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『灼熱』『ラッシュ/プライドと友情』『エジソンズ・ゲーム』『ワイルド・ローズ』『エンツォ レーサーになりたかった犬』

cinema
05 /08 2021
GWもそろそろ終わり。映画館にも行かず、なんのイベントもないGWでした。
でも一日だけお天気の良い日に、少し遠くの公園まで友人とウォーキング、16,000歩も歩きました。新緑の中、友人とウォーキングしながら、最初、映画「ラッシュ/プライドと友情」の話をしていたのですが、映画の中では美しい夫婦愛のラウダ夫婦。現実ではラウダがスッチーと浮気して離婚したという話になり、そういえば「ボルグ/マッケンロー」のボルグも実はモデルと再婚、さらに再再婚したらしい、という話から、男ってほんとにアホで、しょーもない生き物だと盛り上がり、気がついたら世の男性の悪口ざんまい。おかげでとってもスッキリしました(笑)思うに、”悪口でデトックス””ウォーキングでリフレッシュ”の効果でしょうか?
ウォーキングwith悪口、いや「ウォーキングwhile悪口」かな? 
おすすめの健康法です(笑)(ただしデトックス以上に毒素が出るのは健康に悪そうなので、最低限の愛情を持てる対象をののしりましょう)
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『灼熱』監督:ダリボル・マタニッチ(2015)
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クロアチアのユーゴスラビアからの独立をめぐり、クロアチア人とセルビア人との間で起こった民族紛争を背景に、3つの時代の3つの恋愛を描いた人間ドラマ。2015年の第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞。1991年、クロアチアのユーゴスラビアからの独立をめぐって、クロアチア人とセルビア人の民族対立が激化。隣人同士が、民族の違いを理由に戦い、殺し合うことが日常の光景となってしまった。本作は紛争ぼっ発時の1991年編、紛争終結後に互いの憎しみが残りながら激しく惹かれあう2001年編、平和が戻り過去の憎しみを乗り越えようとする2011年編と、3つの時代を舞台に、セルビア人女性とクロアチア人男性の2人の男女を主人公にした恋愛ドラマ。

1話目は普通に面白く見ていたのですが、2001年の2話目。銃弾の残る村に戻ってきたヒロインとその母。1話目でクロアチア人と付き合っているヒロインを罵っていた兄は戦争で亡くなっている。当然、1話目の続きと思って見ていると、1話目で死んだはずのヒロインの恋人が家の修理のために呼んだ大工さんとして出てきて??思わず混乱。
なるほど、これはオムニバス映画で、ユーゴ内戦を3つの時期で描いたドラマなんだと分かってきました。全部同じ役者が演じているのと、背景が分からないと混乱します。
1は1991年の不穏な空気が立ち込め、日増しに悪化していくクロアチアとセルビアの関係を、隣村に住む恋人同士が引き裂かれるドラマとして描いています。これは一番分かりやすい恋愛悲劇。
2は2001年で内戦終結直後、廃墟と化した村の光景が痛々しい。セルビア人母娘が元の家に戻ってきて、家の修理をクロアチア人大工に頼みます。セルビア人の娘は兄を殺したクロアチア人に抵抗を持ちながら、二人は衝動的に愛し合います。
3は2011年ですっかり戦争も過去になった時代。大学生の主人公は故郷に帰り、かって周囲に反対され別れた彼女に会いに行く話。故郷の恋人は彼の子供を育てているが、まだ2〜3才なので、戦争には直接関係ないと思われる。おそらく内戦後も感情的なしこりが残り、クロアチア人とセルビア人の交際を親に反対され別れさせられた様子。ドラッグを吸ってどんちゃん騒ぎをする若者たちは何を象徴しているのか?紛争が終わって10年。まだまだ傷から立ち直れない親世代と虚無的な快楽にふける若者たち。2と3は登場人物が皆、負のオーラをまとっていて、見ていてなんだかしんどい。
ユーゴスラビア内戦はまだ記憶には新しいものの、正直どことどこが戦ったのか?6つの国と5つの民族?元々ユーゴスラビアのことを知りませんが、紛争が起きる前は平和に暮らし、異民族間の結婚も進んでいたようです。でも一旦戦争になってしまうと、それが終わっても家族を殺された恨みが残ってしまうんだろうと思います。日韓なんて70年以上経ってるのに、いまだ揉めててうんざり。
現在、民族も人種も関係なくコロナに襲われている人間たち。この共通体験をきっかけに、もうそろそろ旧人類の対立の仕方を乗り越えてほしいものです。


『ラッシュ/プライドと友情』監督:ロン・ハワード(2013)
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F1レーサー、ニキ・ラウダとジェームス・ハントが壮絶なタイトル争いを繰り広げた実話ドラマ。事故で大けがを負いながらもシーズン中に復帰したラウダと、性格もドライビングスタイルも正反対なハントの死闘とライバル関係を、臨場感あふれるレースシーンと共に描く。
1976年のF1レースを舞台にした実話ドラマ。
物語はF2以下のレースから始まり、2人のライバルがF1で出会い、優勝争いがピークになった1976年を中心に死闘を繰り広げます。2人の性格が対照的。酒と女に明け暮れ、自由奔放で明るいハント。今日が最後の日と思って人生を楽しむのがモットー。片や、ストイックで工学にも詳しく、コンピュータ的思考のラウダ。
今よりずっと車の安全性も低かったのか?毎シーズン2人のレーサーが死亡するという死亡率20%の過酷なレース。カメラワークが面白く、まさに命懸けのレースシーンの迫力がすごいです。
ハント役は「マイティー・ソー」や「アベンジャーズ」シリーズに出てるクリス・ヘムズワース。雰囲気が若い時のマーク・ウォルバーグをイケメンにした感じ?バカっぽい中にも、時折繊細さを見せます。
ラウダはダニエル・ブリュール、「グッバイ・レーニン」の彼。彼も、彼の妻になるアレクサンドラ・マリア・ララ(雰囲気のある美人)もドイツ映画で活躍している俳優らしく、アメリカ映画の中で少々異なる空気感が醸し出されています。
最後に本人たちの写真が出てくるのですが、二人ともとてもよく似ていました。
それにしても肺の中まで大火傷して重体のラウダがたった42日でレースに復帰したのは驚きです。そして’76年世界選手権の最終レースは日本の富士スピードウェイだったんですね。事故の時と同じ、雨の日。ラウダは妻の顔を思い浮かべ、ある選択をします。カーレースに興味がなくても感動できます。
こういうライバル関係に主眼を置いた映画って何があるかなぁ?
『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』はすぐ思いつきましたが、後すぐに思いつかない。古いけれど、『グラン・ブルー』とかもそうだったかも。映画版は見てないけど「あしたのジョー」もライバルものの傑作ですね(笑)
スポーツじゃないけれど、レバノン映画の『判決、ふたつの希望』もよかったです。対立する二人の男の間に共感や尊敬が芽生えるドラマって、なんか好き(笑)


『エジソンズ・ゲーム』監督:アルフォンソ・ゴメス=レホン(2017)
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19世紀のアメリカ。発明家のトーマス・エジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)は白熱電球の事業化で天才発明家として世間の賞賛を浴びていた。次に白熱電球による直流方式の電力を事業化しようとする。しかし実業家のジョージ・ウェスティングハウス(マイケル・シャノン)は安価で遠くまで電力を送れる交流式送電の実演会を開いて成功させる。発明王エジソンとライバル・ウェスティングハウスによるアメリカ初の電力送電システムをめぐるビジネスバトル=電流戦争を描いた作品。
エジソンは大統領からの巨額の武器開発の依頼も断り、モットーは「人を傷つける発明はしない」というもの。おまけにエジソン役はカンバーバッチ。対してライバル役はマイケル・シャノン。あの「シェイプ・オブ・ウォーター」の憎たらしい悪役。「イミテーション・ゲーム」の繊細な変人に泣かされた私としては、断然エジソン贔屓目で見始めました。しかしこの映画はそんな単純な善悪のドラマではありませんでした。
直流式と交流式の違いも分からず、毎日電気の恩恵に与っている私ですが、これはどっちが優れているというものでは無いみたいですね。今も私たちはどちらも使っているみたいですが、ただ遠くまで送電する方式としては交流式が勝利した、その初の送電システムに焦点を当てたドラマです。
これ日本の偉人ドラマだと、なぜか人格まで持ち上げ、結果的にペラペラの人間を描いてしまうのに比べて、エジソンが面白い。
ビジネスバトルでのエジソンは意外やエグい。訴訟を起こしたり、交流式をネガティブキャンペーンでおとしめようと、マスコミを集めて目の前で馬を感電死させたり、電気椅子を発明。死刑のイメージで交流式の危険さを世間に広めたり。
それに対して、ウェスティングハウスはエジソンにクビにされたテスラを雇って交流式の開発を進めます。
この映画で見る分にはウェスティングハウスの方が大人で、ラストシーン、シカゴ万博での2人の会話、フェンスの話に対するウェスティングハウスの答えがとても好きです。マイケル・シャノンのことも見直したわ(笑)この映画も二人の男のライバル関係を描き、ラストで(控えめに)心を通わせる姿を描いています。(ここは事実か知らないけど)
やはりカンバーバッチは華があります。妻と家族を愛する良き家庭人の顔、傲慢な天才の顔、セコくて狭量なビジネスマンの顔。そしてラスト、電球が初めてできたときの喜びを語る顔。
テスラはあのニコラス・ホルト君なんですが、強烈な二人の役者のせいで、ちょっと影が薄かった。


『ワイルド・ローズ』監督 :トム・ハーパー(2018)
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地元のグラスゴーを出てカントリー歌手になりたいと願うローズ=リン・ハーラン(ジェシー・バックリー)だったが、刑務所を出たばかりのシングルマザーにとってそれはかなわぬ夢だった。資産家スザンナ(ソフィー・オコネドー)の家で家政婦として働き始めたローズの歌を聞いたスザンナは、その才能に感嘆し彼女を応援しようと決める。(シネマトゥディ)
イメージとして持っていたカントリーより、ブルースっぽい印象です。主演ジェシー・バックリーが吹き替えなしで歌っていますが、ハスキーで力強いいい声です。何度も「カントリー&ウェスタン」と言われて「ただのカントリー」と訂正する場面がありますが、どう違うのかな?
刑務所を出てきた時点で、ローズは2人の子供に関心なさそうで激しやすくだらしない、よって子供たちも懐きません。彼女が刑務所に入っていた間、子供たちの面倒を見てくれた母親は非常に厳格で真面目そう。そのためローズには自分の家でも居場所がない感じ。
しかし掃除婦として雇われた資産家の夫婦と子供の関係を見て反省、家の中を片付け、子供の学校のプリントをチェック。ローズと我が子たちとの関係も良くなります。ここで印象に残ったのが富豪の子供がipadを探していると、父が「それよりサッカーしよう」と外に連れ出すシーン。ほんの一瞬のシーンですが、ちょうど「スマホ脳」を読んだところだったので、IT長者たちが自分の子にスマホやiPadを与えないという話を思い出してしまった。
資産家夫婦も貧しい地域の出身で、お互い出身地名を言うだけで階層が分かるところが「ポバティー・サファリ」の言う通り 、本当にイギリスって階層社会なんだなと思いました。
資産家妻スザンナがローズに大きなチャンスを与えますが、ローズはそのチャンスを逃し、子供たちのために地道に働き出す。その姿を見て実の母が彼女に長年働いて貯めた貯金を渡し、ナッシュビルに行かせます。ナッシュビルに旅行者として行って、自分の居場所に気づき戻ってくるローズ。
1年後グラスゴーの公民館で歌手として歌っているローズ。
派手な成功物語ではなく、音楽映画であると共に、一人の女性が自分を見つめ直し生き方を変える物語。地に足のついたところがイギリスらしく地味いい映画でした。


『エンツォ レーサーになりたかった犬とある家族の物語』監督:サイモン・カーティス(2019)
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シアトル。ある子犬がレーサーのデニーに買われ、エンツォ(フェラーリのファーストネーム)と名付けられる。エンツォはデニーと行くサーキットが大のお気に入りとなり、自分もいつかレーサーになりたいと望む。そんなデニーにイブという恋人ができ、最初は嫉妬したエンツォも、彼女と仲よくなる。しかしイブの裕福な父親マクスウェルはレーサーという職業が危険だと考え、デニーを嫌う。やがてデニーとイブの間に娘のゾーイが生まれるが、イブの体調に異変が……。(劇場未公開)
監督は「グッバイ・クリストファーロビン」「黄金のアデーレ」などのサイモン・カーティス。
普通、こういう犬映画は何匹も用意して撮るものと思っていましたが、castを見ると、エンツォ君。子犬は別として、Enzoとold Enzoと2匹だけです。頑張ったなぁ、うるうる。
「ラッシュ」に続き、レーサーの物語。レースシーンが見どころではありませんが、それでも主人公デニーのレースの仕方を通じて彼の性格を見せ、興味深いです。
デニー役マイロ・ヴィンティミリアは初めて見ますが、誠実で辛抱強いデニーを好演。イブ役アマンダ・セイフライドは痛々しいくらいガリガリで病人らしい。エンツォの心の声はケビン・コスナー。
この映画は犬映画には珍しく、人間ドラマ部分が現実的で丁寧です。妻を亡くした後のデニーの暮らしは友人たちの協力が欠かせませんが、その辺りの描写もサラッとしつつ丁寧。
お金持ちの義理の両親と娘の親権巡って裁判やら、四面楚歌の最中のエンツォの交通事故といい、辛い話が続きますが、変に泣かせるように作ってないのも好感が持てます。
死期の近いエンツォを乗せてコースを走るラスト。風に吹かれたエンツォが本当に気持ちよさそう。
そして8年後、イタリアでF1レーサーになっているデニーのところに…。
このラストとても好きです。思わず涙がこぼれました。


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『悪人伝』『ナイブス・アウト』『幼い依頼人』『スリーデイズ』

cinema
04 /22 2021
突然ですが、星占いのお話。信じているかと聞かれると「いえ別に」としか言いようがないのですが、なんとなく「しいたけ占い」というのだけ、毎週スマホで見ています。
今週の占いを見てみたら、獅子座(あ、私、獅子座です)のところに「あなたは”変な人文化遺産な人”です」と書いてありました。「あなたは変な人と縁があり、あなたも変な人が好きです…」って、なんのこっちゃ!?
確かに「ちょっと変わってるなぁ〜この人」という人と縁がありがちで、さらに「ちょっと変わってるなぁ〜この人」という人には甘い傾向はありますが、でもこういう万人向けの占いで「変な人」って言われる人ってどういう人を言うんだろうか?思わず自分の人生で出会った人々を思い浮かべてしまいました。で、結論としては「まあ、変と言えば変だけど、みんな至ってマトモよね」となりました。めでたしめでたし。

『悪人伝』監督 :イ・ウォンテ(2019)
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ある夜、凶悪なヤクザの組長チャン・ドンス(マ・ドンソク)は何者かに襲撃され、何とか一命を取り留めた彼は部下を使って犯人捜しに乗り出す。一方、警察の問題児チョン刑事は事件が無差別連続殺人鬼によるものと確信し、犯人逮捕のためドンスに協力を持ちかける。当初は反発し合いながらも、やがて二人は手を組み犯人を追い詰めていく。(シネマトゥディ)

先月、映画館で見た『ミナリ』とは対照的な、これぞ韓国エンタメ映画という1本です。バイオレンス、サイコパスによる連続殺人、でもどことなくユーモアもある。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』ではいい人だったマ・ドンソクが凶悪ヤクザのボス役で主人公。たまたま連続殺人犯に襲われ、刑事と組んで犯人を追い詰めるバイオレンスアクション。
マ・ドンソクが半端ないドスの効き方で、その不死身さはもはやお笑いレベル。そのキャラクターが面白くて、間違いなく凶悪凶暴なヤクザのボス。敵対するヤクザの子分をサンドバッグに詰めて半殺しにしたり、同じく敵の子分の歯を抜くシーン、思わず目を覆う残虐ぶりながら、連続殺人犯が車で追突してきた時の対応(観客はこのやり方が殺人犯の手段と知っている)は、謝る連続殺人犯に穏やかに「いいから帰りなさい」と言うので、思わず殺人犯も調子が狂ってしまう。他にも傘を持ってないバス停の女子高生に傘を貸すなど、素人にはいい人だったりするそのギャップが面白い。
それにしても韓国映画を見るたびに、警察とヤクザの区別がつかない柄の悪さは健在です。このラスト、死刑囚が他の人たちと同じ刑務所に?といくら映画でもリアリティ無さ過ぎ、と思いましたが、韓国では判決としての死刑は残っていても、実際には執行されないんだそう。

『ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密』監督:ライアン・ジョンソン(2019)
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85歳の誕生日を迎えた世界的ミステリー作家のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が、その翌日に遺体で見つかる。名探偵のブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、匿名の依頼を受けて刑事と一緒に屋敷に出向く。ブランは殺人ではないかと考え、騒然とする家族を尻目に捜査を始める。(シネマトゥディ)

面白かったです。一見豪華なお屋敷がよく見ると、変な人形だのナイフのオブジェ?だの、悪趣味なところもアメリカっぽいと言えばぽい。007のダニエル・クレイグが探偵を演じ、往年のスター俳優(ジェイミー・リー・カーティス、ドン・ジョンソン)がすっかりおじさんおばさんになって出演。鍵を握る看護師は『ブレードランナー 2049』のホログラフィの恋人アナ・デ・アルマス。先月お亡くなりになったクリストファー・プラマーがこの映画ではまだまだお元気そう。他にもトニ・コレット、マイケル・シャノンなど有名俳優たちの共演も楽しい。
時代は現代、場所もニューヨーク郊外ですが、ちょっとユーモラスな探偵、全員怪しいなど、何となくアガサ・クリスティっぽい。

ミステリーとしては、割とさっさとその夜、何が起きたかネタバラシしちゃうんです。さらに最も鍵となる看護師のアナちゃんが探偵のワトソン役にされちゃう。アナちゃん、嘘をつけない体質で、嘘つくと吐いちゃう設定が可笑しい。
しかし終盤、どんでん返しもあって、ミステリーに詳しくないのですが、最後まで面白く見ました。

日本だと遺留分とかあるんでしょうが、アメリカにはないんですね。移民の看護師に心から感謝してるのは分かるけど、いくら何でもこの遺言は揉めるの必須。子供たちに自分に依存する人生を送らせてしまったことを反省してるのか?もしくは色々あって腹を立てているのか?そのどちらにも解釈できるけれど、アナちゃんも意外と「ここは私の家とよ」とか言い出しなかなか強いです。でもラスト、心優しいアナちゃん、一家の心配もしてるから、遺族と分割しそうな感じもあり、大富豪そこまで読んでの遺言なのかも?南米からの移民という設定もトランプ政権下ならではの皮肉なのかなぁ〜と思いながら見ました。
印象的なのはダニエル・クレイグが007よりもずっと楽しそうに見えること。あら?この人、こんなに締りのない顔だっけ?と思ってしまうほど(笑)

『幼い依頼人』監督:チャン・ギュソン
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ロースクールを卒業した後、児童福祉館に臨時で就職したジョンヨプ(イ・ドンフィ)は、継母(ユソン)から虐待されている姉のダビン(チェ・ミョンビン)と弟のミンジュンに出会う。その後法律事務所に就職した彼は、ダビンの鼓膜が破れ、さらにミンジュンが死んだことを知る。ダビンが弟の殺害を自白したことに衝撃を受けたジョンヨプは、彼女の弁護を引き受けることにする。(シネマトゥディ)

韓国で実際にあった児童虐待死事件に基づくサスペンス。
子役がうまくて、予想どおりしんどい話。主人公の弁護士が韓流イケメンではなく、トボけた顔だちの青年で、どことなくユーモアがあるのが救い。虐待する継母はかなり憎たらしいのですが、ショックなのは継母の犯罪が暴かれ、主人公に責められると、この犯人も親の愛を全く知らない人だということが分かるところ。
若い頃、韓国人の知り合いがいて、一緒に韓国旅行もしたのですが、その頃の印象では、韓国人は情が深くてお節介な人が多い印象だったのです。でもこの映画を見ると、継母の虐待を同じマンションの住民はみんな知ってても、皆見て見ぬふり。どの国も経済的に豊かになると、人間関係が孤立する。なんでだろう?不思議といえば不思議です。


『スリーデイズ』監督: ポール・ハギス
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無実の罪で投獄された妻を救うため決死の行動に出た男の姿を描くサスペンス・アクション。
大学教授のジョン(ラッセル・クロウ)が無実の妻を取り戻すために、綿密な計画を練り脱獄させる。
最後までハラハラドキドキのサスペンスとして、とてもよくできている映画です。
しかし肝心のこの妻は果たして本当に無罪なのか?と疑問も持ちます。そして最後の最後に、その証拠は観客には示されるものの、劇中では冤罪ははらせない。妻は被害者との間に諍いもあり、さらに凶器に指紋もあるとあって、なるほどこういう状況では証拠から見て犯人とされてしまうんだろうな、と怖い気がします。一家3人無事に国外脱出できたものの、ハッピーエンドというにはその点で複雑な気分にさせられます。そこが、社会派ポール・ハギスらしいところなのかな。
それにしても、この頃まではまだギリギリかっこいい(?)ラッセル・クロウ。かってモテ男だったラッセル・クロウですが、最近はいくらなんでも太り過ぎ!

『ブータン 山の教室』監督:パオ・チョニン・ドルジ

cinema
04 /14 2021
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ブータン王国北部にある、標高4,800メートルのルナナ村の学校を舞台に描く人間ドラマ。自らの意思に反して都会からへき地の小学校に赴任した教師と、村人や子供たちとの交流を映し出す。


まずブータンの首都が中途半端な都会で、主人公のウゲンはずっとイヤホンしたまま。同居の祖母を鬱陶しがる今時の若者。教職課程を取ったもののやる気なく、クラブで友人と騒ぐ姿は日本と変わらないことに驚きました。役所に呼び出された時や、山の学校で先生やるときだけブータンの民族衣装を着るところがせめてもブータンらしさ。
主人公ウゲン、日本にごまんといそうな顔立ち(サッカーの香川似)で、オーストラリアで歌手になりたいと言っている。そんな彼がブータンで最も辺境の地であるルナナ村に転任するよう命じられ、オーストラリア行きのビザが下りるまでの辛抱と仕方なく承諾。1週間以上かけてようやくルナナ村に到着する。しかし電気も水道もない想像以上の僻地に、着くなり自分は無理だから帰ると言い出すヘタレ君。
ブータンで最も辺境にあるということは、世界で一番辺境の学校ということ、というセリフが出てきますが、確かにルナナ村までの道がすごすぎる。これは帰りたくても一人では絶対帰れない。地図で見ると、小さな国だし首都ティンプーがある県と赴任先のあるガサ県は県境を接しているにもかかわらず、辿り着くのに8日間かかる。バスの終着点ガサ(一応ここまでは携帯が使える)から1週間も野宿しながら、ひたすら山道を徒歩で行く。途中、何ヶ所かで標高と人口が文字で出るのですが、標高〇〇m人口3人とか、標高5500m人口0人とか。
目的地ルナナ村は標高4800m、人口50人位?生徒は10人足らず。住民はヤク飼いがほとんどの様子。
村人総出で出迎えの大歓迎。村の子供や村長が言う「先生は未来に触れることができる」という言葉。子供たちは学びたくて目がキラキラしている。
これ、日本のモンスターペアレントに苦労している若い教師が見たら、赴任したくなる人いるかも?と思うくらい、子供たちの教師に対する全面的な信頼感。村人たちの教師に対する敬意。やる気ゼロの主人公でさえも、教えることの喜びに目覚めます。
主人公ウゲン、歌の上手い若い女性セデュ、村まで案内してくれるミチェンはキャストですが、プロの役者ではなくこの映画で俳優デビューだそうです。それ以外、子供たちもみんな現地の子で、味のある村長は本当の村長なのかな?
現地の生活はヤクに支えられ、燃料もヤクの糞。村人全員が歌がうまい。というか娯楽は歌を歌うことくらいなのかもしれません。「ヤクに捧げる歌」というブータンを代表する民謡が繰り返し歌われるのですが、青い空、白い山々が聳える高地で歌われるその歌声が素晴らしく、内容は山やヤクに対する感謝、素朴な生活に満足する「幸せ」をその歌詞から感じます。
同時に片時もスマホ(携帯?)を手放せない都市の若者ウゲンはすでにブータン人の「幸せ」を失っているとも見えます。
美しく素朴なだけではない、ブータンの抱える現在の問題を描いた映画でした。村長はオーストラリアに行くというウゲンに「ブータンは世界一幸福な国と言われるが、若者たちはその幸福な国から出て行ってしまう」と嘆きます。

この映画を見て、『ラダック 懐かしい未来』(2019.9.11)という本を思い出しました。ヒマラヤの辺境インド、ラダックでの暮らしがとても環境循環型であり、相互協力的で、人間関係にストレスが少なく、先進国に比べ人々が幸福であると、この地に長年住んだ人類学者は確信します。しかし観光化により急激に資本化され、同時に人間関係も変容し、人々は自分たちの生活が遅れていると恥じるようになります。
人間の不幸とは比較から生じると思いました。
ネットやTVで他国の豊かな暮らしを知ったブータンの人々は、この先、どうなっていくのか?
一番心配なのは、可愛い学級委員長の女の子やあの村の子供たち、世界で公開されたこの映画によって注目され、そのことが彼らを不幸に導かないことを祈りたくなりました。




『ノマドランド』監督 クロエ・ジャオ

cinema
03 /31 2021
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「スリー・ビルボード」のオスカー女優フランシス・マクドーマンドが主演を務め、アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービー。ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作に、「ザ・ライダー」で高く評価された新鋭クロエ・ジャオ監督がメガホンをとった。ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。(シネマトゥディ)

基本事前情報なしで映画を見ますが、それでも何らかの情報は入ってくるわけで、ある程度の予想を持って見ましたが、考えていたものと違いました。

1点はもっとストーリー性のある映画だと思っていたら、ほぼドキュメンタリーのようであったこと。実際主人公ファーンと出会うノマド民の人々が役者ではなく本当のノマド生活者。『ノマド 漂流する高齢労働者たち』というノンフィクションが原作だそうです。
2点目はリーマンショックをきっかけにノマド生活を始めることや、Amazonで季節労働者として働くことから、アメリカの歪みを描いた社会派映画だと思った点。
もちろんそういう点はあるのですが、私の印象ではある種の清々しさ。孤独と隣り合わせの自由。だからこそ同じノマド生活者との出会いはあくまでも優しく美しい。足の引っ張り合いや嫉妬にはならず、助け合い、手を貸し合うが深入りはしない。それでも主演フランシス・マクドーマンドと並び、数少ない役者のデヴィッド・ストラザーン演じるデイブが息子のもとに戻り、孫の世話をしながら、立ち寄ったファーンにここに一緒に住まないか?と持ちかけられた時、迷いはあったと思いますが、明け方そっと出ていくファーン。

この映画は見る人の年齢や性格でずいぶん評価が違うと思います。
惨めな生活に見える人もいるかもしれないし、この暮らしを羨ましい、と思う人も絶対いるでしょう。
正直、体力と運転技術に自信があったなら私もノマド生活やりたい……、いや、そんな甘い生活じゃないことは百も承知ですが。正直いうと、この映画見てる時、やっぱり車もう一度運転するぞ〜!と思ってしまったほど。
数年前、私は車を捨て、以降どこに行くのも公共交通orママチャリor徒歩。おかげで腰痛も治り良いことづくめ。でも難点は持てる荷物が少ないこと。そこいくと、ファーンのように思い出の品を詰め込んで、広大な大地を旅から旅へ・・・(妄想に浸る)
(が、ここで現実に気が付く)これ、だだっ広いアメリカだからいいんですね。日本だと変なところに車停めてたら即警察に不審者として通報されそう。(急に妄想から覚める)
でも、これ、放浪癖のある老人に見せたらまずいんじゃ?と思うくらい刺さる人には刺さります。私は刺さりました(涙)

フランシス・マクドーマンドが本当によくて。ファーンは決して強いだけの女ではなく、夫との幸せな生活にしがみついてるのだ、と後半理解できます。その強くたくましく自由で孤高でありながら、同じように弱く執着を手放さない。彼女を見ていると、映画のハッピーエンドでよくある前向きさが単純な記号を表しているだけに思えます。人間はそんなに一面的ではないし、この映画には女優は存在せず、ファーンという強くて弱さも持つ女性がいるだけです。
それから肺がんが脳に転移していたスワンキー(本当のノマドの人)、彼女が自分の人生をファーンに語る内容も素晴らしい。見てきた大自然の話。中でもアラスカの燕の巣の壁の話。ああ、死ぬ前にもう一度見たい絶景が私にはあるだろうか!?と思わず記憶を辿ってしまったほど。
大した絶景ではありませんが、やはり若い頃は感性が柔らかかったのか、当時は地元の人しか知らない北海道野付半島のある場所を探し当てて辿り着いた時、私と友人しかいないその場所で、頭の後ろがス〜とするような不思議な感覚がありました。摩周湖も展望台から見てるんじゃつまらんと反対側に回って、崖を滑り降り湖に足を浸したときにも同じ感覚が。(これは危険なので絶対マネしないでください)絶景ハイ?とでもいうんでしょうか?もはや感性が鈍りすぎて、とんでもない場所に行かないと、あの感覚は蘇らないかもしれません。
個人的には若い頃の放浪癖が目覚めそうなある意味、ヤバイ映画でした。

肝心のストーリー的には結構、後ろ向きな内容とも見えます。
ファーンは企業城下町のいい時代に愛する夫と幸せに暮らしていた思い出にしがみついています。そのため同じノマドやるのでも季節労働するのでも、もっと気候の良い南の方へ行けばいいものを、今は郵便番号もなくなり無人になった街の側から離れられないのですから。それでもノマド生活を送り、多くの人との出会いを経て、実際のノマドの教祖的存在ボブ・ウェルズが彼女に言います。「最後の別れの言葉を交わす人なんて誰もいない。「いつかどこかでまた会おう」とだけ言うことにしている」またいつかどこかで会える。夫との思い出にしがみついていたファーンはこれをきっかけに、ガレージのものを処分、思い出の街を後に旅立つところで終わります。
起承転結が好きな人にはお勧めしませんが、個人的には素晴らしい映画でした。





『ミナリ』

cinema
03 /24 2021
2021年桜も咲き、もうすっかり春だというのに、映画館で見た映画がやっと2本目。実家の両親プラス寝たきりワンコの介護をしていた時でさえ、もう少し見てたかも?コロナで引きこもり生活が長引き、どんどん出不精になっています。暑い夏が来る前に、もう少しフットワーク良くしなければ。

『ミナリ』監督:リー・アイザック・チョン
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1980年代、韓国系移民の"イ"一家は、アメリカ・アーカンソー州に移住。荒地に置かれたトレーラーハウスに住む。夫婦はひよこの雌雄鑑別場で働きながら、夫は荒地を開墾。韓国野菜を栽培し農業での成功を夢見る。妻はそんな夫に不安を感じ夫婦喧嘩が絶えない。韓国から呼ばれた妻の母に二人の子供の面倒を見てもらい、心臓の悪い弟デビッドは口の悪い祖母と徐々に絆を結ぶ。夫の農業は干ばつや、あてにしてた取引先の裏切りなど窮地に立たされ、妻は夫と別れる決心をした時、さらなる試練が一家を襲う。

会話はほとんど韓国語、出演者、監督も韓国系。しかしこれは「ムーンライト」など作家性の高い作品で有名なスタジオ「A24」とブラッド・ピットがプロデュースのアメリカ映画なんだそうです。
「パラサイト 半地下の家族」のような衝撃的な映画では全くなく、どこか懐かしい古い日本映画を見ているような気分になりました。
主人公の夫婦が韓流に出てくるような華のある美男美女ではなく、子供たちも含めてとてもリアリティがあります。韓国から呼ばれる妻の母が一番トリッキーなキャラクターで、幼い子供に花札を教え、柄悪く毒舌、心臓が悪く走ることも制限されている孫に平気で山道を歩かせます。
韓国移民はレーガン時代の’80年代から爆発的に増え、現在に至っているそうです。’80年代の韓国というと思い出すのはポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」で描かれた時代。夜間外出禁止も出ている暗い時代だったようです。
夫婦はどういう事情でアメリカに移民してきたのかは説明はありませんが、夫は韓国での日々は辛かったとこぼします。そして一旗あげて裕福になりたい。しかし妻は堅実に生きたい。妻は不安から苛立ち、夫婦喧嘩は絶えないものの、肩を痛めた夫の髪を洗ってあげるシーンや、ささやかな場面にこの荒野で一家で生きていかなければならない絆も感じます。
思いがけず子供の病気が好転し、野菜の取引先も見つかりハッピーエンドかと思いきや、妻の気持ちはさらに離れ、別れる決意をした時、さらなる試練が彼らを襲い……、
この地味な映画がアメリカのサンダンス映画祭でグランプリと観客賞をとったというのは、意外でもあり、なんとなく分かる気もします。個人の自由を重んじ家族という単位がいともたやすく分解するアメリカにあって、このラスト。家族の絆というとありきたりですが、荒波の中に放り込まれ、生き抜くためにもう一度やり直す。そんな覚悟を妻の微笑みに感じました。

ミナリって何かと思ったら、セリのことです。セリは根っこ付きのを買ってきて、根っこをプランターに植えておいたら再び伸びてくる、なかなかたくましい野菜です。この地に根を生やし生きていこうとする移民の一家のたくましさを表しているのでしょうか?
それから印象に残ったのはひよこ工場で、黒い煙が上がっているのを息子が父に「あれは何?」と聞く場面。なんとオスのひよこを燃やしているんだそう。ひえ〜かわいそう!父は息子に「オスは卵も産まず肉も美味しくない。だから男は役に立たなきゃならない」と教えます!何という教え!男はつらいよ(涙)
アーカンソーの田舎は緑が豊かで、特に祖母がセリを植えたせせらぎが美しい映画でした。

tonton

映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
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