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『ロスト・キング 500年越しの運命』監督:スティーブン・フリアーズ

cinema
09 /27 2023
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名匠スティーブン・フリアーズが「シェイプ・オブ・ウォーター」のサリー・ホーキンスを主演に迎え、500年にわたり行方不明だった英国王リチャード3世の遺骨発見の立役者となった女性の実話をもとに撮りあげたヒューマンドラマ。

フィリッパ・ラングレーは職場で上司から理不尽な評価を受けるが、別居中の夫から生活費のため仕事を続けるように言われてしまう。そんなある日、息子の付き添いでシェイクスピア劇「リチャード三世」を鑑賞した彼女は、悪名高きリチャード3世も実際は自分と同じように不当に扱われてきたのではないかと疑問を抱き、歴史研究にのめり込むように。1485年に死亡したリチャード3世の遺骨は近くの川に投げ込まれたと長らく考えられてきたが、フィリッパは彼の汚名をそそぐべく遺骨探しを開始する。

この夏は暑すぎて、7月に2本、8月にはたった1本しか映画館へ行っていません。
ようやく秋めいてきた今日、いつも拝見している映画ブログさんのところでこの映画の記事を見て、「これは見たい!」と思ったものの、なんと千葉ではド僻地でしかやってない(地元の方すみません)。で、翌日東京まで見に行きました。
日本橋コレドの中の映画館、ほぼほぼ満員。もっとマイナーな映画だと思っていたので、少々びっくり。

「マイ・ビューティフル・ランドレット」「ハイ・フィデリティ」「グリフターズ 詐欺師たち」「あなたを抱きしめる日まで」etcスティーブン・フリアーズの映画はどれも面白くて、すごく「イギリス」って感じがします。イギリス行ったことがないので、どこがどういう風にイギリスなのかはうまく言えませんが(笑)
サリー・ホーキンスは相変わらずうまくて、自らも難病を抱えたワーキングマザーであるフィリッパは会社でも自分の働きを認められず、冷酷非道な悪王と言われたリチャード3世に共感を覚えます。そして歴史の本を読み漁り、一直線にのめり込み、彼の評価を覆そうと奮闘。これぞまさに推し活!
面白いのは、ずっと芝居で見たリチャード3世の幻影が彼女には見えているところ。
推し活の”推し”に導かれたという作りになっているのです。
現実に同時代を生きるアイドルと違って、歴史上の人物を推しにするには自分なりの強固なイメージが必要だろうと思うので、この幻影はなまじ映画的な処理とも言い切れないかもしれませんね。

彼女はまず「リチャード三世協会」に入会するのですが、それって変人のファンクラブみたいなものかな?と思ったのですが、実際には100年の歴史を持つそれなりの歴史協会らしいです。へ〜、こういうところもさすがイギリスって感じ(笑)
例えば日本で歴史上悪役認定されている人って誰だろう?
例えば赤穂浪士のお話のせいで吉良上野介は悪役だけれど、本当はどうなんでしょう?ファンクラブあるんだろうか?

感心したのは素人である彼女のリチャード三世のお墓探しにちゃんと市が発掘を検討してくれるところ。その地の大学であるレスター大の担当者は素人主婦の提案と完全にバカにしてるのですが、市の文化行政担当者の女性は好意的で、フィリッパに「感情を出してはいけない。女はそれで相手にされない」みたいなアドバイスをします。こういうところもどこの国も同じだなぁと、同じ女性として共感を覚えました。

公共施設の駐車場のよりによって「R」(予約)の文字の下というのは出来過ぎで実話かどうかは分からないけれど、映画だとフィリッパの直感がずばり当たった感じです。でもいざ彼女の言った通りに遺骨が現れると大学担当者は手のひら返すように自分の大学の発見としてマスコミに発表、彼女を冷遇します。こういうところも朝ドラ「らんまん」でも銀杏の木の大発見した人が学歴がないだけで学会が認めなかったりというエピソードがありましたが、こういう権威主義も全世界共通なのね〜と。

ラスト、遺骨が見つかっただけでなく、シェークスピアのイメージにより長年悪王の評価を受け、イギリス王室からも王と認められていなかったリチャード三世がこれをきっかけに歴史的に見直されるところも面白かったです。「疑わしきは罰せず」というのをリチャード三世が言い始めたってほんとでしょうか?そういう発想ができる人は普通に考えると悪党じゃない気もしますが。
長い歴史の中、権力争いに勝った側が公式の歴史を作っていくものだから、本当に公正な事実なんてタイムマシーンでもできなきゃ分からないだろうし、その時々の正義も価値観も変わるもの。
私は歴史上の人物で好きな人っていないのですが、もしも推しが歴史上の人物だったら、そこを起点にさまざまな当時の景色が見えて面白いだろうと感じます。

「人生で正当な評価を得られず、真価を発揮できずにいた人の物語」これはまさにフィリッパ自身がリチャード三世に自分を投影した物語。
しかし実際遺骨が発見されると、彼女は冷遇され複雑な想いを抱くのですが、周囲の評価よりも自分の成し遂げたことを誇りに地元の子供たちに講演するラスト。華々しいハッピーエンドにしないところもなんとなくイギリスっぽくていい感じでした。

ところで、Wikiでリチャード三世の項を読んだら、ベネディクト・カンバーバッチが遺体のDNA分析で血縁者と判明したそうで、へ〜と驚きました(笑)

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『春に散る』監督:瀬々敬久

cinema
08 /30 2023
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不公平な判定で負けたことをきっかけに渡米し40年ぶりに帰国した元ボクサーの広岡仁一と、同じく不公平な判定負けで心が折れていたボクサーの黒木翔吾。飲み屋で出会って路上で拳を交わしあい、仁一に人生初のダウンを奪われた翔吾は、彼にボクシングを教えてほしいと懇願する。最初は断る仁一だったが、かつてのボクシング仲間である次郎と佐瀬に背中を押されて引き受けることに。仁一は自信満々な翔吾に激しいトレーニングを課し、ボクシングを一から叩き込んでいく。やがて世界チャンピオン・中西との世界戦が決まるが……。

久しぶりに映画館に行きました。
映画館は冷房がしっかり効いていましたが、持っていったカーディガンを着ることもなくノースリーブのまま最後まで見ました。そのくらい熱い映画でした。
この原作は朝日新聞の連載小説で、私はそれを読んでいたと思いこんでいましたが、記憶と全く違っていました。
私が読んでいたのはもっとず〜っと昔のノンフィクション、同じ作者沢木耕太郎の「一瞬の夏」でした。
こっちはカシアス内藤という実在のボクサーの復帰をかけたノンフィクション。これはノンフィクションらしく、ボクサーの生活苦とか、いろいろスッキリしない現実の物語だったと記憶しています。
それに比べて、この「春に散る」は小説ですが、ある意味カシアス内藤のその後の物語(自分の復帰を諦める年になった彼が次世代を育てようとする話)ではないだろうか?と勝手に想像しました。

この映画は佐藤浩市と横浜流星がダブル主演で、初老の男と若者のウェイトは半々ですが、おそらく原作はもう少し老人側の物語らしいです。
横浜流星の存在はとても大きく、この俳優だからこそ肉体的にリアルなドラマになったと思います。彼はこの映画中実際にプロテストに合格したそうで、リングに入る際ロープの上をひょいと超えるとこなど、ちょっとした場面でも身体能力が高さが伝わります。

この映画はおじさんたちの友情、過去、暮らし、病気、また若者側の家庭環境など、ボクシング以外の要素もてんこ盛りですが、見ていてあまりとっ散らかった感じはしなくて、うまいこと料理してある印象でした。
個人的にはおじさんたちの部分、昔の仲間と共同生活を始め、庭仕事なんぞをしている場面が楽しそうで印象に残りました。元ボクサーの老人ホームか?と酒浸りの友から揶揄されますが、若い頃の仲間との老人ホームって楽しそう(笑)

クライマックスはやはりボクシングの試合シーン。対戦するチャンピョン役窪田正孝は「ある男」でもボクサー役でしたが、試合中の顔がムンクの叫びみたいになっていっちゃうし、横浜流星もどんどん顔が変形していきます。
そういえば子供の頃、我が家もNHKしか見ない家だったのですが(佐藤浩一のセリフ「おれはNHKしか見ないぞ」がおかしかった)ボクシングの試合はなぜか私と兄だけが見てました。母はそれを見て「や〜ね。自分の息子はボクサーにだけはなってほしくないわ」と毎回言ってましたっけ。たしかに身内だったらあの顔の変形は見ていられないと思います。

この映画はおじさんたちにおすすめです。初老のおじさんたちが自らの知識と、知識だけではない何かを、若い世代にバトンタッチしていくそんな物語。なんせこのIT技術革新の時代、老人が若者に教わらなきゃならないことがこんなに多い時代って、今まであんまりなかった気がします。そういう意味でも、このオヤジの生き様はある意味理想的だと思いました。

とはいえボクシング、ただ殴りあってるだけちゃだけです。なぜに見る人を熱くさせるのか? これが普通の殴り合いだったら人をドン引きさせるだけなのに……不思議といえば不思議ですね。
ボクシング映画には傑作名作も多いですね(「ロッキー」の良さは理解できなかった私ですが)、すぐに思い出すボクシング映画といえば「レイジング・ブル」と「どついたるねん」。すごく古いけどポール・ニューマンの「傷だらけの栄光」かな。
暑い夏に熱いボクシング映画。暑気払いにもおすすめです。



読書メモ『サイケデリック・マウンテン』『ハンチバック』『天皇陛下の見方です』『ネット右翼になった父』

book
08 /25 2023
ここ1ヶ月の間に図書館から回ってきた本の感想です。
小説2つはどちらも衝撃を受けました。
自分の生きてきた60数年の間にずいぶんライフスタイルも価値観も変わってしまったと思います。ときどきそのことに気づいて、うすら寒くなることもあります。「サイケデリック・マウンテン」では科学を追求する近未来の姿、一方「ハンチバック」はどんなにAIが進化しても理解できないだろう人間の持つ非合理性とでもいう姿、全くタイプの違う小説ですが、どちらもびっくりポンな衝撃作でした。


『サイケデリック・マウンテン』榎本憲男:著
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ネタバレ少しあり!
国際的な投資家・鷹栖祐二を刺殺した容疑者は、新興宗教「一真行」の元信者だった。マインドコントロールが疑われる。さらに第2、第3の同じような動機不明の殺人が続き、、、犯人はいずれも「一真行」の元信者。NCSC(国家総合安全保障委員会)兵器研究開発セクションの井澗紗理奈と、テロ対策セクションの弓削啓史は、洗脳解除を専門とする心理学者の山咲岳志のもとへ赴く。

榎本憲男という作家は初めて知りましたが、映画プロデューサーや脚本家を経て、作家になった人だそうです。
めちゃ面白い!ジャンル的には社会派エンタメになるのでしょうか?
日本は自衛隊が軍になっていて、武器輸出も解禁され、軍需産業こそが傾いた日本経済を立て直す設定になっている。NCSCという組織は各省庁からの寄せ集めで軍事・テロ対策を担っている。厚生省出身の井澗紗理奈はより優秀な兵士を作るため脳に作用する薬物を研究。それは共感を司るミラーニューロンの働きを抑えるしくみ。彼女と警視庁出身のテロ対策担当の弓削啓史の2人が主人公。この2人の恋愛未満の関係も面白いです。この薬物開発にからめて、脳と心の関係を主人公が考える部分など、難しいながらも面白かったです。
舞台は和歌山の山間部と東京を行き来し、かって世間を騒がせた宗教団体「一真行」、その近所で洗脳解除を専門とする心理学者山咲岳志とその助手、そこにある豪華すぎる老人ホームの謎。実行犯を操ったのはだれなのか?動機を探して、次から次へと最後まで中弛みなく読ませます。
第2章は最も意外な展開で、最初の被害者鷹栖祐二の生涯が描かれます。イエール大出のエリート投資家と思いきや、その壮絶な過去から現在にいたる彼の足跡が描かれます。過酷な少年期から富の偏在に対して「あるところからないところにちょっと移す」を目標にしてきた彼の人生が語られます。
終章は日本経済を立て直そうとする究極の合理主義的試みと、日本的な心情を作る風土の対立と私は勝手に読みました。確かに日本の山を…私だって抵抗はあるものの、同時にエネルギー輸出国になると色々な問題が解決するのか?と目からうろこでもありました。
杉だって植林したわけだし、ソメイヨシノだって明治期に大量に植えられたんだから、それもありかも?とちょっとそそられてしまいましたが、それは山の見える環境で育っていないので、山国日本人としての心情が理解できてないのかもしれません。
最後の著者後書きは22年3月なのですが、首相に関する展開はもしかしたら出版前に書き換えたんでしょうか?偶然だとしたら、このシンクロが怖いです。

印象に残ったのは、常に冷徹な科学者のヒロイン井澗紗理奈が最後に見せる科学への疑問、逆に弓削啓史は正義感あふれる好人物ですが、その共感力の高さゆえに、えっ?と驚く危うい展開になります。

この小説は殺人の動機を追いながら、いつしか社会や科学のあり方など、大きな話をエンタメとして無理なく取り込んでいきます。
気に入ったのは、それぞれの登場人物や出来事を善悪に分けずに書いてるところ。

肝心の実行犯を操った犯人は……内閣でもごく少数しか知らないことを知り得た展開は一応書いてあるものの、動機や真犯人を探すのは物語の牽引役としてあるだけの印象でした。そこよりも、脳と心、日本と世界、合理的手段と非合理な心情、経済的問題解決のために日本的風土を根本から変えることは許されるのか?など、読者各自が思わず考えてしまう物語でした。



『ハンチバック』市川 沙央 :著
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井沢釈華の背骨は右肺を押しつぶす形で極度に湾曲し、歩道に靴底を引きずって歩くことをしなくなって、もうすぐ30年になる。
両親が終の棲家として遺したグループホームの、十畳ほどの部屋から釈華は、某有名私大の通信課程に通い、しがないコタツ記事を書いては収入の全額を寄付し、18禁TL小説をサイトに投稿し、零細アカウントで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」とつぶやく。
ところがある日、グループホームのヘルパー・田中に、Twitterのアカウントを知られていることが発覚し——。

話題の芥川賞が載っている雑誌を借りて読みました。
だいたい芥川賞って理解できないものが多いのですが、これは分からないながらも衝撃でした。
どういう風に衝撃なのかは各自読んでいただくしかないのですが、重度障害を持つ人の大変さは想像以上だ、という真面目な感想もまずはあります。
しかしそれよりも、彼女がこの作品の中で世の中に吐き出す悪態や皮肉がなんでか、一種爽快なんですね。
それは…まともな大人は言ってはいけない何かを、障害者という一種の免罪符をもって、露悪的に吐き出している感じもあるとも言えますけれども。
この小説はネット用語が多いので、意味が通じない言葉が多くて……それぞれのライフスタイルによって、これほど言葉が違う時代だのかな〜と、そこも新鮮でした。

この小説は一言で言うと、重要人物の田中さんのせりふ、「死にかけてまでやることかよ」。
主人公の行動はこの一言に尽きます。
この主人公の親世代に近い年齢の私などは、おいおい親が生きてたらどんだけ悲しむか、と正直呆れました。
(著者本人のご両親は健在なようです。主人公と同病であることから、つい重ねて読んでしまい、あくまでも小説なことをうっかり忘れそうになります)
それでも、死にかけてまでこんなしょうもないことをせざるえない主人公。その姿に、どんなにAIが進歩してもAIには理解できないだろう人間のしょうもなさにちょっと打たれた、というのが正直な感想です。



『天皇陛下の見方です』鈴木邦夫:著
tennou suzuki
今年の1月、79才でお亡くなりになった鈴木邦夫氏の著書。
鈴木邦夫ってだれ?と思う方も多いでしょうが、若い頃、三島由紀夫の自決に衝撃を受け、三島とともに自害した森田必勝が友人だったことから右翼団体「一水会」を作った人です。鈴木氏の世代は学生運動が盛んな頃。そんな中で右翼な鈴木さんは完全に少数派。
一世代下の私の世代はお嬢様ブームでバブルに向かった時代ですが、なぜか私の通った3流大は学生がバリケード組み機動隊が出動、年度末試験が中止。大学の門の前でアングリした記憶があります。
そもそも左右盲の私には右も左も関心外ですが、お年を召されてからの鈴木さんがTVに出ているのを見て、「なんてまともな人だろう」と好感を持ち、どんな人だろうと図書館に予約。意外にも予約がいっぱいの人気本で、ずいぶん待たされてようやく順番が回ってきました。
読後の印象はTVで見た通り、バランスのいい温厚な人という印象です。正直、天皇に対する思い入れの深さは理解できませんが、偏っている団体、政治というものに怒り、今の世の中を心配しています。
まず怒りの矛先は在特会という団体で、在日の人に対する暴言を中心に、8月6日に広島で「原爆ドームと平和公園は永久粗大ゴミとして更地にしましょう」とかデモしてるそうで、過激なお笑いパフォーマンスかと驚きました。序盤はこういう団体を、あんなのは愛国でも右翼でもないと元バリバリ右翼の鈴木氏はあきれています。
つぎに怒りの矛先は安倍政権。安倍さんは右側の人と思いきや、鈴木さんから見るとアメリカに追従し、愛国を上から押し付け、天皇陛下に対する敬意が足りないと怒っています。

中盤は日本の明治以降の近代史と天皇の歴史に多くのページを割いています。
私の祖父たちは明治生まれですが、昭和天皇に対する謎的な崇拝がありました。祝日に日の丸を門に立てるのはいいとして、大人になって疑問を持ったのは、父方の祖父は長男を戦争で亡くしています。それでもなぜ天皇に対する敬意を持ち続けられたのか?謎です。鈴木氏は戦争責任は昭和天皇にはないと、さまざまな資料や証言から、昭和天皇はあくまで憲法に従う立憲君主でありたかったが、軍部の暴走に利用され苦悩の日々を送ったと言っています。でも国の最高責任者だったんですよね?
しかし沖縄に米軍基地が集中している件に関しては、明確に昭和天皇に責任があると言っています、天皇みずから米国に沖縄に米軍を駐留してほしいと訴えたそうです。
理由は、終戦直後、日本のトップがみんな投獄されてしまい、天皇自ら政治的判断をしなければならなかったこと。昭和天皇は頭がよくリアリストだったため、政治的空白期に日本を他国から守るための決断で、天皇が一番おそれていたのは、弱っている日本にソ連が介入してくること。
戦後70年以上、日本が平和を保てたのは、憲法9条のおかげではなく、米軍が駐留していたからだそうです。平和主義の私としては、憲法9条のおかげもあったと思いたいところですが。
昭和天皇が直接、米軍を日本に駐留してほしいと頼んだという事実は初めて知りました。昭和天皇って神様扱いされてたのに、ちゃんと現実を見れるリアリストだったことに驚きました。

しかし昭和天皇は(この時期には必要な決断だったとはいえ)沖縄は戦場になり、戦後も負担を強いられていることをずっと気にかけていたそうです。しかし昭和天皇には沖縄を訪れる機会がなく、平成天皇がその思いを継いで幾度も沖縄に慰霊に出向いたそうです。
平成天皇は常に傷ついた民の心を思い、祈る人としての役割を追求してきた天皇だそうで、これは森達也氏の『千代田区一番一号のラビリンス』と全く同じことを言っています。この森達也という人はバリ左翼の人だそうですが、読んでて「この人、本当に平成天皇が好きだなぁ〜」というファンがその推しを主人公に書いた小説の印象でした。右からも左からも慕われる平成天皇は柔和そうな印象の裏で、非常な覚悟を持って天皇の役割を追求してきた人なのが分かりました。
平成天皇は憲法の中の「象徴としての天皇」についてずっと考えて続けてきたそうで、結果、平成天皇は民に寄り添い、さまざまな慰霊の場に出かけ、祈る人としての天皇こそが、明治以降の短いスパンでなく、もっと長い歴史の中の天皇としての役割だと見出します。平成天皇自ら記者会見で「大日本憲法下の天皇よりも、日本国憲法の天皇の役割である象徴天皇の方が長い歴史の伝統的な天皇のあり方に沿っている」と発言したそうです。しかし、この辺が戦前のシステムが好きな安倍政権はカチンと来たようで、この天皇の発言をディスった安倍ブレーンのことを鈴木氏はめっちゃ怒っています。

とはいえ、鈴木氏も若い頃はだいぶバカやったようで、一番笑ったエピソードは…
鈴木氏の右翼団体は敵とみなした左翼系文化人宅に嫌がらせ電話をしていたそうで、井上ひさし氏は9条を守る会の創設メンバーのため嫌がらせ電話のターゲットになります。しかし出た本人、「あっ右翼の方ですか?私、戦中派なんで歴代天皇の名前を言えます。今から言うから間違えたら指摘してくださいね」といきなりジンム、スイゼイ、と始め、面食らって電話を切ってしまったそうです。でも悔しくて再び電話し、こんどは電話に出た妻を恫喝してやれと思うも「ねえねえ右翼の人って朝食にパンと紅茶とか絶対たべないの?」と質問攻めに会い、やはり負けてしまったそうです。右翼団体の活動が嫌がらせ電話って……在特会のこと言えないじゃん、と呆れましたが、自分でも反省しているようです。だから右翼の先輩として、今時のウヨクを心配しているのでしょうか。

鈴木氏は今時のネトウヨには違和感が大きく、自らはもはやウヨクではなく天皇主義者だと名乗っています。私は天皇には興味も崇拝もないけれど、この独特の形態を持つ一家は不自由極まりない生活を強いられてるわけで、しかし同時に普通の人でもある。そんな家に生まれた大変さ、ましては民間からそういう家に嫁いだ大変さは想像はできるため、そこに自分達と同じ感覚を持ち込んで非難することに違和感があります。
だから鈴木氏が美智子さまや雅子さまを批判するマスコミやネットの声に怒るのも分かる気がするのです。なぜって彼らは反論できない立場にあり、反論できない立場の人たちを好き勝手に証拠もなく罵るのは、フェアでないと思うのです(2017年の本なので眞子さまの件には触れていませんが、もう少し後ならきっと言及したと思います)

私が鈴木氏に共感を覚えるのは、社会的ハンディのある人にヘイト発言したり、反論の機会のない女性皇族を罵る週刊誌に違和感を持つからです。「弱きを助け強きをくじく」って言葉はあるけど、「強きを助け、弱きをくじく」になっちゃうのは違うぞと鈴木氏は言ってます。私自身、高齢者、ガンサバイバーで弱者ですから、弱きをののしる人にはなりたくないと思うのかもしれません。
人には各自が「まとも」と思う感覚にズレがあり、その範囲の近い人同士、共感を感じるものだと思います。まさにこの鈴木氏の感覚は私から見て「まとも」に思えるのです。同時に嫌がらせ電話をされた井上ひさしの返しにも感心しました。立場的には真逆ですが、映画『三島由紀夫vs東大全共闘』を見た時、完全アウェーの中でユーモアを失わず相手に敬意を持ち、大人としてふるまった三島由紀夫にも通じる気がします。
それなりに有名人だった鈴木氏ですが、生涯独身で財産はなく、亡くなった時も小さなアパート暮らし。昭和の大人がまた1人いなくなりさみしく思いました。



『ネット右翼になった父』鈴木大介:著
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社会的弱者に自己責任論をかざし、嫌韓嫌中ワードを使うようになった父。
コミュニケーション不全に陥った親子に贈る、失望と落胆、のち愛と希望の家族論!

これまた話題になった新書で、ずいぶん待ったのち図書館から回ってきました。よりによってウヨク関連本が2冊の読書メモ。誤解されると困りますが、私、ウヨクには全く関心ありません。
これは末期癌で70代の父を亡くしたフリーライターの著者による、自分の父はどういう人間だったのか、を探っていく物語です。
この父親は前述の鈴木邦夫氏と同世代。やはり学生時代左翼全盛の時代で、当時から保守的な彼は左翼に対して反感を持っていたそうです。その辺も鈴木さんと同じかな?
出だしは晩年ネトウヨのような言動が目立った父に衝撃と怒りを持ち、父の死後その思いを「デイリー新潮」に寄稿。それが反響を呼び、その後、きちんと父に向き合って探っていくと、最初思ったようないわゆるネトウヨでは父はなかった。さらに探っていくと、幼い頃を除いて父と分かり合えなかった関係が見えてくる、さらに父が大人になった著者に歩み寄ろうとした頃の自分自身の抱えた問題が見えてくる、、、という機能不全家族の回復物語でした。
最終的に父に対するすまなさと、愛すべき父の姿に涙する辺り、今年父を亡くした私としても共感する部分は多くありました。著者は間に合わなかったけれど、多くの団塊世代の断絶した親子に、生きているうちにわかり合ってほしいという著者の願いは伝わりました。
この著者は女性差別や社会的弱者に対する差別に敏感で、非常に怒りを感じる人なので、父の言動に自分の怒りを駆り立てられすぎて、全く父親を冷静に見れなかったことを反省しています。
この本の中に「日本人の価値観調査」という項目があって、これをチェックしてみると私は自分で思ってるほどリベラルじゃないことに気付かされました。
親子って案外難しいものですね。この著者も母との関係は良好なので、親子といえども同姓同士はむずかしいのかもしれません。

私も、父はあまりにマイペースな変人なので他人に自慢できる人ではありませんが、私との関係は問題なし。対して若い頃はわがままな母にはムカつくことが多かったです。とはいえ今はボケてしまったので、しょうがないですべて済ませられます。
ボケ方にもいろいろあるでしょうが、母は元々思ったことをストレートに口に出すタイプ。ボケ方も子ども帰りしたタイプで、先日も久しぶりに一緒に出かけ外食したのですが、エレベーターに乗れば、同乗してた茶髪の若い女の子に「あなた外人さん?」。歩いている時、脚が痛いと言うので肩を貸してやったら、大声で「今、私は歩いていない、歩かされている!」と叫ぶので、周囲の人がいっせいに振り向いて、大恥かきました。このバーさん、ほんと勘弁してほしいわ。




『メタモルフォーゼの縁側』『ライ麦畑の反逆児』『バタフライエフェクト』『戦場のアリア』『2023WBC』

cinema
08 /16 2023
定年以来ほぼ引きこもりと化した夫がいていまいち集中できないため、家で映画を見る機会が減りました。
しかし地球沸騰化の時代が来た、とまでいわれた暑すぎる2023年の夏。
映画館に行くのもしんどくて、久しぶりに家でまとめて映画を見ました。


『メタモルフォーゼの縁側』監督:狩山俊輔
metamorphose.jpeg(2022)
ボーイズラブ漫画を通してつながる女子高生と老婦人の交流を描いた人間ドラマ。毎晩こっそりBL漫画を楽しんでいる17歳の女子高生うららと、夫に先立たれ孤独に暮らす75歳の老婦人雪。ある日、うららがアルバイトする本屋に雪がやって来る。美しい表紙にひかれてBL漫画を手に取った雪は、初めてのぞく世界に驚きつつも、男の子たちが繰り広げる恋物語に魅了される。BL漫画の話題で意気投合したうららと雪は、雪の家の縁側で一緒に漫画を読んでは語り合うようになり、立場も年齢も超えて友情を育んでいく。

いつも拝見している映画ブログの方の記事を読んでアマゾンプライムで見ました。
芦田愛菜と宮本信子、この2人のキャスティングで成功は予想された映画です。
宮本信子の住んでる家がまた良くて、自然な生活感に溢れた昭和を感じさせる日本家屋。思えば縁側っていい存在だったなぁと懐かしく思い出しました。

BLに関する個人的な思い出は、まだBLという言葉もない大昔、「風と木の詩」(竹宮恵子の少年同士の愛を描いた漫画)に感動した友人から単行本を押し付けられたのですが、1巻目でギブアップ。別に少年同士のベッドシーンはいいんですけど、内容が感情に終始してて、私が恋愛小説がダメなのはたぶんこの点です。心理描写ばかりだとついていけないのです。同じBLでも、あの聖徳太子をBL仕立てにした「日出処の天子」にはハマりました。権力争い、陰謀、歴史的事件の中でのBLなので、めっちゃ面白かったのです。太子が17条憲法など国作りで活躍する前に、人間としての感情は終わってるシビアなラスト。不憫でしたね〜(涙)

そんなことを思い出しつつ、おそらくこの映画の中で2人がハマったBL漫画は「風と木」よりももっと優しい繊細な作品ぽい。2人が年齢を超えて好きなもので意気投合する様は見ていてとても微笑ましく、「同じものが好き」=それって友情の芽生える大きなポイントです。
思えばハゲタカ友の会もこの7月にも集まりましたが、貸し会議室で好きなものをお喋りするだけの仲間と気がつけば早14年。みんなそれなりに年をとり、病気や親の介護問題も抱えつつ、そんな日常を忘れ、今回は映画「TAR」についてクラシックに詳しいNさんが深掘りレクチャーしてくれました。正直クラシック音楽には興味がなかったものの、専門知識のある人の話は面白く、不明だったパズルがへ〜!とハマる感じです。またBL愛読歴ン10年というMさんにかかると朝ドラだろうが大河だろうが、ぜんぶBL変換してくれます。でもBLって女である自分は関われないじゃん、と聞いたら「そこがいいんじゃない!」だそうで、なかなかBL道も奥が深いようです。
「同じ」と「違う」両方とも面白いです。同じものを見て全く正反対の感想を持つのも、別の視点に気づけて面白いです。

この映画に関して言えば、脇キャラもみんな良かったです。特に光石研親子(爺孫?)がとても良い。宮本信子の習字教室の「鬱屈」には笑いました。1人暮らしの老人を支えるこういう存在は大きく、一見青春ドラマのようで、実は老人の生活の視点がリアルで見入ってしまいました(笑)BL漫画家役の古川琴音も美女役もブ○役もできる最近お気に入りの女優さんです。



『ライ麦畑の反逆児』監督:ダニー・ストロング(2017)
Rebel in the Rye
我が家のブルーレイハードディスクに入ったままの映画から。
小説家J・D・サリンジャーの半生を描いたドラマ。1939年、作家を志しコロンビア大学の創作学科に編入した20歳のサリンジャーは、大学教授ウィット・バーネットのアドバイスで短編小説を書き始める。出版社への売り込みを断られ続ける中、ようやく掲載が決定するが、太平洋戦争のぼっ発によって、その掲載は見送られてしまう。召集により戦地に赴いたサリンジャーは戦争の最前線で地獄を経験し、終戦後もそのトラウマに悩まされながら、初長編「ライ麦畑でつかまえて」を完成させる。この作品の成功により、突如として名声を手に入れたサリンジャーだったが……。

あのニコラス・ホルトくんがサリンジャー役。子役上がりの子って、どうしても親戚のおばちゃん目線で見てしまうのですが、3〜40年代のオールバックの髪型やスーツもなかなか似合っています。わりと淡々とサリンジャーの小説家としての生涯を描いている印象の映画でした。
この映画で見ると、サリンジャーは悲惨な戦場で精神を病みますが、そんな時期を(ライ麦畑の主人公)ホールデン・コールフィールドが支えになったと言います。ホールデンはめちゃくちゃ鬱屈している問題児の高校生で、自分のいる世界に居心地の悪さを感じている少年。私もホールデンと同じ16歳の時に「ライ麦畑」を読みました。いまだに毎年25万部が売れているそうですが、多かれ少なかれ10代って自分のいる世界が居心地が悪いもの。そんな気持ちにフィットする永遠の青春小説だと思います。
この映画を見たら、当時サリンジャーは才能をすぐに認められるものの、色々変更を求められ、なかなか出版できません。ホールデンをもう少しいい子にして、ラストはハッピーエンドとか。ええ〜っ?そんなことしたら、全然面白くないと思うのですが当時は一流の編集者たちがそう思ったのか?とびっくりしました。
しかし戦争から帰ってきて、長編に仕上げ、様々な変更を拒否、そのまま出版したところとんでもないベストセラーになります。しかし戦争で心を病んだサリンジャーはファンに押しかけられ恐怖を感じ、隠遁生活に入ってしまうのです。サリンジャー、変人として有名でしたが、それでもまだ時代が彼の隠遁生活を守れたのはよかったのかもしれません?今だったら、有名になることのリスクはさらに高まっていますから。
彼の大学の最初の指導者バーネット役をケビン・スペイシー。最初にサリンジャーの才能を見出すも、その後本人から拒絶され、最後は和解する温厚な大学教授役。ケビン・スペイシー、久しぶりに見ましたが、以前の狂気が取れて人相よくなってました。
『メタモルフォーゼの縁側』に続き青春映画でもあります。青春って今の私の年齢から考えるとただでさえ危うい年頃なのに、ましてや戦争に巻き込まれたら……現実世界を思い、痛々しい気持ちになりました。



『バタフライエフェクト』監督:エリック・ブレス /J・マッキー・グルーバー(2004)
butterfly effect
ごく小さな差違が、将来的に予測不能な大きな違いを生じるというカオス理論を効果的に取り入れた異色サスペンス。愛する者を救うため、過去を書き換えようとした男が体験する想像を超えた出来事を描く。タイトルの“バタフライ・エフェクト”とは、「ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起こる」という意味。主演・製作総指揮は、「テキサス・レンジャーズ」のアシュトン・カッチャー。

これまたブルーレイにあったへんてこりんな映画。
サスペンスとあったのですが、予想とだいぶ違いました。
「アバウト・タイム」というタイムトラベル能力のある青年のロマンチックコメディがありましたが、あれを暗くサスペンスにした感じ?
最初から不穏な空気で、主人公が少年時代に描いた絵を見たら、これは殺人鬼になる話かな?と思いきや、別に主人公は悪い奴にはなりません。ただしょっちゅう記憶が抜けてて、その間とんでもないことが起きている。その後大学生になり記憶障害もなくなり安定していたのですが、古い自分の日記を読んだら、その時点に戻ってしまう。とタイムリープSFになるのですが、彼が戻った時点の行動によって、周囲の友達の運命も激変。
どこまでが主人公の妄想で、どこまでがストーリー的にリアルな出来事なのか?見ていると混乱してきて、愛する初恋の少女や友人を助けようとすると、今度は自分に悲惨な未来が待っている。

ごく小さな差違が、将来的に予測不能な大きな違いを生じるというカオス理論を取り入れたサスペンスなんだそうです。
たしかにあの時この道を通らなければ・・・という偶然に支配されることは実際の人生でもあります。まさに私の肺がん発見はいまだ謎すぎるほどです。
ただそんな偶然があろうがなかろうが、私自身の性格はあまり変わらないと思うのですが、この映画ではサディストのヤバイ奴が聖人になっていたりと、いや〜これはないなぁとちょっと納得がいかない展開でした。
ラスト、とうとう最初から愛するものに関わらない道を選ぶ。なるほど最初から関わりがなければ、相手を巻き込まないという切ない選択でした。


『戦場のアリア』監督:クリスチャン・カリオン(2005)
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1914年、第1次大戦下。フランス・スコットランド連合軍とドイツ軍が連日砲弾を鳴り響かせているフランス北部の村に雪のクリスマス・イブが訪れる。ドイツ軍には10万本のクリスマス・ツリーが届けられ、スコットランド軍の塹壕からはバグパイプの音色が聞こえてくる。そして、美しい歌声の響きと共に奇跡は起こった……。

第1次大戦って、大量破壊兵器が使われた最初の戦争だそうですが、「アイ・イン・ザ・スカイ」みたいな無人兵器で遠く離れた場所からボタン一つの現代の戦争に比べて、塹壕で大砲を撃ち合う戦争は残酷な反面、相手の顔が見える人間くさい戦争だったとも言えます。
そんな人間臭さの極致、クリスマス休戦があちこちで勝手に行われたというのが現在の感覚では驚きです。
それほどヨーロッパ人にとってクリスマスが重要だったということでしょう。同時に今より軍隊でさえ、命令系統が今ほどタイトではなく個人個人の判断に任されていたことも分かります。
だからクリスマスが終わって爆撃が再開されると、相手側に今から爆撃いくよ〜と連絡して、自分の塹壕に敵を避難させたり・・ちょっと笑える戦いになって行きます。
ピーター・ジャクソン 監督の『彼らは生きていた』という第2次大戦のドキュメンタリー映画でも、お互いに敵のことは悪く言わず奇妙な友情すら芽生えていたことを思い出しました(→記事はこちら
「アイ・イン・ザ・スカイ」みたいなドローンやロボット兵器による戦争は確かに兵士は死ななくなりますが、その爆弾を落とされる下にいるのは結局普通の人間です。

ところでこの映画の主役ってだれなんだろう?タイトルバックではダイアン・クルーガーがトップに出ますが、群像劇の印象でした。誰かに感情移入して見るタイプのドラマではないためか、ダイアン・クルーガーの印象が今ひとつ薄い気もしました。


『憧れを超えた侍たち 世界一への記録 2023WBC』監督:三木慎太郎
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「侍ジャパン」が、2023年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝するまでの軌跡をたどったドキュメンタリー。
お盆で帰省した子どもに付き合わされてみました。ご存知この3月のWBCのドキュメンタリー。
選手選考等々、裏舞台も見せ、野球に興味のある人がみるととても面白いと思います。
私は野球に興味がないので、ぼんやりと見てましたが、栗山監督初め、選手たちもみんな令和の人だな〜と感心しました。もともと私はプロ野球に偏見を持ってて、野球選手というと金のネックレスに白いパンツみたいな、昭和のヤクザファッションのイメージ、監督の鉄拳制裁とかの印象もあり、興味持てなかったのです。でも義父が会社の野球部の監督してたこともあり、プロ野球観戦のチケットくれたりするので、時々しかたな〜く見に行ったりしてましが、全く興味がないので未だルールも分からないままです。
しかし今年のWBCはそんな関心外の私でさえも、エンタメとして出来過ぎな面白さだったと思います。
準決勝メキシコ戦なんて、ここまで打てなかった村上様のあの一打。少年漫画か!?と思う展開でしたね。
関心のある人には選手選考の模様や、佐々木が泣いてるところや、源田が指骨折してるのに出てるところも胸キュンポイントかもしれません。
個人的には大谷の通訳さん。なぜ日本人しかいないところでも、いつも大谷のそばにいるのかな?と。どういう契約なのかしら?もしかして付き人兼通訳?などなど、どーでもいい部分が気になりました(笑)


『戸定邸』『皇居東御苑ガイド付き散策』『JAXA 筑波宇宙センター』

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08 /06 2023
昨年から高校時代の友人たち4人で、いわゆる仲良しグループだったメンバーとは違うのですが、ひょんなことから数ヶ月に一度散策しています。
親の介護真っ最中の人もいれば、もう終わった人も、まだ仕事している人も、住んでる場所も環境も違うものの、野鳥の観察、動物園、科学館、美術展、史跡、街歩きと、これから迎える高齢期にそなえて脚と頭をきたえるべく集まるようになりました。
私以外の3人の共通点は動物好きなところ。
目指すはあのハダカデバネズミ!
なんでも普通のネズミの寿命が2〜3年なのに対し、この地下で暮らす醜いネズミは20年近いそうです。その秘訣は血管のしなやかさ。で、目指せハダカデバネズミとばかり、歩いているというわけです。いや、もうちょっとかわいいもん目指したいけどね。友達だからいうわけじゃないけれど、みんな若い頃は可愛くてモテてた割に、なぜか美魔女は1人もいません(きっぱり)。まあご想像にまかせますが、そういう人たちです(笑)


松戸市『戸定邸』(3月)再録(3月の映画の場所に書いていましたが、今回散策記録をまとめて「event」にしました)
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千葉県松戸市にある「戸定邸」という史跡です。水戸藩最後の藩主・徳川昭武(最後の将軍徳川慶喜の異母弟)が明治期に建てた屋敷。明治時代の徳川家の住まいがほぼ完全に残る唯一の建物だそうです。初めて行きましたが、お天気にも恵まれ、同世代のガイドさんのお話も楽しく、近場でお金をかけずに旅行気分が味わえた楽しい1日でした。



『皇居東御苑ガイド付き散策』(6月初旬)
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老いは脚からってことで高校同級生のメンバーでガイド付きの東御苑散策をしました。東御苑散策をするのならぜひガイド付きをお勧めします。ここのガイドさんたちは高齢の方々ですが、もはやこれは芸という話芸も楽しく、石垣の積み方など、さまざまな知識も豊富、濃くて楽しい散策ができました。何より自分たちより高齢のガイドさんたちを見て、いい年の取り方してるなぁ〜と刺激されたのもよかったです。
それにしてもまだ6月初めというのに、すでにかなりの暑さで皇居の木陰がうれしい。
私たちは一般的なコースを選びましたが、植物観察コースもありこちらはかなり専門的だそうです。
大手門から入って、1時間半ほど様々な建築物、石垣、植物、その他についての話を聞きながら、最後は竹橋近くの平川門から出て、丸紅ビルでランチ、丸紅ギャラリーの展覧会を見ました。
皇居って江戸城なだけに、いちばん印象に残ったのは石垣と門です。どちらも迫力があります。



『ハゲタカ』会議 in 大門(7月初旬)
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備忘録としてメモしておきます。これはハゲタカ友の会、14年目の集まり。まあコロナ真っ最中にも貸し会議室で毎年集まっていましたが、今回コロナ自粛は解除されたものの、メンバー高齢化に伴い、念の為会議室で集まりました。
今回「TAR」について語り合いたいというメンバーの希望。さすが元クラシック音楽広報だったN嬢の知識により、あのケイト・ブランシエットのメキシコのフィールドワークやTARの育ちも解明、バーンスタインの存在の大きさ等々、意味が少し分かりました。まあ映画は娯楽ですから、それぞれが感じるままでOKですが、やはり知識のあるN嬢の感動の深さやラストの衝撃の受け方を見るに、そういう人が見るとなんかすごい映画だったんだね、と思いました。
他にもBLファン歴の長いM嬢の朝ドラ「らんまん」のBL的解説など、相変わらず意味不明ながら極私的な楽しみ方にあきれ、いえ感心しました(笑)
昼の部が終わり、夜の部はみな年なのでアルコールはひかえめで夕飯を食べたのですが、驚いたのは最後にレシートを見て、私よりずっと年下のメンバーもみな老眼でレシートの数字が読めるのは私だけなこと。
私は目も別によくは無いのですが老眼だけは遅いようです。



『JAXA 筑波宇宙センター』(7月末)
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これまた若い頃の友人と。
上京した北陸の友と会いました。思えば彼女とは肺がん手術の4ヶ月後の2016年初め、北陸から上京した彼女と東京在住の友と3人でディズニーシーなんぞに行って(→過去記事)以来7年ぶりの再会です。
本当はちょうどコロナが始まった頃、北陸から出てくる友人と2人、東京から筑波に越した友の家に遊びに行く予定がコロナで中止になったため、ずいぶん久しぶりの再会となりました。
この友人たちは私の友人の中では最もカタギの人たちで、子供たちもみな順調にカタギな人生を歩み、孫の世話などしつつ、彼女たち自身の就いてる仕事も銀行と学校というカタギぶり。
私もけっしてヤクザな人生を歩んでいるわけではないのですが、こういうどこにも問題の無い人生を歩んでいて、私のように大病とも縁がない人たちと話していると、時折妙なズレを感じることもあります。ズレというよりも、もっと正直にいえば、私ってなんかビンボーくじ引いてない?という嫉妬?
今回友人Aの息子たちがどちらも優秀な理系インテリに育ちりっぱな仕事をしている話から、なぜかこの友人とその夫さんの出会いの話になりました。30数年前、免許取りたての彼女はいきなり駐車中の無人の車にぶつけてしまい、車の所有者が現れるのをじっと待ち、現れた相手が運命の相手。私も昔々彼女の結婚式に出た時、すでにそのエピソードを聞いていたので、相手の方を見てあまりに彼女の理想通りの相手に、運命ってあるんだなぁ〜と感じたものです。
そんな大昔の話を持ち出し、北陸の友人Bが私に「30年以上前なら監視カメラもないし、相手がいなかったら私なら速攻とんずらしたわ」といい、私に「トンちゃんならどうした?」と聞いてきたのです。私も「30年以上前なら今とはモラルも違うし、私もきっととんずらしたね」と答えました(おいおい!)
でもそうせずボ〜とバカ正直に相手が現れるのを待ってたAちゃんだからそんなに幸せな結婚をして優秀な子供たちにめぐまれたのよ、と友人Bが言った時、うまく言えませんが、不可解な気分になりました。
特に自分が不幸とは思っていませんが、思いがけない病気に何度か見舞われ、そんなに体に悪い生活してないのになぁ〜、いやいや、そうでもないかもと、過去をいろいろ顧みたり反省したことのある私には、健康に自信があるので年金も70からの受け取りにするというこの友人たちが妙に眩しく感じてしまったのです。
いかんいかん私もだいぶ心がやさぐれているな、と気づかされた1日でした。

肝心のJAXA宇宙センターですが、面白かったです。ガイドの方がおそらくつい最近ガイドなりたてな感じで、決して話し方は慣れてないのですが、ハヤブサの失敗の話など、いかに惜しかったか、ほとんど素人には分からんことを呟き、本当に悔しそうなところとか(笑)宇宙空間は無重力無風のため、昔の衛星の断熱パネルはマジックテープで止めてあるだけのところとか。
衛星ロケット技術も今までの「NIPPON」から『JAPAN」に表示を変え、海外に売るための技術開発にしのぎを削っていることを知りました。
また月の太陽の当たらない半球に水があることが分かって以来中国をはじめ、熾烈な国際競争が始まっているそうで、人間は生き残りをかけて競争していることに正直ビビりました。もしかしてこのまま地球が沸騰したら、SFじゃなくマジで火星に移住とか考えているのかしら?そのための基地候補が月なのかしら?まあそのころは私はもういないと思うけれど、とんでもなく変化の激しい時代に生きられてラッキーなのか?アンラッキーなのか?

連日の猛暑が続いていた7月末の週末でしたが、この日だけ奇跡的に土浦の最高気温29度の過ごしやすさ。お散歩がてらうろつき、その後、駅前で茨城のチェーン店サザコーヒーでおばちゃん3人エンドレスおしゃべり。有名なゲイシャコーヒーを飲んでみたかったけど、高いのでふつうのにしましたが、ここのコーヒーはおいしいです。ご近所にもできないかしら。





tonton

映画と本の備忘録。…のつもりがブログを始めて1年目、偶然の事故から「肺がん」発覚。
カテゴリに「闘病記」も加わりました。