです。
そしてこのエニグマ解読の事実は戦後50年も秘密にされたというのもビックリでした。
彼は現代では考えられない理由で逮捕され(50年代ゲイは犯罪だった!)ケンブリッジを追われますが、それでもこの事を公表しなかったのも驚きです。
「イギリスがドイツに勝てたのは俺のおかげだぞ!!!」って言ってもいいと思うんですけど。

このマシンに唯一の彼の理解者であり、暗号との出会いを作った人でもあり、そして彼の初恋の人でもあるクリストファーの名を与えるあたり、なんとも切ないです。
天才の孤独を、感情が無いようでいて、ぎりぎりであふれるように見せるカンバーバッチの演技もすばらしいです。シャーロックといい、この人はアスペルガー的な役が似合うなぁ(笑)

ユーモアもあります。
嫌われ者のアランに、仲間に差し入れのリンゴを配るようにアドバイスするジェーンはすばらしいと思いました。
ここのシーンはユーモアがあってとても好きです。
暗号解読の人材を集めるやり方も面白いです。
ぜひ多くの人に見てもらいたいすばらしい映画でした。

蛇足ですが、時代は違えど共にケンブリッジの博士であり天才対決?
ホーキング博士とチューリング博士のお話、個人的にはチューリング博士の「イミテーション・ゲーム」に軍配を上げます。全く個人的な趣味ですけどね。
Kという友人がいます。
彼女に言わせると私は「不憫萌え」なのだそうです。
現実の生活では身もふたもない現実主義者の私ですが、こと映画に関しては孤独でさみしい男性に弱い傾向は確かにあります。なんでだろ…?


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トンちゃんロングリード

dog
03 /28 2015
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ちびマッチョ、トントンの写真です。
私の写真はどれもボケボケですが、これはゴールデンリトリバーのワン友が一眼レフで撮ってくれたものです。
動きを捉えていて、私のスマホカメラではいつもシャッターが遅すぎてこういう動きを撮れません。
最低でも1週間に1度はドックランかロングリードで運動させたいものの、なかなか予定通りにはいきません。
トンちゃん、運動量の必要な犬種とわかったのは飼い出してから…
運動不足解消を目的で犬を飼い始めたくらいなので、基本体を動かすのは苦手な私。
私なりにずいぶん頑張って毎日お散歩していますが、元気すぎる君にはまだまだ足りなさそうだね。
でも君のおかげで初めのころは15分も歩くとへばってた私も、今では1時間くらいへっちゃらになりました。
これからいい季節、いっぱいいっぱいお散歩しようね。

「博士と彼女のセオリー」 & ドラマ「デート」のお話 

cinema
03 /18 2015
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スティーヴン・ホーキング博士と彼を支えた妻ジェーンとの半生を描いたドラマ。
『ホーキング、宇宙を語る』は我が家の本棚にもあるが、理系オンチの私は手に取ったこともありません。
でもこれは博士と妻との愛のドラマなので、物理が分からなくても大丈夫。

スティーブンはケンブリッジ大学院中に難病ALSを発症、余命2年と宣告され絶望するが、恋人ジェーンは共に病と闘うと決意し結婚する。
子どもにも恵まれたが、博士の体はどんどん自由が利かなくなり、夫の介護と子育てに追われる妻は憔悴してゆき、そんなとき知り合った教会の音楽家ジョナサンが博士の介護を手伝い、ジェーンとジョナサンはお互い惹かれていく。
一方、気道切開で声を出せなくなった博士は文字盤や音声合成システムを使うようになり、女性介護士が付き添うようになり、博士は妻とタイプの違う彼女と親しくなる。
結局、妻はジョナサンと、博士は介護士とそれぞれ別々の道を歩み始める。
博士は英国名誉叙勲を受けジェーンを伴い授賞式に出席するシーンで映画は終わる。(このシーンでホーキング夫妻と言われていたからまだ正式には離婚してなかったと思われる)

宇宙物理学という博士の研究は、映画の中でいろいろなエピソードとして紹介されますが、もちろん理解できなくても問題ないけれど、理解できたらもっと面白いでしょうね。
博士は「時間」について研究しているので、「時間」というものが見ている側にも意識されます。
ラストシーン、二人は3人の子どもたちを見ながら、(今は別れたけれど)共に過ごした「時間」を大切に思っていることが伝わり、じーんとしました。
またラスト近く、アメリカでの授賞式で「人生の挑戦に限界はない。どんな辛い人生でも生きていれば希望はある」というセリフ。
これだけ聞くと目新しくもないセリフですが、ホーキング博士が言うとまさに言葉通りで心に響きます。

アカデミー主演男優賞をとったエディ・レッドメインの演技は確かにすごいです。
自転車を高速で走り回るはつらつとした序盤から、本人は気づいていない段階の初期症状、病を宣告され絶望する姿、すっかり体が不自由になってからのちょっとした表情まで、ホーキング博士になりきっています。
決して美しいだけの夫婦愛のドラマではないのですが、見終えたあとの印象は幸せなものでした。

見終えた後、友人Tとあれこれ。
「余命2年が現在72才で健在っていうのもすごいけど、子どもが3人も驚き」
「脳は影響受けないって言ってたから、筋肉じゃないから大丈夫なのね」とか、せっかくの美しい映画も例によって下世話な話に転化するおばさん力(りょく)。

その後、テレビドラマ「デート」の話題になり、長谷川博己が国仲涼子にあれこれ映画や漫画を勧めるのですが、それらの話題になりました。
タルコフスキーのサクリファイス、つげ義春の「海辺の叙景」「ゲンセンカン主人」「海辺」が入ってる本の表紙の「李さん一家」まで。
また杏との階段落ちで「あーよかった。入れ替わってなかった」も爆笑しました。もちろんこれは「転校生」ですね。
さらに友人はタルコフスキーを「ホドロフスキー」と聞き間違えており、「タルコフスキー」ならドラマを見ている人の30%は知ってると思うけど、ホドロフスキーじゃ5%しか分からないんじゃないかとおかしかったです。
しかし私的にはどれも有名作品と思うのですが、ここでの描かれ方だと、変な趣味の人となっているのがちょっと複雑な心境です。




おみおくりの作法

cinema
03 /15 2015
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イギリス映画ってアメリカ映画とは空気の色が違うと思います。
気候が違うので当然と言えば当然なのですが、ちょっとくすんだような地味な色合いそのままに、主人公がとっても地味です。
渋いというのとは違う、なんちゅーか、この華の無さは逆に強烈な個性を感じるほどです。

孤独死した死者を弔う民生員が主人公で、その律儀な仕事ぶりと、孤独で簡素な生活ぶりが淡々と描写されます。
遺品から故人の生活を調べ、故人の宗教に即した葬儀を計らい、葬儀にかける音楽を選び、心のこもった弔辞を書き、埋葬までたった1人で参加し見送るシーンが続きます。(例え身寄りが見つかっても葬儀への参加や遺灰の引き取りを拒否する人が多い)

すべてが終了すると故人の写真を1枚自宅に持ち帰りアルバムに貼り、夕食後そのアルバムを見ながら担当した死者たちを偲ぶ、という彼のこの生活は仕事熱心なんてレベルではありません。
ほとんど変態の域に達していると言ってもいいほどなのですが、孤独な彼にとっては「生者よりも孤独な死者たちの方が身近に感じられるのだ」という事がこのシーンから静かに伝わる場面です。
この映画、現代は「still life」
植物画とか、静物という意味らしいです。彼の静かな生活を指しているのか?死者を指しているのか?
どういう意味なのでしょうか?

ある日、彼の向かいに住むアル中男ビリーが孤独死しているのが見つかりますが、そんな折、上司から経費削減のため丁寧すぎる仕事ぶりを罵られ解雇されます。
この最後の仕事になったビリーの足跡を訪ね、イギリス中を旅し、彼に関わった人々に出会います。

以下ネタバレしてます。要注意

ビリーは主人公とは正反対の男、めちゃくちゃで乱暴者、でも女にはモテる。
そんな彼の人生を訪ね歩くうちに彼の心に変化が起き、ビリーの行動をなぞるようなことも試したりします。
そしてビリーの娘を探し当てます。
死者たちに寄り添っていた主人公が、ビリーの足跡を訪ね徐々に変化し、ビリーの娘である若い娘にほのかな恋心を抱き、いつもの慎重さを忘れ、その後あっとびっくりの急展開。
このラストをどう感じるか、人それぞれでしょう。
現実ならともかく、映画としてはこれはこれでいい終わり方に思えます。
彼の葬儀は孤独なものと描かれますが、彼が世話した死者たちの亡霊と、我々大勢の観客が参加しているのですから。

例によって、友人Tと映画館を出た後、今回盛り上がった話題は主人公の食べていた食事。
「あのご飯はなんすか!?」
「肉の缶詰?」
「違うよ。魚の缶詰でしょ?」
「じゃ、ツナ缶か!?猫じゃないんだから、毎日あれってどうなの?」
イギリス料理といえば、不味いんで有名ですが、この映画に出てくる食事の不味そうなこと!
ツナ缶みたいなもんを皿にあけ、+パンを一切れと紅茶?、andしなびたリンゴ1ヶ。
ビックリしたのは、ビリーの戦友を訪ねると夕飯をごちそうされるのですが、これがまたまたネコ缶!!
これってイギリスでは普通の夕飯なのかい!?

話がそれましたが、この監督、以前日本に来た時、「孤独死」という言葉をはじめて知り、そのことがこの映画を作るきっかけになったそうです(と友人からの受け売り)
もちろんイギリスにも身寄りがなく1人で亡くなる人は普通にいても、そのことにわざわざ特別な言葉はないそうで、「孤独死」という言葉をあてはめた日本人は、それをとてもさみしく痛ましいものと捉える感性を持っているのでしょうね。
でもこれからはどうでしょうか?
ヨーロッパ人にとっては普通のことである「孤独」は、もはやアジア的な家族やら身内の概念を無くした日本でもごく普通のことになるのでしょうか?
……やっぱりさみしいですね。


アメリカン・スナイパー

cinema
03 /08 2015
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これは、なんといっていいのか…正直感想が自分でも分からない映画でした。
戦争アクション映画だと思いますが、アクション映画で必ず眠くなる私が全く眠くならなかったので、退屈な映画ではありません。(個人的にアクション映画が退屈ですぐ寝てしまう体質)
しかし、この映画に感動とか、アクション見てすっきりという事は全然ありませんでした。
見終えた後、なんとも言えない重苦しい気分が残る映画です。

イーストウッド監督は新聞のインタビューで「人を殺せば、自分も壊れる」ことを描いた、と言っていました。
だから兵士のPTSDを1番描きたかったのだと思います。
主人公はイラク戦争で敵を160人も射殺し、除隊した後、自らと同じくPTSDに苦しむ仲間のボランティアをし、心を病んだその中の1人に射殺された実在のスナイパーです。
アメリカでは一種のヒーロー的な人のようです。
ラストに実際の映像が流れますが、彼がアメリカ人にとってヒーローだったことがよく分かる映像です。

戦闘シーンは緊張の連続です。
見ているだけで疲れます。
兵士たちが精神を病むのも無理も無い…と思えます。

映画はあくまでもアメリカの兵士側から描いているので、イラクの人々にあまり感情移入できる描写はないものの、普通の家族が巻き込まれるシーンや、子どもや女性が主人公に撃たれるシーンもあります。
イラク側の凄腕スナイパーがかってオリンピックのメダリストで、妻(恋人?)がチラっと出てくる辺りも見る人に切なさを感じさせます。
アメリカの兵士たちはずっと敵のことを「蛮人」とか「野蛮人」とか呼んでいて、同じ人間という意識は持っていないようです。(持たないようにしているのかも?)
兵士たちは自分の側の正義を信じて、相手には相手の正義があるとは決して考えないし、そういう事考える人は有能な兵士にはなれないことがよく分かります。
実際、主人公の弟はこの戦争に疑問を感じ除隊しますが、主人公は子どもの頃から親に言われた「羊を守る番犬であれ」という教えに忠実な人です。
アメリカで賛否両論を巻き起こしているらしいのですが、その内容は分からないものの、監督が戦争を肯定している訳でないことはよく分かります。
主人公はヒーローにふさわしい、家族を愛し、自ら精神を病みながらも仲間のボランティアをする仲間思いの人、もちろん戦場ではこれ以上頼りになる人はいない。
しかし、となると敵側は殺されても致し方のない人々となってしまうわけで、これが昔の戦争の話だったり、架空の設定のアクション映画ならまだしも、現在進行中の世界情勢を考えるとなんとも複雑です。
気分が重くなるのは、この荒れ果てたイラクの地で、家族を殺された若者や子どもたちが次なるテロリストに育っていって、現在のイスラム国があるのだろうか?とどうしても想像してしまうからかもしれません。

こういう映画を見ると、日本をアメリカと一緒に戦争できる国にしたいと思ってる人の考えが全く分かりません。
アメリカと戦う事が「平和のため」?
結局、戦えば戦うほど、次なる敵をせっせと育ててるとしか思えない…





tonton

映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
カテゴリに「闘病記」も加わりました。